Home|
ミュンシュ(Charles Munch)|シューベルト:交響曲第8番 ロ短調 D. 759「未完成」
シューベルト:交響曲第8番 ロ短調 D. 759「未完成」
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1955年5月2日録音
Schubert:交響曲第7番 「第1楽章」
Schubert:交響曲第7番 「第2楽章」
わが恋の終わらざるがごとく・・・
この作品は1822年に作曲をされたと言われています。
シューベルトは、自身も会員となっていたシュタインエルマルク音楽協会に前半の2楽章までの楽譜を提出しています。
協会は残りの2楽章を待って演奏会を行う予定だったようですが、ご存知のようにそれは果たされることなく、そのうちに前半の2楽章もいつの間にか忘れ去られる運命をたどりました。
この忘れ去られた2楽章が復活するのは、それから43年後の1965年で、ウィーンの指揮者ヨハン・ヘルベックによって歴史的な初演が行われました。
その当時から、この作品が何故に未完成のままで放置されたのか、様々な説が展開されてきました。
有名なのは映画「未完成交響楽」のキャッチコピー、「わが恋の終わらざるがごとく、この曲もまた終わらざるべし」という、シューベルトの失恋に結びつける説です。
もちろんこれは全くの作り話ですが、こんな話を作り上げてみたくなるほどにロマンティックで謎に満ちた作品です。
前半の2楽章があまりにも素晴らしく、さすがのシューベルトも残りの2楽章を書き得なかった、と言うのが今日の一番有力な説のようです。しかし、シューベルトに匹敵する才能があって、それでこのように主張するなら分かるのですが、凡人がこんなことを勝手に言っていいのだろうか、と、ためらいを覚えてしまいます。
そこで、ユング君ですが、おそらく「興味」を失ったんだろうという、それこそ色気も素っ気もない説が意外と真実に近いのではないかと思っています。
この時期の交響曲は全て習作の域を出るものではありませんでした。
彼にとっての第1番の交響曲は、現在第8番と呼ばれる「ザ・グレイト」であったことは事実です。
その事を考えると、未完成と呼ばれるこの交響曲は、2楽章まで書いては見たものの、自分自身が考える交響曲のスタイルから言ってあまり上手くいったとは言えず、結果、続きを書いていく興味を失ったんだろうという説にはかなり納得がいきます。
ただ、本人が興味を失った作品でも、後世の人間にとってはかけがえのない宝物となるあたりがシューベルトの凄さではあります。
一般的には、本人は自信満々の作品であっても、そのほとんどが歴史の藻屑と消えていく過酷な現実と照らし合わせると、いつの時代も神は不公平なものだと再確認させてくれる事実ではあります。
明晰な響きによる「未完成」
「未完成」のような有名曲ならば、今までそこそこの数はアップしてるだろうと思っていたのですが、調べてみるとワルターの戦前の録音とフルトヴェングラーのものしかアップしていないことに気づきました。
これはいけません。
もちろん、すでにアップしている録音が「良くない」という意味ではありません。両方とも、この作品の録音史を振り返る上では欠くことのできない演奏です。
ただし、癖がありすぎます。
「ワルターの演奏が、「わが恋の終わらざるがごとく、この曲もまた終わらざるべし」という愛惜の念が切々と伝わってくる演奏とするなら、フルトヴェングラーの演奏はそれ以上の深い絶望感に覆われた表現となっています。」
・・・と、言うわけです。
いわゆるスタンダードな演奏をたくさん聞いてきた人のためのセカンドチョイスとしては興味深い演奏ですが、いわゆるファーストチョイスのためのスタンダードとしてはあまり相応しくありません。
もちろん、このミュンシュとボストン響との録音も今となってはかなり古くなってしまって、いわゆる「ファーストチョイス」とするには躊躇いを感じますが、それでもこの作品のプロポーションを実にバランス良く明晰に鳴らしているという点では、十分に「スタンダード」としての位置はキープしていると思います。
そう言う意味で、一度こういう演奏を聴いた耳で、ワルターやフルヴェンを聞いてみると、彼らの演奏の持つ「面白さ」をより深く実感できるのではないでしょうか。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1125 Rating: 5.3/10 (175 votes cast)
よせられたコメント
2009-06-07:セル好き
- ミュンシュとボストン響の録音の多くに言えることは、繰り返し聴けるということでそういうのは極めてまれだと思う。明快明晰かつ丁寧な演奏だが一方で前の大戦への悔恨がどこかにじみ出て彫りの深さもそれとなくだが確実に感じる。
パブリックドメインになった今こそCDを音楽の教科書の付録として欲しいくらいだ。
2009-06-08:Sammy
- 明るく明瞭かつやわらかい響きで、端正に奇をてらわない安定したテンポで、着実に築きあげられた演奏だと思います。一つ一つのメロディの美しさが自然に浮かび上がる、スタンダードと呼ばれるにふさわしい演奏だと思います。
2011-01-19:ヨシ様
- 多分これは初出当時「運命」とのカップリングで初のステレオ録音だったのだと推測できます。
「運命」同様この「未完成」も基本的な名演奏だと断言できます。
もっと聴かれていい演奏だと思います。
2012-07-29:oTetsudai
- これがスタンダードな未完成なんですね。綺麗に定位したステレオで録音も水準に達している。統一感があって乱れがない。現代的で甘えがない。 ところで未完成は学校で聞いたし、2週間全く音楽のない環境で突然カラヤンの未完成を聞いたことがあった。このときは感動した。カールベームがウイーンフィルと来日したときも聞いた(大木正興さんの解説)。しみじみした演奏だった。大人になってからフルトヴェングラーのも聞いた。どれも印象が全く違う演奏だったが後をひく演奏ばかりだ、シューベルトはなんという曲を残したのだろう。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)