クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでジュリーニ(Carlo Maria Giulini)のCDをさがす
Home|ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)|ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a

ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a

ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1961年1月25日&27日録音

Brahms:ハイドンの主題による変奏曲 作品56a


変奏曲という形式にける最高傑作の一つ

これが、オーケストラによる変奏曲と括りを小さくすれば、間違いなくこの作品が最高傑作です。
 「One of The Best」ではなく「The Best」であることに異論を差しはさむ人は少ないでしょう。

 あまり知られていませんが、この変奏曲には「オーケストラ版」以外に「2台のピアノによる版」もあります。最初にピアノ版が作曲され、その後にオーケストラ版が作られたのだろうと思いますが、時期的にはほとんど同時に作曲されています。(ブラームスの作品は交響曲でもピアノのスコアが透けて見えるといわれるほどですから・・・)

 しかし、ピアノ版が評判となって、その後にオーケストラ版が作られた、という「よくあるケース」とは違います。作品番号も、オーケストラ版が「Op.56a」で、ピアノ版が「Op.56b」ですから、ほとんど一体のものとして作曲されたと言えます。

 この作品が作曲されたのはブラームスが40歳を迎えた1873年です。
 この前年にウィーン楽友協会の芸術監督に就任したブラームスは、付属している図書館の司書から興味深いハイドンの楽譜を見せられます。野外での合奏用に書かれた音楽で「賛美歌(コラール)聖アントニー」と言う作品です。
 この作品の主題がすっかり気に入ったブラームスは夏の休暇を使って一気に書き上げたと言われています。

 しかし、最近の研究では、この旋律はハイドン自身が作曲したのではなく、おそらくは古くからある賛美歌の主題を引用したのだろうと言われています。
 それが事実だとすると、、この旋律はハイドン、ブラームスと二人の偉大な音楽家を魅了したわけです。
 確かに、この冒頭の主題はいつ聞いても魅力的で、一度聞けば絶対に忘れられません。
 参考までに全体の構成を紹介しておきます。

   主題 アンダンテ
   第1変奏 ポコ・ピウ・アニマート
   第2変奏 ピウ・ヴィヴァーチェ
   第3変奏 コン・モート
   第4変奏 アンダンテ・コン・モート
   第5変奏 ヴィヴァーチェ
   第6変奏 ヴィヴァーチェ
   第7変奏 グラツィオーソ
   第8変奏 プレスト・ノン・トロッポ
   終曲 アンダンテ

冒頭の魅力的な主題が様々な試練を経て(?)、最後に堂々たる姿で回帰して大団円を迎えると言う形式はまさに変奏曲のお手本とも言うべき見事さです。


構築的な面も顔を出す演奏です。

こちらの方は、ほぼ同じ時期に録音した交響曲と比べるとそれほどテンポは遅くないです。とは言っても、同時代のセルやカラヤンと比べるとゆったりとしたテンポで歌い上げています。
しかし、その遅めのテンポのおかげで、ブラームスがこの変奏曲の変奏の一つ一つに込めた肌理の細かさみたいなものが上手に表現されているのがよく分かります。また、横へ流れる「本能」はここでも健在なのですが、その片方で作品の本質に沿うことで構築的な面も顔を出したりします。晩年のウィーンフィルとの演奏では徹底的に横へと流れていたことを思えば、こちらの方はジュリーニしてはかなり力みが見られる演奏と言うことになるのかもしれません。

ただし、同意しない人は多いだろうとは思うのですが、個人的にはこういう風に力みかえってくれた方がブラームスらしいと思ったりもするわけです。たとえば、セル&クリーブランドのコンビの録音でも、完成され切ったステレオ録音よりは、必死で高みを目指すがゆえにどこかゴリゴリした感じのモノラル録音を好ましく思ったりするのと同じベクトルなのかもしれません。
正直に申し上げれば、交響曲よりはこちらの方が個人的に気に入りました。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1840 Rating: 5.2/10 (123 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2013-07-15:emanon





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-04-24]

ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲, Op.120(Beethoven:Variations Diabelli in C major, Op.120)
(P)ジュリアス・カッチェン 1953年録音(Julius Katchen:Recorded on 1953)

[2024-04-22]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 K.157(Mozart:String Quartet No.4 in C major, K.157)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-20]

ショパン:バラード第3番 変イ長調, Op.47(Chopin:Ballade No.3 in A-flat major, Op.47)
(P)アンドレ・チャイコフスキー:1959年3月10日~12日録音(Andre Tchaikowsky:Recorded on Recorded on March 10-12, 1959)

[2024-04-18]

エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85(Elgar:Cello Concerto in E minor, Op.38)
(Cello)アンドレ・ナヴァラ:サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1957年録音(Andre Navarra:(Con)Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on 1957)

[2024-04-16]

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

[2024-04-14]

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」, Op.62(Beethoven:Coriolan, Op.62)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月1日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on June 1, 1945)

[2024-04-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第3番 ト長調 K.156/134b(Mozart:String Quartet No. 3 in G Major, K. 156)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-10]

ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調「狩」,Op. 1, No. 1, Hob.III:1(Haydn:String Quartet No.1 in B-Flat Major, Op. 1, No.1, Hob.3:1, "La chasse" )
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June 5, 1938)

[2024-04-08]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18)
(P)ジェルジ・シャーンドル:アルトゥール・ロジンスキ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年1月2日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Artur Rodzinski New York Philharmonic Recorded on January 2, 1946)

[2024-04-06]

シベリウス:交響的幻想曲「ポヒョラの娘」(Sibelius:Pohjola's Daughter - Symphonic Fantasy Op.49)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年6月7日~8日録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on June 7-8, 1962)