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グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16

(P)カーゾン フィエルスタート指揮 ロンドン交響楽団 1959年6月22日?23日録音



Grieg:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 「第1楽章」

Grieg:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 「第2楽章」

Grieg:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 「第3楽章」


G! GisでなくG!

 この作品はグリーグが初めて作曲した、北欧的特徴を持った大作です。1867年にソプラノ歌手のニーナと結婚して、翌年には女児アレキサンドラに恵まれるのですが、そのようなグリーグにとってもっとも幸せな時期に生み出された作品でもあります。
 この作品は今日においても、もっともよく演奏されるピアノ協奏曲の一つですが、初演当時からも熱狂的な成功をおさめるとともに、1870年にはグリーグが持参した手稿を初見で演奏したリストによって激賞される(「G! GisでなくG! これが本当の北欧だ!」)という幸せな軌跡をたどった作品でもあります。

 グリーグは晩年にもう一曲、ロ短調の協奏曲を計画しますが、健康状態がその完成を許さなかったために、その代わりのようにこの作品の大幅改訂を行っています。この改訂で楽器編成そのものも変更され、スコアそのものもピアノのパートで100カ所、オーケストレーションで300前後の変更が加えられました。(管野浩和氏の解説の受け売りです・・・^^;)
 現在一般的に演奏される出版譜はこの改訂稿に基づいていますから、私たちがよく耳にする協奏曲と、グリーグを一躍世界的作曲家に押し上げた初稿の協奏曲とではかなり雰囲気が異なるようです。


いろいろな演奏を聴いてきた人には結構楽しめる録音

フェイエルスタートという指揮者に関してはほとんど情報がありません。かろうじて、60年代にオスロフィルの音楽監督をしていたくらいしか分かりません・・・と書こうとしていて、ふと思い出しました。
最晩年のフラグスタートが「神々の黄昏」でブリュンヒルデを歌ったときの指揮者がフェイエルスタートでした。トリスタンの録音でEMIと一悶着があって、表舞台からは引退していたフラグスタートが、地元のラジオ放送でブリュンヒルデを歌ったものです。
そして、デッカのカルーショーがそれに目をつけて、欠落部分のいくつかをセッション録音して完成させる時にもフェイエルスタートが起用されています。ということは、現在では全く忘れ去られた指揮者ですが、50年代から60年代にかけてはノルウェーを代表する指揮者の一人だったようです。

しかしながら、その指揮ぶりは現在の贅沢な耳からすればいささか心許ないものです。一部には「白熱の演奏」とか「日頃は聞き慣れない旋律線が浮かび上がってくる」などと評価している向きもあるようですが、何のことはない、オケのバランスをとるという基本的な能力に欠けているだけのような気がします。金管群はかなり思い切って鳴らし切っているのですが、それも「解釈」と言うよりは手綱が緩くてオケが好き勝手に振る舞っているという方が正解のような気がします。
全体的にアンサンブルも雑で、結果として、北欧の指揮者でありながら玲瓏な北欧的な雰囲気とは全く無縁な音楽に仕上がっています。

ところが、困ったことに、そのような雑な演奏でありながら、聞き進んでいくうちに不思議な迫力に変な魅力を感じてくるのです。そして、それが、カーゾンの極めて端正でありながら冴え冴えとしたクリアなピアノの響きと出会うと、何とも言えない「異種格闘技」のような面白さに引き込まれていくのです。
それにしても、カーゾンという人は絵に描いたようなイギリスのジェントルマンです。どんなにへんてこな人間が目の前に現れようと、表情一つかえることなく紳士的に対応する「したたかさ」には心底感心させられます。

おそらく、スタンダードな演奏にはならないでしょうが、さんざんいろいろな演奏を聴いてきた人には結構楽しめる録音なのではないでしょうか。

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