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シャルル・ミュンシュ(Charles Munch) |ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950) Ravel:Rhapsodie espagnole [1.Prelude a la nuit. Tres modere]
Ravel:Rhapsodie espagnole [2.Malaguena. Assez vif]
Ravel:Rhapsodie espagnole [3.Habanera. Assez lent et d'un rythme las]
Ravel:Rhapsodie espagnole [4.Feria. Assez anim]
ラヴェルが初めて出版した本格的な管弦楽作品
もとはピアノの連弾用として作曲されたのですが、その後オーケストレーションをほどこし、さらには4曲をまとめて「組曲」として出版されました。そして、管弦楽法の大家と言われるラヴェルの記念すべき管弦楽作品の第1号がこの作品です。
ラヴェルの母親はスペインはバスク地方の出身であり、ラヴェル自身もそのバスクの血を引き継いでいることを誇りにしていました。その意味でも、彼がオーケストラ作品の第1号にスペインを素材に選んだことは十分に納得がいきます。そして、この後も「スペインの時」や「ボレロ」のように、スペイン素材を使った作品をたくさん作曲しています。
それにしても、この作品は間違いなくリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の華麗なオーケストレーションをまっすぐに受け継いでいます。オーケストラ作品の第1号にして、すでに後年「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれる片鱗・・・『複雑多様ではあるけれども繁雑難解ではない』という彼のモットーが実現されていることには驚かされます。
第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)
第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)
第3曲:Habanera(ハバネラ)
第4曲:Feria(祭り)
実に整然とした演奏
ミンシュの録音を見てみるとモノラル時代にも取り上げていて、その後ステレオ録音でも取り上げているものが数多くあります。もっとも、モラルからステレオへの移行期にはよくある話でした。
クレンペラーなんかはモノラル時代にベートーベンの交響曲全集を録音し始めたものの、その後しばらくしてステレオ録音が始まったので、モノラル録音をもう一度ステレオ録音で録り直していたりします。
ワルターなんかは引退してから「あなたの残した録音はモノラルだったので、このままだとあなたの音楽は忘れ去られてしまうかもしれない」などと脅されて、そこへ破格のギャラと待遇を条件に示されたので、最晩年にまとまった録音をステレオ録音で残したのは有名な話です。
ただしミンシュの場合に面白いのは、全く同じ作品であるのにモノラルとステレオでは演奏のスタイルが全く異なる事です。それは、モノラルとステレオの両方で録音しているほぼ全ての作品に言えることのようです。
例えばこのあたりです。
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付」
シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98
シューマン:交響曲第1番 変ロ長調, Op.38「春」
ダンディ:フランス山人の歌による交響曲, Op.25
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、スペイン狂詩曲、ボレロ、ダフニスとクロエ(全曲)などなど
私たちがミンシュと言って思いかべるスタイルはほぼ全てステレオ録音の時の演奏スタイルです。
例えば、ステレオ録音によるサン・サーンスの「オルガン付き」なんかを聞くと、オルガンが入ってきてからの絢爛豪華なオケの響かせ方は、さすがはミンシュだ!!と拍手をおくりたくなります。そして、そういう熱気のようなものがさらに色濃くなったのが最晩年のパリ管との録音でした。
それに対して、モノラル録音の時代の演奏は、それとは対照的に実に整然としたものです。
そういえば、吉田秀和氏が「世界の指揮者」の中で、ミュンシュの初来日の時の演奏を「目の前にスコアが浮かび上がってくるような明晰きわまりない演奏で驚かされた」みたいなことを書いていて驚かされたものです。ミンシュといえば真っ先にパリ管との録音が思い浮かぶのが当時の私でしたから、この吉田秀和氏の言葉は何かの間違いではないかと思ったものです。
ちなみにミンシュの初来日は1960年ですから、ボストンを離れる少し前です。その頃のミンシュの録音を聞けば、それは確かにパリ管との録音を比べてみればはるかに整然とした演奏ではあったのでしょう。しかし、「目の前にスコアが浮かび上がってくるような明晰きわまりない演奏」という言葉がよりふさわしいのは1950年台前半のモノラル時代の録音です。
おそらく、初来日の時の演奏はこのモノラル時代の録音のような演奏だったのかもしれません。
それにしても、わずかな時を隔ててこんなにも対照的な二面性を持った指揮者はなかなか思い当たりません。
確かに、ワルターのようにヨーロッパ時代とアメリカ時代で芸風を大きく変えた指揮者はいます。しかし、ワルターのアメリカ時代の男性的で剛毅な演奏は、言い方がいささか下世話になるのですが、どこか「営業上の理由」が大きかったようにに思えます。なぜならば、ワルターの本質は最後までヨーロッパ時代の演奏にあったように思えるからです。戦後になって、ウィーンに凱旋してのモーツァルトの40番や25番の録音を聞くとそう思わずにはおれません。
しかし、ミュンシュの場合は明晰でクリアな演奏も彼の本質から発したものであれば、後の熱い激情の爆発も彼の本質であったように思えます。ある意味では二律背反するようなアポロ的な側面とデモーニッシュな側面がミュンシュという男の中では何の矛盾も感じず同居していたように見えるのです。
それだけに、モノラルとステレオの二種類の録音が存在するものは、その両方を聞き比べてみるのは面白いのかもしれません。個人的にはどちらも魅力的です。
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