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ビゼー:「祖国」序曲 作品19

シャルル・ミュンシュ指揮 フランス国立管弦楽団 1966年10月~11月録音



Bizet:Patrie Ouverture dramatique, Op.19


チャイコフスキーの序曲「1812年」に影響を与えた作品

フランスの指揮者であったジュール・パドルーからの依頼で作曲された作品です。ジュール・パドルーはパリ11区のサーカス小屋において大衆向けの安価な演奏会を始め、そこで、サン=サーンス、ビゼー、ブラームス、ワーグナー、グリンカ、チャイコフスキーと言う。当時としては(^^;新進気鋭の若手の作曲家の作品を紹介していました。

そして、ジュール・パドルーからのビゼーへの依頼は「交響曲」であったのですが、彼が提出したのはこの序曲「祖国」でした。しかし、ジュール・パドルーはその事には何も言わずに1874年に自らのコンサートで取り上げて初演をおこっています。そして、その初演においてこの作品は大成功をおさめます。

ビゼーがこの作品に「祖国」というタイトルを与えた理由に関しては何も語っていません。ですから、学問的には何も語ることは出来ないのでしょうが、その背景には1870年から71年にかけて戦われた普仏戦争での敗北があったことは昔から指摘されてきました。また、ポーランドが他国によって分割占領されるという悲劇的な出来事への憤りと深い同情もあったのではないかと言うことも語られています。

ただし、ビゼー自身がこの事に関しては何も語っていない以上は全ては「藪の中」です。
ただし、この作品にチャイコフスキーが大きな影響を受けたのは間違いないようで、彼の序曲「1812年」はビゼーのこの作品に対するオマージュであることは確かです。


ゆったりと、そして熱く

ミンシュの録音と言えば「RCA」と強く結びついていますから、「コンサートホール(Concert Hall Society)」にも録音をしていたことに驚きました。もっとも、今頃何を言っているんだと言われそうなのですが、考えてみれば1962年にボストン交響楽団の常任指揮者を退いていますから、それと前後して「RCA」との契約も切れたのかもしれません。近年発売された「Charles Munch - The Complete RCA Album Collection」というボックス盤では1963年3月14日にボストン交響楽団ではなくて、フィラデルフィア管弦楽団と録音したのが「RCA」での最後になっているようです。

その後、フランスが国威をかけて設立したパリ管弦楽団を率いることになり、ベルリオーズやブラームスで圧倒的な音楽を聞かせたのですが、それらは「His Master's Voice(EMI)」が録音をしていました。
ですから、その間に何も録音活動をしていないはずがないのであって、その期間を埋めたのが「コンサートホール」での録音だったようなのです。

ただし、その録音は片手間どころではなくて、注目に値する録音となっています。

ミンシュと言えば、どうしても最晩年のパリ管弦楽団との録音が思い浮かぶのですが、それは彼の録音の中でも特異と言ってもいいほどの熱い演奏になっています。それと比べれば、彼が長きにわたって相棒を組んできた「RCA」でのボストン交響楽団での録音はばはるかに常識的な範疇におさまっています。
ですから、その変化に多くの人が驚くのですが、その両者を結ぶミッシング・リンクのような存在なのが「コンサートホール」での録音だったのです。

ビゼーの交響曲は若書きの作品です。
しかし、ここでのミュンシュはそう言うことは忘れてしまったかの様に、ゆったりとしたテンポで大きな音楽として仕上げています。ビゼーの交響曲ってこんなにも立派な音楽だったのかなと思うほどです。
さらに言えば、その音楽には溢れるほどのロマンティシズムが注ぎ込まれています。

そして、そのスタイルは同じレコードにカップリングされている「子どもの遊び」や「祖国」においても同様です。とくに、「子どもの遊び」の熱さは最晩年のパリ管での音楽に結びついていくようなおもむきがあります。

こうして聞いてみると、やはりアメリカは「ザッハリヒカイト」な音楽が支配的だったんだなと思わざるを得ません。おそらく、その潮流はミュンシュの本性とどこか相容れないものがあったはずです。
しかしながら、ボストン時代のミンシュは同時代のアメリカの指揮者と較べればはるかに主情的な音楽を聞かせてくれたのですが、それでも最後の枠は踏み外さないようにしていたのでしょう。

ボストン響を退いてフランスのオケが活動の中心になると、そう言う枠を気にすることもなく、己の思うがままに音楽を楽しむようになったのでしょう。
この「コンサートホール」レーベルでの録音を聞くとそのような妄想がわきあがってきます。

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