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ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)|ムソルグスキー:交響詩「兀山の一夜」(リムスキー=コルサコフ版)
ムソルグスキー:交響詩「兀山の一夜」(リムスキー=コルサコフ版)
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1956年9月29日録音
Mussorgsky:Night on Bald Mountain
これもまたリムスキー=コルサコフによって世に出た作品
この作品はムソルグスキーの代表作となっているのですが、そして、それはその通りなのですが、細かく見ていくと幾つかのエクスキューズがつかざるを得ません。
まずは、この作品は合唱と管弦楽のための作品として構想されたものなのですが、残されたのはピアノ譜だけでした。もとはオペラ「ソロチンツィの定期市」の中の間奏曲として構想されたものなのですが、ムソルグスキーにはよくある話の「未完のままの放置」によって、そうなった次第です。
ただし、そこで構想された「間奏曲」は物語とは直接関係のない「悪魔の饗宴」を描いたものだったので、それならば、放置されたオペラとは関係無しに管弦楽曲として完成させたのがリムスキー=コルサコフだったのです。タイトルも、この作品の遠い原型となった「兀山のヨハネ祭の夜」にちなんで交響詩「兀山の一夜」となった次第です。
その意味では、音楽の骨格部分は紛れもなくムソルグスキーのものなのですから、これを彼の代表作に数え上げることになんの不都合もありません。しかしながら、そう言う骨格部分を一つにまとめ上げ華麗なオーケストレーションを施した功績は疑いもなくリムスキー=コルサコフにあります。ですから、これを交響詩「兀山の一夜」(リムスキー=コルサコフ版)と呼ぶのは実に正しい表記の仕方だと言えるのです。
なお、この楽譜の冒頭には次のような説明が付けられています。
「治下から響いてくる不気味な声。闇の精たちの登場。続いて闇の王チェルノボグの出現。チェルノボグに対する賛美と暗黒ミサ。魔女たちのサバドの饗宴。この狂乱が絶頂に達したとき、遠く野村の教会の鐘が鳴り始め闇の精たちは退散する。そして夜明け。」
50~60年代には非常に人気のあった作品
50~60年代の録音リストを眺めていると、この小品が非常に多く録音されていることに気づきます。穿った見方をすれば、それなりにまとまった作品を録音したときのLP盤の空きを埋めるための「埋め草」としてちょうどいいサイズだったからだとも言えます。これがCDの時代になると、埋め草を使うよりは「まとまった作品」を二つ収録した方が収まりがいいので、この手の小品の録音は少なくなっていったようなきがします。
しかしながら、この「分かりやすい状況設定」と、それに相応しい「おどろおどろしくも華麗なオーケストラの響き」は聞き手を簡単に虜にさせる魅力があったことも事実です。「埋め草」としてのサイズなら、これ以外にもピッタリな作品はたくさんあったのですが、そう言う数ある中からこの作品が「埋め草」として選ばれる機会が多かったのはそれなりに理由があります。
そして、その結果として新進気鋭から老巨匠に至るまで、数多くの指揮者がこの作品を同時代に取り上げているので、それらを聞き比べてみるのも一つの楽しみと言えます。
と言うわけで、パブリック・ドメインとなっている録音の中から面白そうなものを「兀山の一夜」を集めてみました。
貴方のお気に召すのはどれでしょうか?
- Antal Dorati:London Symphony Orchestra Recorded 8/6/1960
- Eugene Ormandy:The Philadelphia Orchestra Recorded 19/4/1958
- Lorin Maazel:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded 2/1959
- Georg Solti:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded 1959
- Carlo Maria Giulini:Philharmonia Orchestra Recorded 29/9/1956
色々聞いてきて、最終的にはこれが一番立派な「兀山の一夜」だというのが私の感想です。オーマンディ盤の魔女をセレブリティと表現したのですが、こちらの方はそう言うレベルを超越した、一段も二段も格が高い偉大なる魔女の饗宴という雰囲気が漂います。
こう言うのを聞かされると、ジュリーニというのは若い頃から一つ頭が抜けていたのかな、と言う気がします。
おそらく、繰り返し聞かれる「録音」という観点ならば、これが一番素晴らしいでしょうし、一回限りの「面白さ」を追求するならばショルティ盤でしょうか。
こういう聞き比べも「小品」ならば飽きることなく楽しめると思うのですが、いかがだったでしょうか?
この演奏を評価してください。
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