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ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)|チャイコフスキー:フランチェスカ・ダ・リミニ, Op. 32
チャイコフスキー:フランチェスカ・ダ・リミニ, Op. 32
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1962年4月10日~11日録音
Tchaikovsky:Fantasia After Dante: "Francesca Da Rimini", Op.32
あらゆる音楽は表題的である

ダンテの神曲第5歌で描かれたフランチェスカとパオロの物語は多くの作曲家にインスピレーションを与えてきました。チャイコフスキーもその一人であり、常々「あらゆる音楽は表題的である」と語っていた彼にはピッタリの題材でした。
何故ならば、フランチェスカの物語は、チャイコフスキーが終生愛したテーマ、「宿命に逆らい、真実の愛を求めて闘う人間」にジャスト・フィットする物語だったからえす。
ラヴェンナの領主グイド・ダ・ポレンタ家の美しい姫フランチェスカは、父親の命令によってリミニの領主ジョヴァンニのもとに嫁がされることになります。狙いは長年にわたるポレンタ家とマラテスタ家との争いを終わらせるためでした。
しかし、ジョヴァンニは勇猛な武将ではあったのですが、足が不自由で容姿も醜い男でした、
そんなジョヴァンニを娘のフランチェスカが嫌っていることを知った父親は、ジョヴァンニの弟であり、美青年のパオロを代理人として結婚式を執り行うことにします。
当然のように、フランチェスカとパオロは恋に落ち、フランチェスカは結婚式翌日の朝まで、自分が騙されたことに気づかなかったのです。
しかし、騙されたことを知りながらフランチェスカはパオロに伴われてジョヴァンニのもとに嫁ぐのですが、その様な危うい関係が長続きするはずもありません。
ジョヴァンニは少しずつ二人の関係を疑うようになり、やがて、フランチェスカとパオロがランスロットとグイネヴィア王妃の物語を読んでいる姿を盗み見して二人が愛し合っていることを悟ります。
そして、不意にパオロはフランチェスカを抱き寄せた姿を見たジョヴァンニは嫉妬に狂い、密会中の二人を殺してしまうのです。
チャイコフスキーはこの物語にインスピレーションを得て、一つの交響詩を生み出します。
導入部で地獄の門をくぐると、続いて「色欲の罪人」が烈風に曝される地獄の情景が描かれます。その烈風の中で漂いながらもかたく抱き合うパウロとフランチェスカの姿も描かれます。
続く第2部では愛し合うフランチェスカとパウロの対話と恍惚、そして愛の高まりが頂点に達したところにジョヴァンニの憎悪と嫉妬が総奏で表現され、最後にそのジョヴァンの一撃が振り下ろされます。
そして、音楽は再び嵐が吹きすさぶ地獄の情景が描かれて音楽は終わりを告げます。
交響詩にしては長すぎるという批判もあったのですが、今では「ロメオとジュリエット」と並んで、チャイコフスキーを代表する交響詩の一つとなっています。
もっとも、チャイコフスキー自身はこの作品のことを「エピソードに刺激された一時的なパトスで書かれた迫力のないつまらない作品」と語っているのですが、こういう物言いもまた、チャイコフスキーのいつもの癖のようなものだと言えます。
それなりに好きにやらせてもらいます
フィルハーモニア時代のジュリーニと言うのは微妙な位置にあったようです。もちろん、コンサートオーケストラの指揮者の道を望んでいた彼にしてみれば願ってもないポジションでした。
実際、フィルハーモニア管での仕事が得られると分かると、彼はさっさとスカラ座の音楽監督は辞めてしまっています。
しかしながら、ジュリーニを見いだしたレッグの一番の手駒はカラヤンでした。しかし、カラヤンはベルリンフィルのシェフに収まってEMIを去ってしまったので、次の手駒としてクレンペラーを担ぎ出してきました。
しかし、この男の狷介な性格と怪我の多さを考えればスペアの手駒がどうしても必要だったのです。そんな中で白羽の矢が立ったのがジュリーニだったのです。
つまりは期待されているようなされていないような、そう言う微妙な己のポジションをジュリーニもまた自覚していたのかもしれません。
そして、それならばある程度は自分の好きにやってみようと思ったのか、いろいろなアプローチを試していたことがよく分かります。
見通しの良いがっしりとした大きさを感じさせるときもあれば、ひたすら横へと流れていく歌で全曲を覆っているようなときもあります。
そして、その歌が重視されているときは、これが本当にジュリーニなんだろうか?・・・と思うほどの軽さに驚かされます。その最たるものがチャイコフスキーの悲愴です。
デモーニッシュ的なものは欠片もなく、音楽はひたすら気持ちよく横へと流れていくばかりです。そして、その流れを「さらさら」とまで言えば言い過ぎでしょうが、それでもこれほど軽さを感じる悲愴は珍しいでしょう。
逆にシューマンの3番なんかは、まるでマーラーのような重さに驚かされます・・・って、これってもしかしたらマーラーの編曲版を使ってる?(調べてみたら、そのまんま、マーラーの編曲版を使っていることがわかりました)
頭から力一杯オケを鳴らして、その響きの分厚さはなかなかに聴き応えがあります。(荒っぽいという噂もありますが・・・^^;)
そして、ブラームスの1番のあの重々しい足取りがあるかと思えば、一転してこの上もなく正統派のスタイルで全曲を構成した2番の演奏なんかもあります。
しかし、ロッシーニやヴェルディの序曲、シューマンやチャイコフスキーの序曲のような作品になると豊かな歌心と確かな構成力が一人の指揮者のなかでしっかりと一つになっていることがよく分かります。
おかしな話ですが、大作ではいろいろと試みて、マンフレッド序曲やフランチェスカ・ダ・リミニ、ロッシーニ、ヴェルディの序曲などでは後のジュリーニを彷彿とさせる演奏を展開しているのです。
言ってみれば大きいところで挑戦して、小さいところで少しずつ結果を披露していくという感じでしょうか。
まあスペア扱いならば、それなりに好きにやらせてもらいますと言うところだったのかもしれません。
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