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リヒテル(Sviatoslav Richter)|ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
(P)リヒテル スタニスラフ・ヴィスロツキ指揮 ワルシャワフィル 1959年5月録音
Rachmaninov:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 「第1楽章」
Rachmaninov:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 「第2楽章」
Rachmaninov:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 「第3楽章」
芸人ラフマニノフ
第3楽章で流れてくる不滅のメロディは映画「逢い引き」で使われたことによって万人に知られるようになり、そのために、現在のピアニストたちにとってなくてはならない飯の種となっています。
まあ、ラフマニノフ自身にとっても第1交響曲の歴史的大失敗によって陥ったどん底状態からすくい上げてくれたという意味で大きな意味を持っている作品です。(この第1交響曲の大失敗に関しては
こちらでふれていますのでお暇なときにでもご覧下さい。)
さて、このあまりにも有名なコンチェルトに関してはすでに語り尽くされていますから、今さらそれにつけ加えるようなことは何もないのですが、一点だけつけ加えておきたいと思います。
それは、大失敗をこうむった第1交響曲と、その失敗から彼を立ち直らせたこのピアノコンチェルトとの比較です。
このピアノコンチェルトは重々しいピアノの和音で始められ、それに続いて弦楽器がユニゾンで主題を奏し始めます。おそらくつかみとしては最高なのではないでしょうか。ラフマニノフ自身はこの第1主題は第1主題としての性格に欠けていてただの導入部になっていると自戒していたそうですが、なかなかどうして、彼の数ある作品の中ではまとまりの良さではトップクラスであるように思います。
また、ラフマニノフはシンコペーションが大好きで、和声的にもずいぶん凝った進行を多用する音楽家でした。
第1交響曲ではその様な「本能」をなんの躊躇いもなくさらけ出していたのですが、ここでは随分と控えめに、常に聞き手を意識しての使用に留めているように聞こえます。
第2楽章の冒頭でもハ短調で始められた音楽が突然にホ長調に転調されるのですが、不思議な浮遊感を生み出す範囲で留められています。その後に続くピアノの導入部でもシンコペで三連音の分散和音が使われているのですが、えぐみはほとんど感じられません。
つまり、ここでは常に聞き手が意識されて作曲がなされているのです。
聞き手などは眼中になく自分のやりたいことをやりたいようにするのが「芸術家」だとすれば、常に聞き手を意識してうけないと話は始まらないと言うスタンスをとるのが「芸人」だと言っていいでしょう。そして、疑いもなく彼はここで「芸術家」から「芸人」に転向したのです。ただし、誤解のないように申し添えておきますが、芸人は決して芸術家に劣るものではありません。むしろ、自称「芸術家」ほど始末に悪い存在であることは戦後のクラシック音楽界を席巻した「前衛音楽」という愚かな営みを瞥見すれば誰でも理解できることです。
本当の芸術家というのはまずもってすぐれた「芸人」でなければなりません。
その意味では、ラフマニノフ自身はここで大きな転換点を迎えたと言えるのではないでしょうか。
ラフマニノフは音楽院でピアノの試験を抜群の成績で通過したそうですが、それでも周囲の人は彼がピアニストではなくて作曲家として大成するであろうと見ていたそうです。つまりは、彼は芸人ではなくて芸術家を目指していたからでしょう。ですから、この転換は大きな意味を持っていたと言えるでしょうし、20世紀を代表する偉大なコンサートピアニストとしてのラフマニノフの原点もここにこそあったのではないでしょうか。
そして、歴史は偉大な芸人の中からごく限られた人々を真の芸術家として選び出していきます。
問題は、この偉大な芸人ラフマニノフが、その後芸術家として選び出されていくのか?ということです。
これに関しては私は確たる回答を持ち得ていませんし、おそらく歴史も未だ審判の最中なのです。あなたは、いかが思われるでしょうか?
