クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ロリン・マゼール(Lorin Maazel)|ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」

ロリン・マゼール指揮 ベルリンフィル 1958年5月~6月録音

Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [1.Allegro con brio]

Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [2.Andante con moto]

Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [3.Scherzo: Allegro]

Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [4.Allegro]


極限まで無駄をそぎ落とした音楽

今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。

交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。

この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803?4年にかけて創作されています。)

しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。

そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。

その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。

それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)

それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。


上りの美学、下りの美学

「マゼールがこの時期に、ウィーンフィルとの間でシベリウスとチャイコフスキーの交響曲全集を完成させることができたのはマゼール自身にとっても、聞き手ある私たちにとってもとても幸運なことでした。
何故ならば、ここには頂点を目指して駆け上がっていく溢れる才能がほとばしっているからです。」

こんな事を書いたことがあるのですが、それは20代後半というもっと若い時期にベルリンフィルを相手に録音した演奏でも同様で、もしかしたら、もっと大きな「幸運」を感じることができるかもしれません。

この少し後になるとアバドやムーティ、そしてメータや小沢などと言う若手が同じような勢いに溢れる演奏を聴かせてくれるようになります。
確かに、若い頃の小沢は今からは想像もできないほどに素晴らしい音楽を聴かせてくれたものです。

ただし、彼らには残念な共通もがあります。
それぞれが世界的にトップクラスのオケのシェフと言う地位を手に入れて、そこで安定して音楽活動を始められるようになると、平均点はそこそこなのに、彼らが何をしたいのかが聞き手に伝わってこないような音楽ばかりを生み出すようになったことです。
いや、こんな言い方をすると反論もあるでしょう。しかし、私には、そう言う不満がいつもついて回り、結果として90年代以降になると彼らの新しい録音は殆ど聴かないようになってしまいました。
それはマゼールにおいても同様です。

当時は別に何故なんだろう?などとは考えませんでした。
私も若かったですから、ただ「面白くないものに金は使いたくはない」という一点だけでした。

しかし、年を重ねてきて、気がつくこともあります。

頂点目指して駆け上がっていくのは体力も必要ですし気力も求められますから、しんどいことはしんどいです。
しかし、目指すべき頂点ははっきり見えているわけですから、その見えている一点を目指して駆け上がっていくのはそれほど困難なことではありません。

問題は、頂点に近づいてきて、今度は何処を目指して進んでいくかを自分で見いださなければならなくなったときです。そして、彼らの多くはその頂上付近でぐるぐる回るばかりでした。
その違いは、たとえばテンシュテットやクライバーと比較してみれば明らかです。

しかし、山は登れば下りなければいけません。
やがて、彼らもまた下山の時を迎え、その衰えを自覚して下りの芸術に取り組むことを余儀なくされるときがきています。

しかし、どうしても下れない人もいます。
世間はそれを「老醜」と言います。

指揮者にはこの「老醜」をさらす人が多いのですが、稀に、見事に下って見せる人がいます。
そして、驚くべきは、同世代の指揮者の中では一番ギラギラしていると思われていたマゼールが見事に山を下ってみせたことです。結果として、大きな環を閉じることで、この若い時代の勢いに満ちた演奏にも大きな価値が生まれたのです。

指揮者にとって「若い頃は良かったのにね」と言われるのは屈辱以外の何ものでもないと思われます。この屈辱をはねのけるには、誰もが認める天辺まで駆け上がるか、見事に山を下ってみせるかの二つしかありません。

その事を思えば、もう少しでもいいので長生きをしてほしかった指揮者の一人でした。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2747 Rating: 5.1/10 (197 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください。
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-10-27]

ディエゴ・オルティス:レセルカーダとその基となった歌曲およびマドリガル集(Diego Ortiz:Recercadas, Songs And Madrigals)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ (Vdg)アウグスト・ヴェンツィンガ (harpsichord)エドゥアルト・ミュラー 1953年10月8日~9日録音(Walter Gerwig:(Vdg)August Wenzinger (harpsichord)Eduard Muller Recorded on October 8-9, 1953)

[2026-10-25]

ヴォーン・ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲(Vaughan Williams:Fantasia on a Theme_by Thomas Tallis)
マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on 1959)

[2026-10-23]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30(Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30)
(P)モーラ・リンパニー:アンソニー・コリンズ指揮、ロンドン新交響楽団(Moura Lympany:(Con)Anthony Collins New Symphony Orchestra of London Recorded on 1952)

[2026-10-21]

リリ・ブーランジェ:古い仏教の祈り(Boulanger:Vieille Priere Bouddhique)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (T)レイモンド・アマデ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Alain Fauqueur Recorded on 1958)

[2026-10-19]

エマヌエル・ポンセ:イ短調組曲(Poncw:Suite In A minor)
(Gt)アンドレス・セゴビア:1930年録音(Andres Segovia:Recorded on 1930)

[2026-10-17]

ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

[2026-10-15]

メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)

[2026-10-13]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)

[2026-10-11]

ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)

[2026-10-09]

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)