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ムソルグスキー:展覧会の絵

(P)バイロン・ジャニス 1958年5月13日,15日 & 19日~21日 & 27日録音

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [1.Promenade]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [2.Gnomus]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [3.Promenade]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [4.Il vecchio castello]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [5.Promenade]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [6.Tuileries]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [7.Bydlo]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [8.Promenade]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [9.Ballet des petits poussins dans leurs coques]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [10.Samuel Goldenberg und Schmuyle]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [11.La Grande Nouvelle]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [12.Sepulcrum romanum]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [13.Cum mortuis in lingua mortua]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [14.Baba-Yaga]

Mussorgsky:Pictures at an Exhibition for piano [15.La Porte des bogatyrs]


今までの西洋音楽にはない構成

組曲「展覧会の絵」は作曲者が35歳の作品。親友の画家で建築家のヴィクトール・ガルトマン(1834~1873)の遺作展が開かれた際に、そのあまりにも早すぎる死を悼んで作曲されたと言われています。
彼は西洋的な音楽語法を模倣するのではなく、むしろそれを拒絶し、ロシア的な精神を音楽の中に取り入れようとしました。
この「展覧会の絵」もガルトマンの絵にインスピレーションを得た10曲の作品の間にプロムナードと呼ばれる間奏曲風の短い曲を挟んで進行するといった、今までの西洋音楽にはない構成となっています。
よく言われることですが、聞き手はまるで展覧会の会場をゆっくりと歩みながら一枚一枚の絵を鑑賞しているような雰囲気が味わえます。

作品の構成は以下のようになっています。

「プロムナード」
1:「グノームス」
2:「古い城」
「プロムナード」
3:「チュイルリー公園」
4:「ヴィドロ」
「プロムナード」
5:「殻をつけたままのヒヨコのバレエ」
6:「ザムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」
「プロムナード」
7:「リモージュの市場」
8:「カタコムベ(ローマ人の墓地)」
9:「ニワトリの足に立つ小屋(ババヤーガ)」
10:「雄大な門(首都キエフにある)


成熟した一人前の音楽家になるために一度は辿る必要がある道

「展覧会の絵」と言えばホロヴィッツの看板の一つです。ラヴェルのオーケストラ編曲をそのままピアノにアレンジしたような彼の演奏は、敢えて言えば「ホロヴィッツ版」とでも言いたいような編曲であり、とりわけ、1951年盤はこの作品の凄みを遺憾なく発揮した演奏でした。

「ピアノという楽器はかくも容易く軽々と演奏できるものなのかという驚き、そして自由奔放に弾きこなしているだけなのにそこから紡ぎ出される音楽はたとえようもなく美しい。何よりも、その音楽から発散される爽快感と開放感は他のどのピアニストからも感じ取れないものでした。
それは、伝統と形式の積み重ねの上にがっちりと構築された音楽とは対極にある、ある意味ではエンターテイメントの極みとも言うべき演奏であることは確かです。」

とまあ、こんな風に賛辞を呈したのですが、その気持ちは今も変わることはありません。1951年のライブ録音という音質面のハンデも、この凄味の前ではほとんど気になりません。

その「展覧会の絵」にホロヴィッツの弟子であるバイロン・ジャニスとゲイリー・グラフマンが挑んだのがこの録音です。
当然の事ながら、この2つの演奏の背後にホロヴィッツの影がないと言えば嘘になるでしょう。気にするなと言われても、そして気にしないと心に念じていたとしても、そう念じた時点で呪縛されていると言うことです。


  1. バイロン・ジャニス:1958年5月13日,15日 & 19日~21日 & 27日録音

  2. ゲイリーグラフマン:1962年5月23日~25日録音



こうして録音のクレジットを見ているだけでも、ジャニスは随分と苦闘したのかなと思わざるを得ません。そして、ホロヴィッツがジャニスに対して「絶対に俺のコピーになるな」と言っていたにもかかわらず、残されたジャニスの録音を聞く限りでは、彼の演奏は驚くほどに「ミニ・ホロヴィッツ」だと思ってしまいます。

とりわけピアノの鳴らし方において、ジャニスはホロヴィッツの響きを理想として、それに近づこうとする誘惑から逃れられていないように思います。ただし、その直線性に富んだ強靱な打鍵によって構築される音楽にある種の爽快感を感じてしまうのも事実なので困ってしまいます。
ただし、こんな鳴らし方をしていたらいつか指を壊すだろうな、とは思ってしまいます。

それと比べれば、グラフマンの方はホロヴィッツのコピーにはなっていないことは明らかです。
ヨーロッパのピアニストほどではないにしても、厚めの低声部の上にピラミッド形のバランスで響きを構築しているのは、ある意味では芸人ホロヴィッツとは世界を異にするものです。

音楽の作り方も、直線の剛速球で押し通すジャニスと較べれば、ある程度は変化球を交えた陰影が感じられる作りになっています。
ただし、こうして二つを較べてみれば、グラフマンのような演奏は、グラフマンでなくても他で聞くことができるという切って捨て方をされても文句が言えません。
それに対して、ジャニスの演奏は、たとえホロヴィッツのコピーとくさされても、ホロヴィッツが演奏活動の第一線から退いている限りは、ジャニスでしか聞くことのできない世界であることも事実なのです。

よって、この時代のアメリカにおけるピアノの寵児はジャニスであり、もう一人はチャイコフスキーコンクールでアメリカに栄冠をもたらしたクライバーンだったのです。

しかし、こうして二人を較べてみてもう一つ気づかされるのは、若手の音楽家が本当に成熟した一人前の音楽家になるためには、やはりグラフマンのような道を一度は辿る必要があると言うことです。
その道を結局はたどれなかったジャニスやクライバーンは、結果として若手ピアニストのままにキャリアを終えたというのは、彼らにとって酷な言い方なのでしょうか?

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