今もってこの作品のベスト録音でしょうか・・・。
この録音は、このコンチェルトに多くの人が求めるもの、「ロシア的な暗い憂愁とこの上もなく甘いメランコリック」が最も理想的な形で実現されている演奏でしょう。おそらく、その方向性で勝負をすれば、これを上回る録音は未だ持って存在しないと言い切っていいかと思います。
世間では、この録音に少しでもケチをつけようと思ってか、リヒテルのピアノは褒め称えながらも、オケがあまりにも微温的すぎる等という評価も聞こえてきます。まあ、そのように聞こえる人もいるのでしょうからとやかく言うつもりはありませんが、私には全く持って微温的などとは思えないほどに入れ込んだ演奏だと思います。
ただし、そう言う面では大いに評価はするのですが、怖れずに言いきってしまうと「暗い憂愁」や「甘美なメランコリック」などと言うものは基本的に好きな方ではないので、世間で言われるほどにはこの録音は好きではありません。
ラフマニノフといえば、真っ先にホロヴィッツを思い出すのですが、何故か彼はこの2番を一度も録音していません。できれば、そんなロマン性などはかなぐり捨てて、ひたすらガンガン引きまくってくれるような演奏を聴きたいと思うことが多いだけに、その事は実にもって残念でなりません。
とは言え、ここで聞けるリヒテルのピアノは情感たっぷりでありながらも、結構ガンガン弾きまくってくれてはいますね。それはもう、冒頭のあのアルペッジョからして明らかです。きっと、全く同意は得られないでしょうけれど、そう言う凄いピアニズムで、もっとザッハリヒに弾ききってくれていれば、私としては拍手大喝采です。
うーん、でも、同意は得られないでしょうね。(^^;
この演奏を評価してください。
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1755 Rating: 5.4/10 (220 votes cast)
よせられたコメント
2013-01-03:よし
- リヒテルのピアノ。最高に素晴らしいです!
オケもけっして弱くなく、控えめでとても良いです。
味わい深いです。
2013-01-03:マオ
- リヒテルを代表する演奏ですね。独特の遅めのテンポと強靭なタッチが印象的です。音楽に込められた魂をよみがえらせるような演奏に脱帽です。メランコリーにひたりがちなこの曲から音楽的な力強さを引き出してくれます。しかし個人個人の好みの別れる演奏です。はたして万人に受け入れられるかどうか。
2013-01-04:カンソウ人
- この曲を聴くと、題名のない音楽会で司会者が司会をした後、独奏者として弾かれていた姿を思い出します。
弾き終わられて拍手をもらっている独奏者にオーケストラの団員たちは喝采をしていました。
司会をした後で簡単に弾けるような曲ではありません。
司会が簡単だとは思いませんが何気なくやっている姿の大変さを感じました。
特別な才能の持ち主である羽田健太郎さんの死は、早過ぎるものでした。
作曲・編曲・独奏者としてクラシックとポピュラーやジャズを・司会者・タレント。
オスカー・レイヴァントやグレン・グールドがイメージに有ったのではないでしょうか。
羽田さんは、3番よりも2番が好きと言われていました。
前任者の黛敏郎さんは、3番はロマン派協奏曲の到着点と言って、好き嫌いでは評価していませんでした。
この録音が出た時代、独奏者としてのリヒテルの実力は、圧倒的な物でした。
技術的にも高度な物があり、情緒的にも十分にうまさを発揮しています。
やってみましたという様な物では無くて、彼の持つ人間的に本質的な鬱っぽい感じ。
目立とう精神ででしゃばるのではなく、才能の為に隠しようもなく、社会で目立ってしまう。
ラフマニノフに対しての愛情の深さと言い換える事も出来ます。
不思議な事は、リヒテルにはラフマニノフの1番の録音はあっても3番はありません。
コルトーは3番を西欧初演したそうです。
ホロビッツに、2番の録音があれば素晴らしい物が出来上がったでしょうが、レパートリーには入っていません。
彼の兄弟子の、シモン・バーレルには2番の録音があり、バリバリと弾きまくっているものです。
遠慮したのではないでしょうかね。
ルービンシュタインの録音は2番と5番ともいうべきパガニーニラプソディーだけですよね。
そもそも、ご本尊のラフマニノフの2番の録音は、割と即物的だったように思います。
オーケストラは西欧やアメリカの第1級のオケではなく、2級のオケでもありませんが、リヒテルとの合意は十分に出来ていて、時間に追われ給料の高い彼らには出来ない部分に溢れています。
テンポが十分に合っています。
合わせてあげましたという様な、アリアの伴奏みたいな、そんなあんちょこな物では無いと感じます。
モーツアルトだったらこのバランスでも良いでしょうが、少しオーケストラの音量が小さいような気がしますが、その辺は・・・。
リヒテルの弾いたブラームスの2番のコンチェルトでシカゴなのに指揮はライナーじゃなかったでしょう。
確か、ラインスドルフだったのでは・・・。
メジャーなレコード会社は、あの轍は踏みません。
リヒテルが、ムラヴィンスキーとレニングラードでこの曲を録音していたら、どんなものに。
想像するだけで楽しみです。
2013-01-06:サフラン
- こっちの演奏もいいですがリヒテルのラフマニノフなら個人的にはザンデルリンクが伴奏をしているほうが好きですね。ただ惜しむらくはモノラル録音というところでしょうか・・・
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