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シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47

Vn.:ハイフェッツ ヘンドル指揮 シカゴ交響楽団 1959年1月10&12日録音



Sibelius:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 「第1楽章」

Sibelius:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 「第2楽章」

Sibelius:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 「第3楽章」


シベリウス唯一のコンチェルト

 シベリウスはもとはヴァイオリニスト志望でした。しかし、人前に出ると極度に緊張するという演奏家としては致命的な「欠点」を自覚して、作曲家に転向しました。これは、後世の人々にとっては有り難いことでした。ヴァイオリニストとしてのシベリウスならば代替品はいくらでもいますが、作曲家シベリスの代わりはどこにもいませんからね。
 そんなわけで、シベリウスにとってヴァイオリン協奏曲というのは「特別な思い入れ」があったようです。
 作曲されたのは2番の交響曲を完成させて、作曲家としての評価を確固たるものとした時期でした。1903年に彼はこの作品に取り組みはじめ、そして年内に一応の完成をみます。その翌年には初演も行われたのですが、評価はあまり芳しいものではなかったようです。
 そして、その翌年の05年に彼はベルリンでブラームスのヴァイオリン協奏曲を「聞いてしまいます。」

 シベリウスの基本は交響曲であり、民族的な素材に基づいた交響詩です。ですから、彼はこのコンチェルトを書くときも、独奏楽器の名人芸をひけらかすだけのショーピースとしてではなく、交響的な響きをともなった構成のガッチリとした作品を書いたつもりでした。ところが、ベルリンで初めて聞いたブラームスのコンチェルトは、そう言う彼の思いをはるかに超えた、まさに驚くほどに交響的的なコンチェルトだったが故に、彼に大きな衝撃を与えました。
 ヘルシンキに舞い戻ったシベリウスは猛然と改訂作業に取りかかり、1903年に完成させた初稿版は封印してしまいます。
 とにかく、彼にとって冗長と思える部分はバッサリとカットされます。オーケストレーションもより分厚い響きが出るようにかなりの部分は変更されたようです。結果として、できあがった改訂版の方は初稿と比べるとかなり短く凝縮されたものに変身しましたが、反面、初稿には感じられた素朴な暖かみや自由なイメージの飛翔という部分は後退しました。
 ただし、作曲家本人が全力を挙げて改訂作業に取り組み、さらに初稿の方を封印したのですから、我々ごときが「どちらの方がいい?」などという気楽なことは問うべきでないことは明らかでしょう。世界中から第8交響曲を期待され、そして、何度かそれらは「完成」しながらも、満足できないが故に結局は全て焼却してしまった男です。
 現在は「遺族の了承」という大義名分のもとに初稿版を聴くことができるのですが、やはり、シベリウスのヴァイオリンコンチェルトは1905年の改訂版で聴くのが筋というものなのでしょう。


実に困った録音なのです。

それにしても、どうしてハイフェッツは指揮者に「ヘンドル」などと言う人物を選んだのでしょうか?
このワルタ・ヘンドルという人を調べてみると、「あわせ上手」として有名でハイフェッツお気に入りの指揮者として知られている、などと書かれています。
「あわせ上手」・・・ね?
しかし、この録音を聞く限りは、ホントに力まかせにオケを鳴らしているだけで、よく言えば大味な表現、有り体に言えば大雑把な演奏としか聞こえません。
ただ、その大雑把なオケを従えて鳴り響くハイフェッツのヴァイオリンの何という素晴らしさ!!
その響きが強靱であることは言うまでもありませんが、その響きはまさにシベリウスの音楽に相応しい玲瓏なものです。そして、底意地の悪い見方をすれば、そう言う己の魅力が、この凡庸きわまる大雑把なオケによって引き立つことを計算に入れていたのではないかと勘ぐりたくもなってくるほどです。

まあ、芸人ハイフェッツならば、あながち裏読みがすぎるとも言えないような気もします。

と言うことで、この録音はハイフェッツのヴァイオリンを堪能したいのなら二重丸です。しかし、オケとのトータルでこれがシベリウスのコンチェルトのベスト盤かと問われれば躊躇せざるを得ません。
そんな意味で、実に困った録音なのです。

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