Home|
フルニエ(Pierre Fournier)|シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
(Cello)ピエール・フルニエ マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1956年3月15日録音
Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [1.Nicht Zu Schnell]
Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [2.Langsam]
Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [3.Sehr Lebhaft(Cadenza:Pierre Fournier)]
「よい作品」がないのならば自分で書いてみよう!!
色々な数え方はあると思うのですが、一般的にこのシューマンの作品と、ハイドン、ドヴォルザークの作品を持って「三大チェロ協奏曲」と呼ばれるようです。ドヴォルザークのチェロ協奏曲がこのジャンルにおける屈指の名曲であることに異論はないと思うのですが、残る2曲については色々意見もあることでしょう。
しかしながら、このシューマンのコンチェルトから立ち上るロマン的な憂愁と独奏チェロの見事な技巧を聞くと、少なくともこちらのは同意できそうかな・・・と思ってしまいます。
元々、シューマンがこの作品を書こうと思ったきっかけは彼が「評論家」であったことに起因します。
当然、ドヴォルザークのコンチェルトは未だ存在しなかった訳なので、評論家であるシューマンから見れば、このジャンルというのはあまりにもすぐれた作品がないことを憂えたらしいのです。そして、普通の「評論家」ならば、そう思ったところでそれだけで終わるのですが、作曲家でもあったシューマンは、「それならば、自分でそのすぐれた作品」を書いてみよう」と思ってしまった次第なのです。
さらに付け加えれば、その「作曲家」でもあるシューマンは、ロマン派の数ある作曲家の中でもとびきりすぐれた作曲家でもあったので、そうやって決心して生み出したこのチェロ協奏曲もまた、その決心に違わぬ「傑作」となった次第なのです。
まあ、言葉にしてみれば簡単なのですが、それを実際にやり遂げるとなると常人のなし得ることではありません。
このコンチェルトは、シューマンが期待をこめて乗り込んだデュッセルドルフにおける最初の大作です。
それだけに、チェロの憂愁に溢れた響きが一つの特徴でありながらも、音楽全体としては明るく晴れやかな力に満ちています。
そして、この音楽の価値に確信を持っていたシューマンは、何人かのチェリストに演奏上の問題に関わる幾つかの助言(チェリストにとってあまりにも難しすぎる!!)は受け入れたのですが、その他の音楽の本質に関わるようなアドバイスは全て無視したのでした。そう言う助言の大部分は、当時の聴衆にとって「聞きやすく」するための助言だったようなのですが、その様な助言は全て無視したのです。結果として、当時の聴衆にとっては容易に受け入れられる音楽ではなかったので好意を持って受け入れられることはなかったようですが、歴史はシューマンが正しかったことを如実に証明することになるのです。
なお、この作品は3楽章構成なのですが、全体は途切れのないひとまとまりとして演奏されます。
フルニエのチェロが持つ「甘さ」がこの悲劇性の強い作品を上手く中和してくれている
シュタルケルのチェロを「苦い」と評したことがあったのですが、それとは対照的にフルニエのチェロは「スイート」です。
チェロという楽器は時々無性に聞きたくなるときがあります。
大抵が、どうしようもなく疲れている時なのですが、そう言うときに聞きたいのは間違ってもシュタルケルの「苦さ」ではありません。それでは、フルニエの「甘さ」なのかと聞かれると、それですむときはまだ傷は浅いのでしょう。
おそらく、疲れ切った心と体に最も相応しいチェロはエンリコ・マイナルディでしょう。これだけは、かなりの自信を持ってお勧めすることが出来ます。
しかしながら、演奏される作品によっては、「苦さ」や「甘さ」が丁度いい中和剤の役割を果たすこともあります。
その最もいい例が、このフルニエのチェロによるシューマンの協奏曲でしょう。
吉田秀和はこの作品のことを「何かしら、肌寒い、凄みのある美しさを持った特異な作品」と述べていました。そして、「これはもう、狂気一歩手前の作曲家の作品」であり「こういう曲は、一生、そう何度も聞きたいとは思わない」と付け足しています。
しかしながら、そう言う音楽であるがゆえにフルニエのチェロで演奏してくれれば一生に何度かではなくて、時には聞いてみようかと思わせてくれるのです。
それから、この演奏で注目したいのは第3楽章で長大なカデンツァが挟み込まれていることです。
スコアを見てみれば、シューマンはこの部分はソリストに任せるのではなくて、オーケストラも交えた形で実に素っ気ない「カデンツァらしきモノ」を書き込んでいるだけです。
つまりは、「協奏曲には独奏者によるお節介なカデンツァは不要」というベートーベン以降のスタイルを踏襲しているのです。
そう言う意味では、原典尊重が何よりも尊ばれる昨今の風潮の中では「やってはいけない」、もしくは「やるべきではない」所業と言うことになります。
しかしながら、そのカデンツァを実際に耳にしてみれば、それはこの上もなく魅力的であり、同時にそれはこの作品に染み込んだ悲劇性を中和します。
もちろん、シューマンにしてみればそれを中和されてはたまったものではないのでしょうが、これほどまでに狂気に近づこうとした作品を聞くものにとってはそれほど悪い話ではありません。
なお、このカデンツァはフルニエ自身の手になるもので、いわゆるカデンツァのお約束に従って第1楽章や第3楽章の主題をもとに書かれています。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
3584 Rating: 5.2/10 (64 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-12-01]
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品82(Glazunov:Violin Concerto in A minor, Op.82)
(Vn)ナタン・ミルシテイン:ウィリアム・スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1957年6月17日録音(Nathan Milstein:(Con)William Steinberg Pittsburgh Symphony Orchestra Recorded on June 17, 1957)
[2024-11-28]
ハイドン:弦楽四重奏曲 ハ長調「鳥」, Op.33, No.3,Hob.3:39(Haydn:String Quartet No.32 in C major "Bird", Op.33, No.3, Hob.3:39)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月1日録音(Pro Arte String Quartet Recorded on December 1, 1931)
[2024-11-24]
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)