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モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550

カラヤン指揮 ウィーンフィル 1959年3月27日&28日録音



Mozart:交響曲第40番 ト短調 K.550 「第1楽章」

Mozart:交響曲第40番 ト短調 K.550 「第2楽章」

Mozart:交響曲第40番 ト短調 K.550 「第3楽章」

Mozart:交響曲第40番 ト短調 K.550 「第4楽章」


これもまた、交響曲史上の奇跡でしょうか。

モーツァルトはお金に困っていました。1778年のモーツァルトは、どうしようもないほどお金に困っていました。
1788年という年はモーツァルトにとっては「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」を完成させた年ですから、作曲家としての活動がピークにあった時期だと言えます。ところが生活はそれとは裏腹に困窮の極みにありました。
原因はコンスタンツェの病気治療のためとか、彼女の浪費のためとかいろいろ言われていますが、どうもモーツァルト自身のギャンブル狂いが一番大きな原因だったとという説も最近は有力です。

そして、この困窮の中でモーツァルトはフリーメーソンの仲間であり裕福な商人であったブーホベルクに何度も借金の手紙を書いています。
余談ですが、モーツァルトは亡くなる年までにおよそ20回ほども無心の手紙を送っていて、ブーホベルクが工面した金額は総計で1500フローリン程度になります。当時は1000フローリンで一年間を裕福に暮らせましたから結構な金額です。さらに余談になりますが、このお金はモーツァルトの死後に再婚をして裕福になった妻のコンスタンツェが全額返済をしています。コンスタンツェを悪妻といったのではあまりにも可哀想です。
そして、真偽に関しては諸説がありますが、この困窮からの一発大逆転の脱出をねらって予約演奏会を計画し、そのための作品として驚くべき短期間で3つの交響曲を書き上げたと言われています。
それが、いわゆる、後期三大交響曲と呼ばれる39番〜41番の3作品です。

完成された日付を調べると、39番が6月26日、40番が7月25日、そして41番「ジュピター」が8月10日となっています。つまり、わずか2ヶ月の間にモーツァルトは3つの交響曲を書き上げたことになります。
これをもって音楽史上の奇跡と呼ぶ人もいますが、それ以上に信じがたい事は、スタイルも異なれば性格も異なるこの3つの交響曲がそれぞれに驚くほど完成度が高いと言うことです。
39番の明るく明晰で流麗な音楽は他に変わるものはありませんし、40番の「疾走する哀しみ」も唯一無二のものです。そして最も驚くべき事は、この41番「ジュピター」の精緻さと壮大さの結合した構築物の巨大さです。
40番という傑作を完成させたあと、そのわずか2週間後にこのジュピターを完成させたなど、とても人間のなし得る業とは思えません。とりわけ最終楽章の複雑で精緻きわまるような音楽は考え出すととてつもなく時間がかかっても不思議ではありません。
モーツァルトという人はある作品に没頭していると、それとはまったく関係ない楽想が鼻歌のように溢れてきたといわれています。おそらくは、39番や40番に取り組んでいるときに41番の骨組みは鼻歌混じりに(!)完成をしていたのでしょう。
我々凡人には想像もできないようなことではありますが。


カラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」

ウィーンフィルとコンビを組んだ一連のデッカ録音は今ではすっかり影が薄くなってしまいました。しかし、彼が1959年にまとめて録音した3つの音楽(ベトーベンの7番、ハイドンのロンドン交響曲、そしてモーツァルトのト短調交響曲)をこうして聴き直してみると、「意外といいね」というレベルではなく、もしかしたらカラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」ではないかと思うようになりました。
カラヤンという人は、例えばクレンペラーのように、もしくはヴァントのように、煉瓦を一つずつ丹念に積み上げていって巨大な構築物を作り上げるような音楽家ではありません。そうではなくて、横への流れを重視し、明確な意志を持ってクッキリとメロディラインを描き出すことに重きを置いた音楽家でした。
そして、この国の通のクラシック音楽ファンはどういう訳か、、前者のようなスタンスは後者のスタンスにに対して優位性を持ったものとしてきました。
口の悪い私の友人などは、「カラヤンの音楽って何を聞いても映画音楽みたい」と宣っていたものでした。

しかし、そう言う理解の仕方には大きな間違いがあることに私も最近になって気づくようになりました。

確かにカラヤンの音楽は気持ちよく横へ横へと流れていきます。その意味では、耳あたりのいい映画音楽のように聞こえるのかもしれません。
しかし、聞く耳をしっかり持っていれば、メロディラインが横へ横へと気持ちよく流れていっても、そこで鳴り響くオケの音は決して映画音楽のように薄っぺらいものでないことは容易に聞き取れるはずです。映画音楽が一般的に薄っぺらく聞こえるのは、耳に届きやすい主旋律はしっかり書き込んでいても、それを本当に魅力ある響きへと変えていく内声部がおざなりにしか書かれていないことが原因です。
そして、例え響きを魅力あるものに変える内声部がしっかりと書き込まれていても、主旋律にしか耳がいかない凡庸な指揮者の棒だと、それもまた薄っぺらい音楽になってしまうことも周知の事実です。

当然の事ですが、カラヤンはそのような凡庸な音楽家ではありません。
カラヤンの耳は全ての声部に対してコントロールを怠りませんし、それらの声部を極めてバランスよく配置していく能力には驚かされます。そして、彼の真骨頂は、強靱な集中力でそのような絶妙なバランスを保ちながら、確固とした意志でぐいぐいと旋律線を描き出していく「強さ」を持っていることです。
それは、例えてみれば、極めてコントロールしにくいレーシングカーで複雑な曲線路を勇気を持って鮮やかに走り抜けるようなものかもしれません。彼は、目の前の曲線路の中に己が走り抜けるべきラインをしっかりと設定すると、そのラインに躊躇うことなく突っ込んでいきます。カーブの入り口で様子を見ながら少しずつハンドルを切るというような、凡庸な指揮者がやるよう不細工なことは決してしないのです。

ベートーベンの7番の第2楽章などは、そう言うカラヤンの美質が良く出た音楽ですし、ハイドンのロンドン交響曲も、こんなにもメロディラインが美しい音楽だったのか!と驚かされます。
モーツァルトト短調シンフォニーも本当に流麗な作りですが、ただし、その流麗さが過ぎて鼻につく人もいるかもしれません。(それって、あんたのことでしょう^^;)

そして、もう一つ特筆すべき事は、このウィーンフィルとの録音ではそのようなカラヤンの美質が極めて自然な形で実現していることです。おそらく、カラヤンが目指そうとした音楽の形とウィーンフィルの本能が上手くマッチングしているのでしょう。ここには、後のカラヤン美学全開のベルリンフィルとの音楽のような「人工臭」が全くありません。
もちろん、カラヤンの強烈な個性とそれを現実のものにするベルリンフィルの高度の合奏能力、とりわけ弦楽器群の優れた響きによって実現された響きは、20世紀のオーケストラ美学の一つの到達点であったことは否定しません。しかし、その磨き抜かれた響きのあまりの完成度の高さゆえに、そして横への流れがあまりにも重視されすぎることでリズム感が希薄になる部分もあったりして、結果として作り物めいた違和感を感じる場面があったことも否定できません。
それと比べると、このウィーンフィルとの録音は、カラヤンらしい美しさは堪能できるし、その美しさには一切の作り物めいた不自然さは感じられません。ですから、カラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」と感じたのです。

これはもう、残りのデッカ録音も全てアップしないといけませんね。

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