クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでフランチェスカッティ(Zino Francescatti)のCDをさがす
Home|フランチェスカッティ(Zino Francescatti)|フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)

(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

Franck:Sonata for Violin and Piano in A major [1.Allegretto ben moderato]

Franck:Sonata for Violin and Piano in A major [2.Allegro]

Franck:Sonata for Violin and Piano in A major [3.Recitativo - Fantasia]

Franck:Sonata for Violin and Piano in A major [4.Allegretto poco mosso]


ヴァイオリンソナタという形式は不思議な形式です。

 もとはヴァイオリン助奏付きのピアノソナタと言った方がいいようなスタイルでした。
 しかし、ヴァイオリンが楽器としても完成され、さらに演奏者の能力も高まるにつれて、次第に二つの楽器が対等にわたりあえるようになっていきます。

 この移り変わりは、モーツァルトの一連のヴァイオリンソナタを聞いていくとよく分かります。
 初期の作品はヴァイオリンはおずおずとピアノに寄り添うだけだったのが、後期の作品になると二つの楽器が対等に自己主張をするようになり素晴らしい世界を展開してくれます。

 ベートーベンはヴァイオリンが持つ表現力をさらに押し広げ、時にはヴァイオリンがピアノを従えて素晴らしい妙技を展開するようになります。
 ヴァイオリンが自己主張する傾向はロマン派になるとさらに押し進められ、ここで聞けるフランクのヴァイオリンソナタはその頂点をなすものの一つです。

 それにしても、これほどまでにロマン派らしいヴァイオリンソナタが他にあるでしょうか!まさに、ヴァイオリンという楽器の持つ妖艶な魅力をいかんなく振りまいています。
 
 もともとユング君はこのような室内楽のジャンルはあまりにも渋すぎてどうも苦手でした。
 でも、初めてフランクのヴァイオリンソナタを聞いたときは、「室内楽は渋いなんて誰が言ったの?」という感じでたちまち大好きになってしまいました。
 誰だったでしょうか、この曲を聞くと、匂い立つような貴婦人が風に吹かれて浜辺に立っている姿がイメージされると言った人がいました。
 まさにその通りです。

 「どうも私は室内楽は苦手だ!」と言う方がいましたらぜひ一度お聞きください。
 そんな先入観なんかは吹っ飛ばしてくれることだけは保証します。


室内楽での不可欠の相棒

フランチェスカッティは協奏曲おいては伴奏指揮者を選ぶということを書きました。
それでは、室内楽ではどうだったのかと調べてみれば、それはもう「選ぶ」どころの話ではなく、まさにロベルト・カサドシュ一択といっていいほどの偏りを見せています。

確かに、彼の優れたテクニックに呼応でき、さらにはその妖艶な音色で歌い上げられる深い感情のこもった音楽を真に理解でき、さらにその音楽の寄り添える相手といえばだれが思い浮かぶでしょう。カサドシュほぼ一択というこの事実を前にして、考えてみればなるほどそうなるしかないのかと一人納得している自分に気づきました。

室内楽なのですから、共演相手からご本尊として奉られても困ります。
協奏曲ならば思う存分自分の色を前面に押し出してフランチェスカッティの音楽に徹すれば、それはそれなりに面白い演奏にもなるでしょう。しかし、室内楽ではそういうわけにはいきません。かといって、すぐれたテクニックを持っていても「我」の強い相手だと、これまたちぐはぐな音楽になってしまうことは目に見えています。

確かにフランチェスカッティのヴァイオリンは、豊かで艶やかな音色で聞き手の耳を引き付けますが、それ故に深みが足りないとか、精神性に欠けるなどという悪口もついて回りました。
それに対して、カサドシュはどちらかといえば古典的な均衡を重んじるように思われるピアニストです。しかし、カサドシュはフランチェスカッティの美しさとあふれるような情熱を一切妨げることはなく、それどころかそれをピアノの側から寄り添いながらもより高いレベルへと引き上げる腕を持っていたのです。

