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ビーチャム(Thomas Beecham) |モーツァルト:交響曲第36番「リンツ」
モーツァルト:交響曲第36番「リンツ」
ビーチャム指揮 ロンドンフィル 1938年録音
Mozart:交響曲第36番「リンツ」「第1楽章」
Mozart:交響曲第36番「リンツ」「第2楽章」
Mozart:交響曲第36番「リンツ」「第3楽章」
Mozart:交響曲第36番「リンツ」「第4楽章」
わずか4日で仕上げたシンフォニー
1783年の夏にモーツァルトは久しぶりにザルツブルグに帰っています。その帰りにリンツに立ち寄った彼は3週間ほどトゥーン伯爵の邸宅に逗留することとなりました。
そして、到着してすぐに行われた演奏会では、ミヒャエル・ハイドンのシンフォニーに序奏を付け足した作品を演奏しました。実は、すぐに演奏できるような新作のシンフォニーを持っていなかったためにこのような非常手段をとったのですが、後年この作品をモーツァルトの作品と間違って37番という番号が割り振られることになってしまいました。もちろん、この幻の37番シンフォニーはミヒャエル・ハイドンの作品であることは明らかであり、モーツァルトが新しく付け加えた序奏部だけが現在の作品目録に掲載されています。
さて、大変な音楽愛好家であったトゥーン伯爵は、その様な非常手段では満足できなかったようで、次の演奏会のためにモーツァルト自身の新作シンフォニーを注文しました。この要望にこたえて作曲されたのが36番シンフォニーで、このような経緯から「リンツ」という名前を持つようになりました。
ただ、驚くべきは、残された資料などから判断すると、モーツァルトの後期を代表するこの堂々たるシンフォニーがわずか4日で書き上げられたらしいと言うことです。いかにモーツァルトが天才といえども、全く白紙の状態からわずか4日でこのような作品は仕上げられないでしょうから、おそらくは作品の構想はザルツブルグにおいてある程度仕上がっていたとは思われます。とは言え、これもまた天才モーツァルトを彩るには恰好のエピソードの一つといえます。
まず、アダージョの序奏ではじまった作品は、アレグロのこの上もなく明快で快活な第1主題に入ることで見事な効果を演出しています。最近、このような単純で明快、そして快活な姿の中にこそモーツァルトの本質があるのではないかと強く感じるようになってきています。第2楽章のアンダンテも微妙な陰影よりはある種の単純さに貫かれた清明さの方が前面にでています。そしてその様な傾向はメヌエットでも最後のプレスト楽章でも一貫しています。
おそらくは4日で仕上げる必要があったと言うことがその様な単純さをもたらしたのでしょう。しかし、その事が決してマイナスにならないところがモーツァルトの凄いところです。
ビーチャムはデフォルメの大家・・・なんて言ったのは誰でしょう?
一切派手なことは何していません。何かのコマーシャルではありませんが、何も足さず何も引かず、それでいて聞こえてくる音楽はモーツァルトそのものです。
ユング君はあちこちで書き散らしているので、ここでまた同じ事を繰り返すのは気が引けるのですが、やはり書かずにはおれません。モーツァルトほど「壊れやすい音楽」はありません。聴衆の受けを狙おうと思って余計なことをするとたいてい失敗します。かといって、「何もしなければ」普通はモーツァルトの音楽が匂い立ってきません。
ここで聞けるようなビーチャムのような演奏は誰にでも簡単に出来そうでいて、実は最も難しいことです。
一部ではビーチャムのことをデフォルメの大家みたいに言いふらしている人々がいます。確かに、彼のメサイアなどを聞けばそう言う評価も出てくるのでしょうが、こういう演奏を聞けば一部で全体を判断することの危うさを教えられます。
今回ビーチャムによるモーツァルトのシンフォニーをまとめて聞いてみて、すっかり彼のことが好きになってしまいました。
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