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バルトーク:管弦楽のための協奏曲, Sz.116

カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1963年3月録音



Bartok:Concerto for Orchestra Sz.116 [1.Introduzione]

Bartok:Concerto for Orchestra Sz.116 [2.Giuoco delle coppie]

Bartok:Concerto for Orchestra Sz.116 [3.Elegia]

Bartok:Concerto for Orchestra Sz.116 [4.Intermezzo interrotto]

Bartok:Concerto for Orchestra Sz.116 [5.Finale]


ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽

この管弦楽のための協奏曲の第3曲「エレジー」を聞くと、ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽を思い出すと言ったのは誰だったでしょうか?
それも、涙でにじんだ真っ赤な夕陽だと書いていたような気がします。

上手いことを言うものです。
音楽を言葉で語るというのは難しいものですが、このように、あまりにも上手く言い当てた言葉と出会うとうれしくなってしまいます。
そして、第4曲「中断された間奏曲」もラプソディックな雰囲気を漂わせながらも、同時に何とも言えない苦い遊びとなっています。

私はこの音楽にも同じような光景が目に浮かびます。

バルトークが亡命したアメリカはシェーンベルグに代表されるような無調の音楽がもてはやされているときで、民族主義的な彼の音楽は時代遅れの音楽と思われていました。
そのため、彼が手にした仕事は生きていくのも精一杯というもので、ヨーロッパ時代の彼の名声を知るものには信じがたいほどの冷遇で、その生活は貧窮を極めました。

そんなバルトークに援助の手をさしのべたのがボストン交響楽団の指揮者だったクーセヴィツキーでした。(その背景にはフリッツ・ライナーやメニューヒンもいました)
もちろんお金を援助するのでは、バルトークがそれを拒絶するのは明らかでしたから、作品を依頼するという形で援助の手をさしのべました。

そのおかげで、私たちは20世紀を代表するこの傑作「管弦楽のための協奏曲」を手にすることができました。

一般的にアメリカに亡命してから作曲されたバルトークの作品は、ヨーロッパ時代のものと比べればはっきりと一線を画しています。その変化を専門家の中には「後退」ととらえる人もいて、ヨーロッパ時代の作品を持ってバルトークの頂点と主張します。
確かにその気持ちは分からないではありませんが、私は分かりやすくて、人の心の琴線にまっすぐ触れてくるようなアメリカ時代の作品が大好きです。

また、その様な変化はアメリカへの亡命で一層はっきりしたものとなってはいますが、亡命直前に書かれた「弦楽四重奏曲第6番」や「弦楽のためのディヴェルティメント」なども、それ以前の作品と比べればある種の分かりやすさを感じます。
そして、聞こうとする意志と耳さえあれば、ロマン的な心情さえも十分に聞き取ることもできます。

亡命が一つのきっかけとなったことは確かでしょうが、その様な作品の変化は突然に訪れたものではなく、彼の作品の今までの延長線上にあるような気がするのですが、いかがなものでしょうか。


このコンビならではの純度の高い響が魅力

アンチェル&チェコ・フィルによるバルトーク作品の録音は数少ないと思うので、それほどメインのプログラムではなかったはずです。しかし、この「管弦楽のための協奏曲」は非常にユニークな演奏に仕上がっています。
まず聞き始めてすぐに気づくのは、このコンビならではの純度の高い響きです。もちろん、こういう作品を取り上げるときはどの指揮者もオケの演奏精度の高さを誇示するのがふつうなのですが、こういう響きの純度にこだわる指揮者は殆どいません。セルにしてもショルティにしてもまずは合奏精度がありきで、その結果として響きの透明性は自然と確保されるというスタンスです。

しかし、このアンチェルによる「管弦楽のための協奏曲」は、何よりもチェコ・フィルとのコンビで作りだされる響きにこそ魅力があります。そして、その響きでもって、実に親しみやすく音楽を運んでいきます。
「管弦楽のための協奏曲」はバルトーク作品の中ではもっとも「聞きやすい」作品に分類されるとは思うのですが、それでも古典派やロマン派の音楽に慣れ親しんできた人にとってはやはり取っつきにくい音楽であることは否定できません。その意味では、バルトークのような20世紀らしい作品に初めて挑戦しようとする人にとってはお薦めの録音だと言えそうです。

しかし、それは逆から見れば、こういう作品に慣れ親しんできた人にとっては幾ばくかの不満を感じると言うことになります。
その不満を一言で言えば、バルトークの作品に込められているある種の「野蛮」さや「狂気」のようなものが見事に丸め込まれていると言うことで、さらに言えばその丸め込まれた部分をチェコ・フィルの温かい響きがコーティングまでしている感じです。

ただし、そのままで曲のフィナーレをむかえてはさすがにまずいと思ったのでしょう。
最終楽章のコーダにはいると一気に雰囲気が変わって大きく音楽を盛りあげて締めくくっています。なので、美点と不満を感じながらも、最後はバカボンのパパではないのですが「これでいいのだ!」という思いにしてくれます。

そして、セルやショルティみたいにガチガチな音楽でこういう作品を聞いてきたものにとっては、こういう選択肢も別にあるというのは貴重なのかもしれないと思ったりもします。

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