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ワルター(Bruno Walter)|ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 イ短調 作品102
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 イ短調 作品102
ブルーノ・ワルター指揮 (Vn)ジノ・フランチェスカッティ (Vc)ピエール・フルニエ コロンビア交響楽団 1959年11月20日~23日録音
Brahms:Concerto for Violin and Cello and Orchestra in A major Op.102 "Double Concerto" [1.Allegro]
Brahms:Concerto for Violin and Cello and Orchestra in A major Op.102 "Double Concerto" [2.Andante]
Brahms:Concerto for Violin and Cello and Orchestra in A major Op.102 "Double Concerto" [3.Vivace non troppo]
ブラームス、最後の管弦楽作品
独奏楽器にヴァイオリンとチェロという豊かに旋律を歌える楽器を使用した協奏曲です。
こういう構成はバロック時代の合奏協奏曲を思い出させるのですが、聞いてみれば純然たる古典派以降の独奏協奏曲のスタイルです。
念のためにお復習いをしておきますが(^^;、「合奏協奏曲」とは、独奏楽器群(コンチェルティーノ)とオーケストラの総奏(リピエーノ)に分かれ、2群が交代しながら演奏する楽曲のことです。
コレッリの合奏協奏曲などが有名です。ちなみに、コレッリの合奏協奏曲では、独奏楽器は2本のヴァイオリンと1本のチェロによって構成されるるのが基本です。
それに対して、一人の独奏楽器の奏者にオーケストラの総奏が対峙するのが通常の「協奏曲」で、「合奏協奏曲」との区別を明確にするために「独奏協奏曲」なんて言う言い方をします。
このブラームスの「二重協奏曲」と題されることもあるこの協奏曲は二つの独奏楽器が名人芸を発揮しながらオケと対峙する形を取っていますから、明らかに通常の「独奏協奏曲」です。
なお、古典派以降で、こういう二つ以上の楽器が独奏楽器として扱われる作品としてはモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」やベートーベンの「ピアノ、ヴァイオリンとチェロと管弦楽のための三重協奏曲」があります。当然、そう言う作品の影響もあったでしょうが、それでもチェロとヴァイオリンという旋律を歌うことに長けた二つの楽器で独奏を担当するというのは異例の構成です。
なお、この作品は、つまらぬ事から不仲となったヨアヒムとの関係を修復しようとして作曲されたと言われていますので、クララは「和解の協奏曲」と呼んだそうです。
ただし、完成したこの作品に対してクララは終始否定的で、「作曲をする人にとっては興味のある作品だろうが、楽器が色彩的ではないから将来性を持つとは思わない」と述べていました。
この作品の初演は好意的に受け取られ、さらにはヨアヒム自身もブラームスの思いを受け止めて積極的にコンサートで取り上げたので、当初はかなりの話題作となったようです。しかし、そう言う世間での高評価を見てもクララの評価は変わることはなく、結果としてはブラームスのオーケストラ作品のなかでは最も地味なポジションに甘んじている現実を見れば、彼女の慧眼を褒めるべきなのでしょう。
なお、この作品の原型は4番目のシンフォニーに続く交響曲として構想されたものだったようです。
しかし、ヨアヒムとの不仲を回復しようという意図と、さらにはクララが見抜いたように、ヴァイオリンとチェロという二つの旋律楽器を使った協奏曲という形式に対する面白さもあって、当初の「交響曲案」はあっさりと破棄されてこの協奏曲になってしまいました。そして、結果としては、この後ブラームスの創作力は急激に衰えてしまい、再び管弦楽を使った大規模な作品を生み出すことはありませんでした。
そんな事を考えると、最初の予定通りに交響曲として仕上がってくれていたら良かったのに!と思う人も少なくないはずです。
なお、個人的には、この作品の終楽章からは、20世紀の音楽につながっていくような不思議な「新しさ」みたいなものが感じ取れて、昔から大好きでした。
未だ現役指揮者という顔がかいま見られる演奏
このような作品は二人以上のソリストが必要となるので、実際のコンサートで取り上げられる機会は非常に少ないです。
さらに言えば、チェロにもヴァイオリンにも優れた名人芸が求められますから、この作品をブラームスが思い描いたように仕上げるのは至難の業です。
そして、その難しさは、スタジオ録音でも同じだったようで、ワルターもこの録音だけはわずか1日で仕上げています。
よく知られている話ですが、引退を表明していたワルターを録音現場に呼び戻すためにレコード会社は破格の条件を提示したといわれています。
その「破格の条件」はギャラだけでなく、録音の進め方に関しても色々な優遇措置があったようです。その中で最もよく知られているのが「一日のセッションは3時間以内」という条件がありました。
おそらく、この録音を仕上げるのに3時間という事はあり得ないでしょうから、おそらくこれに関してはその制限は撤廃されたものと思われます。
理由は簡単、おそらくは、フルニエとフランチェスカッティと言う「売れっ子」のソリストをそんなに長く構想しておけなかったのでしょう。これが、どちらか一人ならば、指揮者がワルターであれば少し無理もきいたのでしょうが、さすがに二人同時と言うことになれば物理的にはこの一日で仕上げざるを得なかったのでしょう。
ただし、これはいつも感心するのですが、ワルターという人は細かいことは言わないで、音楽の大きな流れだけを指し示して、実に懐深く大きな音楽を作ります。
ここでも、この作品の持っている剛健な部分は多少は後退して、大らかな音楽の流れを基軸に二人のソリストの持ち味を十分に発揮させています。そして、そう言うワルターのサポートで、とりわけフルニエのチェロが豊かな歌を聴かせてくれているように聞きました。
意外と、こういうタイトな日程だったがために、後年のワルター7&コロンビア響に見られるような縁側でお茶をすすっているような雰囲気ではなくて、未だ現役指揮者という顔がかいま見られているような気がしました。
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よせられたコメント
2016-03-20:emanon
- 私が初めてこの曲を聴いたのが、このワルター盤でした。とても懐かしく思います。この演奏では、ヴァイオリンとチェロの絡み合いがとても美しく、それを支えるワルターの指揮にはある種毅然とした趣きがあって、全体を大きくまとめています。
私が現在聴いているのは、オイストラフ・ロストロポーヴィッチの独奏でジョージ・セルが指揮をした威風堂々とした演奏ですが、このワルター盤もソリストともども小味が効いていて、なかなかいいものです。点数は8点です。
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