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シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125 & ベートーベン:「プロメテウスの創造物」から

シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1960年3月7日録音

Schubert:Symphony No.2 in B flat major, D.125 [1. Largo - Allegro vivace]

Schubert:Symphony No.2 in B flat major, D.125 [2.Andante]

Schubert:Symphony No.2 in B flat major, D.125 [3.Menuetto. Allegro vivace - Trio]

Schubert:Symphony No.2 in B flat major, D.125 [4.Presto]

Beethoven:The Creatures of Prometheus, Op.43 [Overture]

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Beethoven:The Creatures of Prometheus, Op.43 [No.16.Final]


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初期シンフォニーの概要

シューベルトの音楽家としての出発点はコンヴィクト(寄宿制神学校)の学生オーケストラでした。彼は、そのオーケストラで最初は雑用係として、次いで第2ヴァイオリン奏者として、最後は指揮者を兼ねるコンサートマスターとして活動しました。
この中で最も重要だったのは「雑用係」としての仕事だったようで、彼は毎日のようにオーケストラで演奏するパート譜を筆写していたようです。

当時の多様な音楽家の作品を書き写すことは、この多感な少年に多くのものを与えたことは疑いがありません。

ですから、コンヴィクト(寄宿制神学校)を卒業した後に完成させた「D.82」のニ長調交響曲はハイドンやモーツァルト、ベートーベンから学んだものがつぎ込まれていて、十分に完成度の高い作品になっています。そして、その作品はコンヴィクト(寄宿制神学校)からの訣別として、そこのオーケストラで初演された可能性が示唆されていますが詳しいことは分かりません。

彼は、その後、兵役を逃れるために師範学校に進み、やがて自立の道を探るために補助教員として働きはじめます。
しかし、この仕事は教えることが苦手なシューベルトにとっては負担が大きく、何よりも作曲に最も適した午前の時間を奪われることが彼に苦痛を与えました。
その様な中でも、「D.125」の「交響曲第2番 変ロ長調」と「D.200」の「交響曲第3番 ニ長調」が生み出されます。

ただし、これらの作品は、すでにコンヴィクト(寄宿制神学校)の学生オーケストラとの関係は途切れていたので、おそらくは、シューベルトの身近な演奏団体を前提として作曲された作品だと思われます。
この身近な演奏団体というのは、シューベルト家の弦楽四重奏の練習から発展していった素人楽団だと考えられているのですが、果たしてこの二つの交響曲を演奏できるだけの規模があったのかは疑問視されています。

第2番の変ロ調交響曲についてはもしかしたらコンヴィクトの学生オーケストラで、第3番のニ長調交響曲はシューベルトと関係のあったウィーンのアマチュアオーケストラで演奏された可能性が指摘されているのですが、確たる事は分かっていません。

両方とも、公式に公開の場で初演されたのはシューベルトの死から半生ほどたった19世紀中葉です。
作品的には、モーツァルトやベートーベンを模倣しながらも、そこにシューベルトらしい独自性を盛り込もうと試行錯誤している様子がうかがえます。

そして、この二つの交響曲に続いて、その翌年(1816年)にも、対のように二つのシンフォニーが生み出されます。
この対のように生み出された4番と5番の交響曲は、身内のための作品と言う点ではその前の二つの交響曲と同じなのですが、次第にプロの作曲家として自立していこうとするシューベルトの意気込みのようなものも感じ取れる作品になってきています。

第4番には「悲劇的」というタイトルが付けられているのですが、これはシューベルト自身が付けたものです。
しかし、この作品を書いたとき、シューベルトはいまだ19歳の青年でしたから、それほど深く受け取る必要はないでしょう。
おそらく、シューベルト自身はベートーベンのような劇的な音楽を目指したものと思われ、実際、最終楽章では、彼の初期シンフォニーの中では飛び抜けたドラマ性が感じられます。

しかし、作品全体としては、シューベルトらしいと言えば叱られるでしょうが、歌謡性が前面に出た音楽になっています。
また、第5番の交響曲では、以前のものと比べるとよりシンプルでまとまりのよい作品になっていることに気づかされます。

もちろん、形式が交響曲であっても、それはベートーベンの業績を引き継ぐような作品でないことは明らかです。
しかし、それでも次第次第に作曲家としての腕を上げつつあることをはっきりと感じ取れる作品となっています。

シューベルトの初期シンフォニーを続けて聞いていくというのはそれほど楽しい経験とはいえないのですが、それでもこうやって時系列にそって聞いていくと、少しずつステップアップしていく若者の気概がはっきりと感じとることが出来ます。
この二つの作品を完成させた頃に、シューベルトはイヤでイヤで仕方なかった教員生活に見切りをつけて、プロの作曲家を目指してのフリーター生活に(もう少しエレガントに表現すれば「ボヘミアン生活」に)突入していきます。

そして、これに続く第6番の交響曲は、シューベルト自身が「大交響曲ハ長調」のタイトルを付け、私的な素人楽団による演奏だけでなく公開の場での演奏も行われたと言うことから、プロの作曲家をめざすシューベルトの意気込みが伝わってくる作品となっています。
また、この交響曲は当時のウィーンを席巻したロッシーニの影響を自分なりに吸収して創作されたという意味でも、さらなる技量の高まりを感じさせる作品となっています。

その意味では、対のように作曲された二つのセット、2番と3番、4番と5番の交響曲、さらにはプー太郎になって夢を本格的に追いかけ始めた頃に作曲された第6番の交響曲には、夢を追い続けたシューベルトの青春の、色々な意味においてその苦闘が刻み込まれた作品だったといえます。