ただし、「カサドシュってそんなにすごいピアニストなんですか」という声も聞こえてきそうです。

その原因は、セル&クリーブランド管と録音した一連のモーツァルトの協奏曲録音にあります。あれは演奏の主導権は完ぺきにセルの手中にあり、その強いコントロール下で絶妙なバランス感覚を発揮してピアノを弾ききったのがカサドシュでした。そして、その時のクリーブランド管が白磁を思わせるような透明感に満ちた響きの世界を展開しているので、口さがない連中に「カサドシュのピアノが邪魔だ」などと言ったからです。
「カサドシュのピアノはいただけない。ブラームスのピアノ協奏曲と違って、ピアノがダメだと台無しになってしまう曲ばかりなので、いずれの曲もセルのオケだけ楽しんでいる。」なんて書いている人もいるほどです。

しかし思い出してください、セルほどソリストの選定にうるさい指揮者はいなかったという事実を。そのセルがモーツァルトの録音において選んだソリストがカサドシュだったという事実を。

確かに、モーツァルトに関しては最初から最後までセルの美学の中で事は進んでいくように見えます。。ほとんどのピアニストは不自由を強いられる上に注文だけは人一倍多いというセルのような指揮者との競演はできれば避けたいことでしょう。
しかし、カサドシュは己の美学に徹底的にこだわり抜く完全主義者(悪く言えば偏執狂^^;)の美学を壊すことなく20年近くもつきあい続けたのです。
セルのような完璧主義に取りつかれた偏執狂に淡々と20年近くもつきあい続けられるピアニストはカサドシュ以外には思い当たりません。

そう思えば、セルとはベクトルが異なるとはいえ、フランチェスカッテもまた己の美学を徹底的に貫き通した人でした。そんなフランチェスカッティにとってカサドシュ以上の相棒がこの世に存在するとは思えません。
本当にカサドシュこそはどこまでも懐の大きい、いわゆる中国語で言うところの「大人」だったのです。
そして、私たちはそういう「大人」のおかげで、心いくまでフランチェスカッティの魅力あれるヴァイオリンの世界に浸る幸せを得ることができたのです。

まさに、フランチェスカッティにとってカサドシュこそが、室内楽の分野における不可欠の相棒だったのです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5547 Rating: 4.4/10 (18 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-05-17]

リスト:ペトラルカのソネット104番(Liszt:Deuxieme annee:Italie, S.161 Sonetto 104 del Petrarca)
(P)チャールズ・ローゼン 1963年12月録音(Charles Rosen:Recorded on December, 1963)

[2024-05-15]

サン=サーンス:ハバネラ Op.83(Saint-Saens:Havanaise, for violin & piano (or orchestra) in E major, Op. 83)
(Vn)ジャック・ティボー (P)タッソ・ヤノプーロ 1933年7月1日録音(Jacques Thibaud:(P)Tasso Janopoulo Recorded on July 1, 1933)

[2024-05-13]

ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437(Johann Strauss:Emperor Waltz, Op.437)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

[2024-05-11]

バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119(Bartok:Piano Concerto No.3 in E major, Sz.119)
(P)ジェルジ・シャーンドル:ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1947年4月19日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Eugene Ormandy The Philadelphia Orchestra Recorded on April 19, 1947)

[2024-05-08]

ハイドン:弦楽四重奏曲第6番 ハ長調 ,Op. 1, No. 6, Hob.III:6(Haydn:String Quartet No.6 in C Major, Op. 1, No.6, Hob.3:6)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)

[2024-05-06]

ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッテ ギレ四重奏団 1954年12月1日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Guilet String Quartet Recorded on December 1, 1954)

[2024-05-05]

スカルラッティ:20のソナタ集(4)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)

[2024-05-04]

スカルラッティ:20のソナタ集(3)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1939年1月9日,11日&12日録音(Wanda Landowska:Recorded on January 9,11&12, 1939

[2024-05-03]

スカルラッティ:20のソナタ集(2)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)

[2024-05-02]

スカルラッティ:20のソナタ集(1)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)