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イ・ムジチ合奏団(I Musici)|モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
イ・ムジチ合奏団 1958年10月10日~20日録音
Mozart:Adagio and Fugue in C minor, K.546
一種の神秘体験

この作品のフーガ部分は「2台のクラヴィーアのためのフーガ, K.426」を弦楽用に編曲したもので、そこにアダージョの導入部分を追加したものです。
モーツァルトが何故にピアノ作品を弦楽用に編曲しようとしたのか、その理由はよく分かっていませんが、おそらくは出版社のホフマイスターの提案だったのではないかと思われます。
それにしても、このアダージョのなんという素晴らしさ!!
驚くほどの静けさと驚くほどの悲劇性が交錯するのは「一種の神秘体験」と語った人がいました。まさにその通りです。
それ故に、このアダージョに続くフーガは一つの救いのようにすら思えます。
なお、アダージョの自筆楽譜は失われていますが、フーガの自筆譜にはチェロとコントラバスのパートによって低声部が書き分けられているので、モーツァルトはこの作品はオーケストラを想定していた可能性があります。
しかし、現在では弦楽四重奏で演奏されるのが一般的なようです。
大ヒットした「四季」を思い出させるモーツァルト
この録音は大ヒットした「四季」のおよそ半年ほど前のものとなります。
これは全くの受け売りなのですが、あの「四季」の前に彼らは1955年にモノラルで「四季」を録音しています。そして、その演奏は大ヒットした分厚い低声部をベースにしたまろやかな響きとは全く違って、切れ味の鋭い響きとなっているようです。「なっているようです」とは何とも無責任な話で申し訳ないのですが、そのモノラル録音が未だに入手出来ていないので残念ながら「伝聞系」とならざるを得ません。
おそらく、全くの想像ですが、「ソチエタ・コレルリ合奏団」のような演奏だったのかもしれません。
しかしながら、未だに私がその録音を入手出来ないと言うことはそれだけ売れなかったと言うことであり、その事は「ソチエタ・コレルリ合奏団」も同様でした。
つまりは、バッハならば漸くリヒターの様な演奏が受容されるようになってきていても、それ以前のバロック音楽ではなかなか難しかったようなのです。
そして、彼らはそう言う「聞き手」を意識して1959年に大トロの「四季」を演奏し、それが記録的な大ヒットとなったのです。
そして、その転換はすでにこの半年前のモーツァルト演奏からもはっきりと窺うことが出来ます。
1958年の10月2日に以下の4曲を一気に録音しています。
- モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」, K.525
- モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
- モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調, K.136/125a
- モーツァルト:セレナード 第6番 ニ長調 K.239「セレナータ・ノットゥルナ」
分厚い低声部を土台にして、レガート奏法も取り入れた響きは大ヒットした「四季」を連想させます。
しかしながら、そう言う響きでゆったりとモーツァルトを演奏されてみると、貧血気味のピリオド演奏を散々書きされた耳には実に心地よく響きます。また、現在では弦楽四重奏で演奏されるのが一般的な「アダージョとフーガ ハ短調」をこのような響きで聞けるというのは涙ものです。
もちろん、耳タコの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」も、ここまで嫋々と演奏されると、それはそれで悪くはないなと思ってしまいます。
特に、B面に収録されることになったディヴェルティメントとセレナードは、若きモーツァルトに相応しい伸びやかな音楽に仕上がっています。もっとも、例えば「セレナータ・ノットゥルナ」のメヌエット楽章に見られるような過剰な表情づけには眉を顰める人もいるかもしれませんが、それが今の時代には逆に魅力的に思えたりもします。
まさに、「四季」の大ヒットはここに予告されていたのかもしれません。
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