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モーツァルト:レクイエム ニ短調 K626(ミサ典礼つき)

ヨッフム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 ゼーフリート(S)・ピッツィンガー(A)ホルム(T)ボルイ(Bass) 1955年12月5日 ウィーン・シュテファン大聖堂でのライブ録音



Mozart:レクイエム 「Organ Prelude」

Mozart:レクイエム 「レクイエム」

Mozart:レクイエム 「キリエ」

Mozart:レクイエム 「Oratio(語り)」

Mozart:レクイエム 「Lectio(語り)」

Mozart:レクイエム 「ディエス・イレ」

Mozart:レクイエム 「トゥーバ・ミルム」

Mozart:レクイエム 「レックス・トレメンデ」

Mozart:レクイエム 「レコルダーレ」

Mozart:レクイエム 「コンフターティス」

Mozart:レクイエム 「ラクリモーサ」

Mozart:レクイエム 「Evangelium(語り)」

Mozart:レクイエム 「ドミネ・イエス」

Mozart:レクイエム 「オスティアス」

Mozart:レクイエム 「Praefatio Defunctoru(グレゴリア聖歌)」

Mozart:レクイエム 「サンクトゥス」

Mozart:レクイエム 「Organ Improvisation」

Mozart:レクイエム 「ベネディクトゥス」

Mozart:レクイエム 「Pater Noster(グレゴリア聖歌)」

Mozart:レクイエム 「アニュス・デイ」

Mozart:レクイエム 「ルックス・エテルナ」

Mozart:レクイエム 「postcommunio(語り)」

Mozart:レクイエム 「Organ Postlude」


モーツァルトの絶筆となった作品です

モーツァルト毒殺説を下敷きにしながら、芸術というものがもつ「酷薄さ」と、その「酷薄さ」を鮮やかに浮かび上がらせるかのようにモーツァルトの音楽の魅力を振りまいた映画が「アマデウス」でした。
 そのラストのクライマックスのシーンで、魔笛とレクイエムの音楽がこの上もなく効果的に使われていました。

 魔笛の輝くような明るい音楽と、陰鬱なレクイエムの音楽。光と陰が交錯する中から、モーツァルトの天才が浮かび上がってくる場面です。

 それは、同時に天才モーツァルトと、凡人サリエリの違いを残酷なまでに明らかにする場面でした。
 いや、凡人サリエリという言う方は正しくありません。真の凡人はモーツァルトの偉大さを全く知りません。
 しかし、サリエリは悲しいまでにモーツァルトの天才を知っています。

 死を目前にしたモーツァルトが口述するレクイエムのスコア、それを必死で理解しながらスコアに書き留めていくサリエリ。
 それは、悲しいまでにこの二人の関係を象徴的に表した場面でした。

 神の声が訪れるのはモーツァルトであって、決してサリエリではなく、彼にできるのは、モーツァルトを通して語られる神の声を、ただ必死で理解してそれをスコアに書き写すだけ。
 おそらく、そのような存在として自分を認識することは、「芸術家」として最も辛く、苦痛に充ちたものであったはずです。

 もっとも、そのような辛い認識に到達したのは、コンスタンツェが夫に内緒でサリエリのもとにスコアを持ち込んだときです。しかし、そのような残酷な認識をこれほども見事に映像として提示しているのはこのラストのシーン以外にはありません。
 そして、そのような場面にふさわしい音楽もまた、この「レクイエム」以上のものはちょっと思い当たりません。 


モーツァルト追悼ミサのライヴ録音

1955年12月5日に、ウィーン・シュテファン大聖堂で執り行われたモーツァルト追悼ミサのライヴ録音です。残響の長い教会でのライブ録音と言うことで細部の分離が不明瞭なのが残念ですが、この時代のものとしては世間で言われるほど悪くはありません。
しかし、冒頭、開式を知らせるベルに続いてオルガンが鳴り響いたり、さらには音楽と音楽の間に司祭による祈りの言葉が挟まったりと、通常のコンサートで聞くレクイエムとは全く雰囲気が異なるのでいささか驚かされます。

しかし、もともと宗教音楽というのはコンサートのために作曲されたものではなく、本来はこのような宗教的儀式のために作られた音楽です。ですから、こういう典礼部分も含めて演奏されるのが宗教音楽の本来の姿だと言えます。

ヨーロッパでは、日曜日になると、このような形でミサが執り行われるのは日常のことです。
私も、ヨーロッパを旅行したときは、日曜日になると近くの教会によく顔を出しました。それは、運がよければちょっとした「音楽会」が楽しめたりするからです。
なかには、ウィーンの王宮礼拝堂みたいに入り口でチケットを売っているミサもあります。何しろ、そのミサの聖歌隊はウィーン少年合唱団で、オケはウィーンフィルのメンバーです。20年ほど前に私が聞いたときはチケット代が日本円で3000円程度でしたが、そのレベルの高さを思えば決して高いとは思いませんでした。
しかし、そういう「有料のミサ」は例外中の例外です。
一般的には私のような非キリスト教徒であっても何の問題もなく自由に参列できます。そして、そういう場でミサ曲が演奏されるときは、当然のことながら、音楽と音楽の間に典礼部分が差し挟まれます。そして、最後には「喜捨」を求める網みたいなものがまわってくるので、そこに幾ばくかのコインを入れるのは最低限の礼儀でしょう。

ここで聞くことの出来るレクイエムは宗教儀式の中の音楽として演奏されています。
ですから、レクイエムという音楽を、宗教的儀式から切り離して純粋な音楽作品として聞こうとする人にとっては、このヨッフムの演奏はお勧めではありません。
しかし、モーツァルトへの追悼としてこの音楽を捧げ、その思いを多くの会衆と共有するという宗教的儀式への擬似的な参加体験としてとらえるならば、ミサの進行とともに次第に盛り上がっていく感動は他では味わえないものがあります。
その意味で、この典礼部分をばっさりとカットした状態で再発したeloquesnceシリーズは、この録音の意味を全く理解していないと言わざるを得ません。また、この録音においても曲と曲の間のざわめきがカットされていて、それが追悼ミサとしての統一感を殺ぐ結果になっているのが残念です。望めるならば、たとえCD2枚になってもいいので、そういうざわめきの部分もカットしていない「レコード(記録)」として再発してもらいたいと思います。

さらに、私はあまり理解できなかったのですが、カソリックでは1962年?1965年に「第2ヴァチカン公会議」と言うのが開かれて、ミサ式の次第が大幅に変更されたそうです。そういう意味でも、この録音は第2ヴァチカン公会議以前のミサ式次第について知ることができる貴重な録音だそうです。

1955年12月5日に執り行われたモーツァルト追悼ミサの式次第は以下の通りです。

「Organ Prelude」
「レクイエム」
「キリエ」
「Oratio(語り)」
「Lectio(語り)」
「ディエス・イレ」
「トゥーバ・ミルム」
「レックス・トレメンデ」
「レコルダーレ」
「コンフターティス」
「ラクリモーサ」
「Evangelium(語り)」
「ドミネ・イエス」
「オスティアス」
「Praefatio Defunctoru(グレゴリア聖歌)」
「サンクトゥス」
「Organ Improvisation」
「ベネディクトゥス」
「Pater Noster(グレゴリア聖歌)」
「アニュス・デイ」
「ルックス・エテルナ」
「postcommunio(語り)」
「Organ Postlude」

なお、ミサを執り行った神父はシュテファン大聖堂の助任司祭ペナル卿だそうです。

この演奏を評価してください。

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2017-04-28:uchi





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