ベートーベン:プロメテウスの創造物序曲



ベートーベンが書いた、実質的には唯一のバレエ音楽がこの「プロメテウスの創造物」です。

原作はイタリアのバレエ作家であり舞踏家でもあったザルヴァトーレ・ヴィガーノです。
彼な既に何度かウィーンを訪れて成功を収めていたのですが、1801年にもウィーンを訪れて新作の「プロメテウスの創造物」を成功させようとしていたのです。彼がこのプロメテウスを選んだ背景にはハイドンの「天地創造」が大変な人気だったことがあると言われています。
そして、彼は親族に偉大な音楽家であったボッケリーニがいたのですが、その縁で音楽的素養もあり、当時ウィーンで売り出し中の新進の音楽であったベートーベンに作曲を依頼する事になったのです。

ベートーベンはその依頼を受けて、序曲と16曲からなる音楽を作曲し、バレエ公演も大成功をおさめて2年間で30回近い公演が行われたことが記録されています。
しかし、現在ではこの全曲が演奏されることはほとんどなく、僅かに序曲と終曲だけが演奏されるだけになっています。

序曲は緩やかな序奏部と変則的なソナタ形式による主部から成り立っていて、その序奏部は彼のファーストシンフォニーにもつながっていく大胆さを備えています。


鶏を裂くに牛刀を用いているのか、そもともこれはただの鶏ではないのか、あれこれと考えさせられる録音です

この録音にはあれこれと複雑な感情を引き起こされます。
ミュンシュは9番「グレート」に対したときと同じ意気込みと方法論を持って、シューベルトの習作とも言うべき交響曲に対して臨んでいるからです。

まさに「鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん」なのです。
言うまでもなく2番の交響曲が「鶏」であり、、グレート」を捌くのに用いた方法論が「牛刀」というわけです。

ミュンシュは楔を打ち込むような縦割りのリズムで「グレート」を構築していたのですが、その強烈さはベートーベンの交響曲でも滅多に聴けないほどの凄みがありました。
そして、それとほとんど同じ事をこの第2番の交響曲にも適用しているのです。

これはもう、いくら何でもやりすぎだろうと思うのですが、しかし、聞き進んでいくうちに不思議な感情がわき起こってくるのです。
それは、この一般的には習作の域を出ないと言われる交響曲は、世間一般で言われるような「ただの鶏」なんだろうかという思いです。

考えてみれば、ミュンシュほどの男が、ただの酔狂でこういう作品を取り上げるとも思われません。
ミュンシュという人は「コンプリート」という考えは全くなかったようで、例えばブラームスでは1,2,4番は録音していても、私の知る限りでは3番は録音をしていません。普通はここまでくればお義理でも録音をして「全集」にする指揮者が多いのです。

ところが、ミュンシュという人は気の進まない作品は録音もしなければ演奏もしないというスタンスを取っていたように見えるのです。
そんな男が、何故かシューベルトの交響曲の中では全くの習作と思われている第2番を何度も取り上げて、さらには2回も録音しているのです。

と言うことになれば、ミュンシュにしてみれば、この交響曲はただの習作ではなくて、グレートに適用したような方法論がそのまま適用しうる交響曲だと考えていたことになります。
そして、そう言うバイアスのかかった(^^:耳で聞き直してみれば、なるほど、こいつはもしかしたらただの「鶏」ではないかもしれないと思ってくるから不思議です。

少なくとも、そう思わせる力がこの録音にはあります。
それだけは間違いありません。

そこで、もう一つ思い出したのはスタインバーグの録音です。
モノラル録音(1952年録音)なのですが、極めて優秀な録音なので、指揮者が何をしているのかはこのミュンシュの録音よりも明瞭に聞き取れるかもしれません。

そして、このスタインバーグもまた、この交響曲をただの習作としてではなく、古典派の音楽としての資格を有した交響曲として対峙している事がよく分かります。
ただし、聞き比べてみれば、その対峙の仕方は全く違います。

なるほど、こうして聞き比べてみれば、ミュンシュという指揮者はうまいものを食わせるというので有名な食堂の頑固親父みたいな感じです。
「これ一度食って見ろ、うまいから!」って感じでどんとお皿を出してくれる感じで、言われるままに食ってみれば確かにうまいのです。

それに対して、スタインバーグの方は、これが世間で言われるような食べ物ではなくて、結構独創性に富んだ美味しいものだと言うことを懇切丁寧に教えてくれます。

第1楽章の主題はベートーベンの「プロメテウスの創造物」の旋律を思い出せますし、第2主題はモーツァルト屋さんの味わいに似てます。
第2楽章の変奏曲形式も主題の輪郭は崩さずに音価を小さくしていく辺りはまさにハイドン屋さんの味です。
でも、第4変奏が突然短調になる辺りはベートーベン屋さんの味付けを思い出させます。

でも、第3楽章のメヌエットが短調というのはこの店だけでしょう。第4楽章の味わいも他では食べられませんよ。
そんなわけで、この店のお品は他の店の味を参考にしただけのものではないんですよ。


・・・みたいなことを懇切丁寧教えてくれる感じです。
お皿が出てくると、そのお皿について細々説明してくれるあの感じです。

まあ、それはそれで有り難い話ではあります。

ただ、何も言わずに、この交響曲とベートーベンのプロメテウスの創造物を盛り合わせてどんと食ってみろというミュンシュ屋の親父も凄いのです。
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