Home|
カイルベルト(Joseph Keilberth)|ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1962)
Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]
Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]
Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]
Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]
ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。
第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。
ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。
- 第1楽章 Allegro non troppo:冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。
- 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso:冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。
- 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I:間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。
- 第4楽章 Allegro con spirito:驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。
これを見逃していたとは…
カイルベルトと言えば「質実剛健にして武骨と言っていいほどの音楽づくり」という言葉が思い浮かぶので、ずいぶん古い人のように思えていました。しかし、振り返ってみればカラヤンと同年生まれで、1965年と1966年には単身で来日してN響の指揮台に立っています。
私が思い込んでいたほどに「古い人」ではなったのですね。
そんなカイルベルトの経歴を見てみればバンベルク響との関係が大きな比重を占めています。
バンベルク響のことを語る上で第2次大戦後の「ドイツ人追放」のことは切り離すことはできません。特にチェコでは1945年から1947年にかけてチェコスロバキア国籍のドイツ人およそ260万人が追放されました。
バンベルク響の前身は1940年にドイツ系住民によってプラハで結成されたドイツ・フィルハーモニー管弦楽団でした。当然のことながら、そのオーケストラは「ドイツ人追放」によって空中分解してしまうのですが、やがてドイツに流れ着いた団員が集まってオーケストラを結成します。
それがバンベルク響でした。
ですから、バンベルク響といえば「難民オーケストラ」だとよく言われます。
そして、そのバンベルク響を生涯にわたって面倒を見続けたのがカイルベルトでした。確かに、ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の結成時にフルトヴェングラーの推薦で首席指揮者を引き受けたことも理由の一つでしょうが、それ以上に深い思い入れがあったのでしょう。
1949年にカイルベルトは首席指揮者を引き受け、1968年に舞台で倒れて亡くなるまで面倒を見つづけました。
それだけに、1968年にバンベルク響と来日してくれたことは日本の聴衆にとっては幸いだったと言えるでしょう。
そんなカイルベルトがスタジオ録音で残してくれたブラームスの交響曲は以下の通りです。
- ブラームス:交響曲第1番 ハ短調, Op.68 ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1951年録音
- ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, Op.73 ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音
- ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90 ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1963年録音
- ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98 ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1960年録音
モーツァルトの交響曲ではすべてバンベルク響と録音していたのですが、ブラームスに関してはベルリン・フィルが大きな位置を占めています。実際、演奏会ではベルリン・フィルとも密接な関係を築いていたようですし、ドイツの国民オペラと言うべき「魔弾の射手」の全曲録音もベルリン・フィルとのコンビでした。
しかし、面白いのは同じベルリン・フィルとの録音でも1番と2番ではずいぶんと景色が異なる事です。もっとも、1番だけは1951年のモノラル録音なので同列に論じてはいけないのかもしれませんが、それを考慮に入れてもたたずまいがずいぶんと異なります。
1番のほうはいかにもドイツの田舎オケらしい「質実剛健にして武骨」なブラームスに仕上がっているのですが、2番のほうは造形が確かなだけでなく、絶妙なフレージングによる表情付けと、それをさらに引き立てる素晴らしい音色が聞くものを魅了します。そして、思わず私の脳裏を横切ったのは、フルトヴェングラーが指揮したベルリンフィルというのは本当はこういう響きだったのではないかという思いでした。
フルトヴェングラーという人は「録音」という行為にとことん否定的で、そのためもあって音質的には非常に貧しいものしか残っていません。まだしもと思えるのは最後の録音となった「トリスタンとイゾルデ」くらいでしょうか。
それだけに、カイルベルトとベルリンフィルによるブラームスの2番を聞くとき、思わずそういう妄想を抱いてしまうのです。
そして、ベルリン・フィルとの2番を聞いてしまうと、バンベルク響の3番も、ハンブルク・フィルの4番も、いささか色あせて聞こえてしまいます。
もちろん、悪い演奏とは思いません。
歌わせ上手なカイルベルトの要求にこたえて、歌うべきところは美しく歌いあげています。しかし、ベルリンフィルの2番を聞いた後ではその響きにどうしても不満が残ります。もちろん、ドイツの地方オケならではの魅力にあふれていることは認めますが、あの響きを聞いてしまうと贅沢な要求であることはわかっていながらも、ついそのようなことを思ってしまうのです。
おそらく、実演で聞けば十二分に楽しめることでしょうし、後のカラヤン統治下ですっかり面変わりしたベルリンフィルよりはよほど興味を惹かれる演奏なのかもしれません。
それにしても、これほど興味深い録音を今まで見逃していたことに、我ながらあきれてしまいました。その欠落を指摘いただいた方には心より感謝したいと思います。
それから、最後に蛇足ですが、あれこれ思い浮かべてみると、カイルベルトベルリンフィルによる第2番は、もしかしたらこの作品のベストの一つと言っていいのかもしれないと思い当たりました。かえすがえすも、ご指摘いただいた方に感謝です。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
5706 Rating: 6.6/10 (5 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-04-25]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1962)
[2025-04-22]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第5番 ニ長調(Rossini;Quatuor No.5 in D major )
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-19]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1951年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1951)
[2025-04-16]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590(プロシャ王第3番)(Mozart:String Quartet No.23 in F major, K.590 "Prussian No.3")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-04-12]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第4番 変ロ長調(Rossini;Quatuor No.4 in B flat major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-09]

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27(Rachmaninoff:Symphony No.2 in E minor, Op.27)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月15日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 15, 1945)
[2025-04-06]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第1番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.1 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)
[2025-04-02]

モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調, K.575 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Mozart:Serenade in G Major, K.525 "Eine kleine Nachtmusik")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)
[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)