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バリリ四重奏団(Barylli Quartet)|ヤナーチェク:ピアノと室内楽のためのコンチェルティーノ(Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble)
ヤナーチェク:ピアノと室内楽のためのコンチェルティーノ(Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble)
バリリ・アンサンブル:1954年録音(Barylli Ensemble:Recorded on 1954)
Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble [1.Moderato]
Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble [2.Piu mosso]
Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble [3.Con moto]
Janacek:Concertino for Piano and Chamber Ensemble [4.Allegro ]
ヤナーチェク特有の語り口

当初はピアノ協奏曲として構想されましたが、最終的には小規模な「コンチェルティーノ(小協奏曲)」という形に落ち着きました。
楽器編成はピアノ独奏、ヴァイオリン2、ヴィオラ、クラリネット、ホルン、ファゴットとなっています。
もともとは「春」というタイトルが付けられており、ヤナーチェク自身の説明によれば、各楽章には動物や自然をモチーフにした物語的な背景(プログラム)があります。
ヤナーチェクは、この曲を動物たちとの対話として描いています。
- 第1楽章:Moderato 編成:ピアノ、ホルン イメージ:「ハリネズミ」
冒頭、ピアノによる3音の短い動機に続き、ホルンが応えます。この「3音」が楽章全体を支配します。ヤナーチェクはこの楽章を、春の夕暮れ時に自分の巣へ戻ろうとするハリネズミになぞらえています。
「ハリネズミが、自分の巣の入り口がふさがっているのを見つけて、うろたえ、怒って鼻を鳴らしている様子」
この「鼻を鳴らす」ような不機嫌で執拗なリズムが、ホルンのゲシュトップ(音色を変える奏法)なども交えてユーモラスかつ無骨に描かれます。
- 第2楽章:Piu mosso 編成:ピアノ、E♭管クラリネット イメージ:「リス」
高音域で鋭い音色を持つE♭管クラリネットが、落ち着きのないリスの動きを象徴します。
「リスが、木から木へと飛び移り、金切り声を上げながらおしゃべりしている。そして、不意に逃げ去ってしまう」
ピアノが刻むせわしないリズムの上で、クラリネットが即興的な叫び声を上げます。ヤナーチェクらしい、一貫したメロディを持たない「断片的な音のぶつかり合い」が、小動物の野生的な生命力を感じさせます。
- 第3楽章:Con moto 編成:ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、クラリネット、ホルン、ファゴット イメージ:「フクロウなどの夜の鳥」
ここから弦楽器が加わり、響きに厚みが出ますが、雰囲気は一転して不気味になります。
「夜、フクロウや他の鳥たちが、丸い大きな目でじっとこちらを見つめている。
彼らは、人間が森を通り過ぎるのを黙って監視している」ピアノが奏でる執拗な同音連打や、管楽器の奇妙な音階が、暗闇の中で光る目や不穏な静寂を表現しています。ヤナーチェクの自然界に対する、親しみと畏怖が混ざった独特の視点が現れています。
- 第4楽章:Allegro 編成:全楽器(ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、クラリネット、ホルン、ファゴット) イメージ: 「おとぎ話の結末」
これまでの楽章で登場した断片的な動機が姿を変えて現れ、全楽器によるアンサンブルへと発展します。
「おとぎ話の世界。そこでは全ての動物が話し、最後には勝利と喜びの歌が響く」
冒頭のピアノによる力強い主題は、実は第1楽章の「ハリネズミ」の動機が変容したものです。迷信や伝説が息づくモラヴィアの風景を彷彿とさせる、エネルギーに満ちたリズムが畳み掛けられ、最後はピアノの華やかなパッセージと共に力強く締めくくられます。
この曲の難しさは、音符を弾くこと以上に「休符」や「急激なテンポ変化」にあります。
会話が途切れたり、突然怒り出したりするようなヤナーチェク特有の語り口を、7人の奏者がいかに「対話」として成立させるかが、この曲の聞きどころです。
ィーンの凄腕たちの職人技
ワルター・バリリはウェストミンスターでヤナーチェのかなりマイナーな作品の録音を残しています。
ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタやコンチェルティーノなんてのはかなりマイナーです。
ですから、その背景としてヤナーチェクと何らかのつながりがあったのかなとも思ったのですが、AIさんに聞くと「そんなものはない}」とのことでした。
となると、自ら進んで録音したいというわけもないでしょうから、それはレーベル側からの依頼という事になるのでしょう。
そこで思い当たるのはウェストミンスターの録音戦略です。
ウェストミンスターのような新興レーベルがベートーヴェンやブラームスみたいなメジャー作品を録音しているだけでは、大手のRCAやコロンビアの陰に埋もれてしまいます。
そこでウェストミンスターは、「未録音の珍しい名曲を、ウィーンの一流演奏家を使って高音質でレコード化する」という戦略を練り上げたのでした。
ヤナーチェクの室内楽などは、そういう方針にピッタリの作品だったのです。
そして、そういうレーベル側からのかなり無理筋なお願いに対しても、決して無碍に断らなかったのがバリリだったようです。
例えば、こんなこともありました。
ウェストミンスターレーベルはモーツァルトの弦楽四重奏曲をウィーン・コンツェルトハウス四重奏団やアマデウス弦楽四重奏団を使って51年から録音を開始しています。
いわゆる「ハイドンセット」以降の有名作品はそれらの団体で録音していて、バリリは53年から残された作品を録音しているのです。
53年と54年にはハイドンセットの14番とプロイセン四重奏曲の21番と22番を録音していて、続く55年には残された初期作品を一気に録音しているのです。
おそらく、55年にこれらの初期作品が一気に録音された背景には翌56年がモーツァルトの記念イヤーであったからでしょうが、どう考えてもそれほど楽しい作業ではなかったと思わざるを得ません。
とにかく、バリリとはそういう人だったようです。
そして、引き受ける以上は「ウィーンの凄腕たちの職人技」を存分に発揮しているのも頭が下がります。
ヤナーチェク特有の語り口は大切にしながら、ウィーンならではの美音や洗練されたアンサンブルで泥臭くなることを免れています。
まさに、ウェストミンスターが狙った「珍しい名曲を、ウィーンの一流演奏家を使って録音する」というコンセプトに、見事にこたえていたのです。
演奏者
- (P)フランツ・ホレチェック (Franz Holetschek):ウィーンの数多くの室内楽録音で活躍した名手。
- (1st. Violin)ワルター・バリリ (Walter Barylli):バリリ四重奏団主宰、ウィーン・フィル・コンサートマスター。
- (2nd. Violin)オットー・シュトラッサー (Otto Strasser):バリリ四重奏団メンバー。
- (Viola)ルドルフ・シュトレンク (Rudolf Streng):バリリ四重奏団メンバー。
- (Clarinet)アルフレート・プリンツ (Alfred Prinz):ウィーン・フィルの首席奏者。当時まだ20代前半の若き名手。
- (Horn)ゴットフリート・フォン・フライベルク (Gottfried von Freiberg):ウィーン・フィルの伝説的ホルン奏者。
- (Fagot)カミロ・エールベルガー (Karl Ohlberger):ウィーン・フィルの首席奏者
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