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コルトー(Alfred Cortot)|ショパン:エチュード Op.25
ショパン:エチュード Op.25
(P)アルフレッド・コルトー:1934年6月18日~21日録音
Chopin:Etudes, Op.25 [1.Etude in A-flat major "Aeolian Harp"]
Chopin:Etudes, Op.25 [2.Etude in F minor "The Bees"]
Chopin:Etudes, Op.25 [3.Etude in F major "The Horseman"]
Chopin:Etudes, Op.25 [4.Etude in A minor "Paganini"]
Chopin:Etudes, Op.25 [5.Etude in E minor "Wrong Note"]
Chopin:Etudes, Op.25 [6.Etude in G-sharp minor "Thirds"]
Chopin:Etudes, Op.25 [7.Etude in C-sharp minor "Cello"]
Chopin:Etudes, Op.25 [8.Etude in D-flat major "Sixths"]
Chopin:Etudes, Op.25 [9.Etude in G-flat major "Butterfly"]
Chopin:Etudes, Op.25 [10.Etude in B minor "Octave"]
Chopin:Etudes, Op.25 [11.Etude in A minor "Winter Wind"]
Chopin:Etudes, Op.25 [12.Etude in C minor "Ocean"]
指の運動から芸術作品へと昇華
ショパンの練習曲はワルシャワ時代からパリ時代の初めにかけて作曲されたものと考えられています。その中から12曲を選び出して作品10として出版し、それと並行して第2集のための作曲もすすめられ、そこに過去に書いた作品などもまとめて作品25とされた者のようです。
しかし、この練習曲は当時の練習曲が織っていたイメージとは全く異なり、それ故に多くの人が困惑したようです。ある人などは、外科医をかかえて弾かなければ指を痛めてしまうとまで書いていたようです。
確かに、練習曲はピアノの演奏技術を磨くために作られたものなのですから、ショパンの練習曲といえどもピアノの演奏技術に関わる問題を解決するために書かれていることは疑いがありません。しかし、ショパンの練習曲はそれだけにとどまらず、演奏者に対してメロディやリズム、ハーモニーなどが醸し出す寿著表現と言うことも大きな課題として提示しているのです。それ故に、彼の練習曲はたんなる指の運動だけでなく、素晴らしい芸術的表現を身につけることを練習者に求めるのです。
ロマン派の時代にはいると多くの作曲家はピアノ演奏における新しい表現を切り開いていくのですが、ショパンのピアノ演奏の特徴はレガート奏法を主体とした極めてデリケートな表現を求めたことです。そして、そう言う演奏法をこの練習曲にふんだんに取り入れているのです。
それこそが、ショパンの練習曲が当時の人にはなかなか理解されなかった点なのですが、それこそがショパンの練習曲をたんなる指の運動から芸術作品へと昇華させているのです。
- 第1番:変イ長調 作品25-1「エオリアン・ハープ」(アルペッジョのなかから旋律を浮かび上がらせる練習)
- 第2番]ヘ短調 作品25-2(異なるリズムの二本の旋律線プレストで!)
- 第3番:ヘ長調 作品25-3(微妙なタッチでアクセントや音型に変化を与える)
- 第4番:イ短調 作品25-4 (シンコペーションの上で旋律を弾き分ける))
- 第5番:ホ短調 作品25-5(スケルツォですね)
- 第6番:嬰ト短調 作品25-6(右手3度の練習曲、むっちゃムズイ!)
- 第7番:嬰ハ短調 作品25-7(夜想曲ですね。ビューロー曰く「フルートとチェロの二重奏」だそうな・・・)
- 第8番:変二長調 作品25-8 (右手の6度の練習曲)
- 第9番:変ト長調 作品25-9「蝶々」(一番短い作品です)
- 第10番:ロ短調 作品25-10 (両手のオクターブの練習曲)
- 第11番:イ短調作品25-11「木枯らし」(24曲中のベストワン!)
- 第12番:ハ短調作品25-12「大洋」(両手のアルペッジョの練習曲)
ナチス協力者の悲しみ
ナチスは多くの芸術家たちに過酷な選択を押しつけました。協力するか、もしくは反抗、非協力の姿勢を示して亡命するか?
コルトーは前者の道を選択しました。
そのためにショパン弾きとして一世を風靡しながら戦後は一切の演奏活動を禁止され、寂しい晩年を送ることになります。演奏活動そのものは1946年には許されるようになるのですが、フランス人の国民感情が彼の演奏を許さなかったようです。
それでも、そういう感情が次第におさまりを見せてきたなかで再び戦後の演奏活動を再開するのですが、すでに指はまわらず、楽譜の度忘れもしばしばで、全盛期の彼を知る人々を失望させるものでした。
しかし、コルトーのそのような衰えは、ビシー政権のもとで録音された1942年の演奏からも感じ取ることができます。
1933・34年のすばらしい録音と比べるとその違いは明らかです。確かに録音の悪さは差し引いてあげないとかわいそうですが、すでにこの時点で指はまわらなくなっていることは事実です。
確かに音楽はテクニックだけで成り立つものではありませんが、音楽を成り立たせるに必要なだけのテクニックがすでに失われはじめています。
それでもコルトーは1958年まで演奏活動を続けて、1962年にこの世を去ります。1955年には前奏曲集の録音を残していますが、その頃は細かいパッセージを弾き分ける能力は失っていたので、作品によっては音の固まりとしか聞こえないような代物です。
でも、そういう衰えを感じ取って指揮活動に逃げてしまう人が多い昨今の状況を見ていると、最後までピアニストであり続けようとしたコルトーの姿勢には共感できる部分があります。(若い頃のコルトーは指揮者としても活躍していました。)
歴史に「IF」はありませんが、ナチスとの関わりがなければ彼の晩年はまた異なったものになっていたでしょう。もちろんこの「IF」はコルトーだけのものではありません。
フルトヴェングラー、メンゲルベルグ、R.シュトラウスなどなど、どの人生に思いをいたしても、ナチスがヨーロッパの知識人に与えた甚大な影響を感じざるを得ません。
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