クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ガスパール・カサド(Gaspar Cassado)|バッハ:無伴奏チェロ組第4番変ホ長調 BWV1010

バッハ:無伴奏チェロ組第4番変ホ長調 BWV1010

(Cell)ガスパール・カサド 1957年録音



Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [1.Prelude]

Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [2.Allemande]

Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [3.Courante]

Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [4.Sarabande]

Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [5.Bourree]

Bach:Cello Suite No.4 in E-flat major, BWV 1010 [6.Gigue]


真に優れたものは、どれほど不当な扱いを受けていても、いつかは広く世に認められる

「組曲」とは一般的に何種類かの舞曲を並べたもののことで、16世紀から18世紀頃の間に流行した音楽形式です。この形式はバロック時代の終焉とともにすたれていき、わずかにメヌエット楽章などにその痕跡を残すことになります。

その後の時代にも組曲という名の作品はありますが、それはこの意味での形式ではなく、言ってみれば交響曲ほどの厳密な形式を持つことのない自由な形式の作品というものになっています。
この二通りの使用法を明確に区別するために、バッハ時代の組曲は「古典組曲」、それ以後の自由な形式を「近代組曲」とよぶそうです。
まあ、このような知識は受験の役に立っても(たたないか・・)、音楽を聞く上では何の役にも立たないことではありますが。(^^;

バッハは、ケーテンの宮廷楽長をつとめていた時代にこの組曲形式の作品を多数残しています。

この無伴奏のチェロ組曲以外にも、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ、無伴奏フルートのためのパルティータ、そして管弦楽組曲等です。

それにしても疑問に思うのは、この難曲である無伴奏のチェロ組曲を誰が演奏したのかということです。
ヴァイオリンの方はおそらくバッハ自身が演奏したのだろうと言われていますが、チェロに関してはそれほどの腕前は持っていなかったことは確かなようです。
だとすると、ケーテンの宮廷楽団のチェロ奏者がこの曲を演奏したと言うことなのでしょうか。
現代においてもかなりの難曲であるこの作品を一体彼はどのような思いで取り組んだのでしょうか。

もっとも、演奏に関わる問題は作品にも幾ばくかの影響は与えているように思います。
なぜなら、ヴァイオリンの無伴奏組曲と比べると無伴奏チェロ組曲の6曲全てが定型的なスタイルを守っています。

また、ヴァイオリンの組曲はシャコンヌに代表されるように限界を超えるほどのポリフォニックな表現を追求していますが、チェロ組曲では重音や対位法的な表現は必要最小限に限定されています。
もちろん、チェロとヴァイオリンでは演奏に関する融通性が違いますから単純な比較はできませんが、演奏者に関わる問題も無視できなかったのではないかと思います。

それにしても、よく知られた話ですが、この素晴らしい作品がカザルスが古道具屋で偶然に楽譜を発見するまで埋もれていたという事実は信じがたい話です。
それとも、真に優れたものは、どれほど不当な扱いを受けていても、いつかは広く世に認められると言うことの例証なのでしょうか。

第4番変ホ長調 BWV1010



  1. 前奏曲(Praeludium)

  2. アルマンド(Allemande)

  3. クーラント(Courante)

  4. サラバンド(Sarabande)

  5. ブーレ I/II

  6. ジーグ(Gigue)


組曲の中では一番地味な作品でしょうか。
しかしながら、演奏技術的には3番までとは一線を画す難しさがあるようです。


「ごうごうひびくと」という表現がこれほどピッタリくるチェロの響きは他にはないかもしれません

ガスパール・カサドと言えば伝説のピアニストと言われる原智恵子の夫であり、さらにはカザルスの弟子としても有名なチェリストでした。しかし、チェリストとしてはどうしても師であるカザルスの陰に隠れてしまって影が薄いと言わざるを得ません。
しかし、残された録音を聞いてみると、その骨太の音楽はまさにカザルス直系を思わせます。
そして、一番興味深く感じたのは、その独特のチェロの音色です。ただし、楽器の音色などと言うものは録音というバイアスがかかってしまうと何処まで正確に判断できるかは怪しいのですが、それでも同時代のどのチェリストとも異なる独特な音色の持ち主だったようなのです。

それは、おかしな話なのですが、そのチェロの音を聞いて真っ先に思い浮かんだのが宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」でした。
あれは、下手くそなセロ弾きのゴーシュが、いろいろな動物たちの訪れを通して成長していく物語なのですが、その中に病気の子供を連れてくる野ねずみのお母さんがいました。


すると野鼠のねずみのお母さんは泣きだしてしまいました。
「ああこの児こはどうせ病気になるならもっと早くなればよかった。さっきまであれ位ごうごうと鳴らしておいでになったのに、病気になるといっしょにぴたっと音がとまってもうあとはいくらおねがいしても鳴らしてくださらないなんて。何てふしあわせな子どもだろう。」

ゴーシュはびっくりして叫さけびました。
「何だと、ぼくがセロを弾けばみみずくや兎の病気がなおると。どういうわけだ。それは。」

野ねずみは眼を片手でこすりこすり云いました。
「はい、ここらのものは病気になるとみんな先生のおうちの床下にはいって療すのでございます。」
「すると療るのか。」
「はい。からだ中とても血のまわりがよくなって大へんいい気持ちですぐ療る方もあればうちへ帰ってから療る方もあります。」
「ああそうか。おれのセロの音がごうごうひびくと、それがあんまの代りになっておまえたちの病気がなおるというのか。よし。わかったよ。やってやろう。」


少し引用が長くなりましたが、この「さっきまであれ位ごうごうと鳴らしておいでになったのに」とか、「おれのセロの音がごうごうひびくと」という表現がこれほどピッタリくるチェロの響きは他にはないのです。
ただし、カサドはゴーシュのような下手なセロ弾きではないので、そのごうごうとなるような響きでもってバッハの対位法を見事に表現しきっています。そして、そこにカザルス譲りの雄大なスケールが付け加わるのです。

振り返ってみれば、この時代は実にチェリスト多産の時代でした。

まずは大御所のカザルスは存命で、指揮活動との両輪で未だに現役でした。
さらに、豪快なシュタルケル、美音系の貴公子フルニエなども全盛期でした。
それ以外に、思いつくだけでも、トルトゥリエ、ナヴァラ、ピアティゴルスキー、ジャンドロン、マイナルディ、さらにヤニグロも指揮活動に重点をおくのはこれよりも先の時代でした。
そして、若きロストロポーヴィチにデュ・プレなどが登場してくるのもこの時代でした。

これ以上名前を挙げていくのも煩わしいので避けますが、カサドはその誰とも似通っていないように思うのです。
それでも誰に一番似ているかと聞かれれば、それはやはりカザルスに似ていると言わざるを得ないのです。
ボーイングや運指のテクニックが非常に高いので、カザルスのような「像のダンス」のようにはならないのですが、それでもどこか無骨なところがあって、それが野武士のような雰囲気を感じさせるのです。

1957年の録音であるにもかかわらずモノラルというのが少し残念ですが、チェロ一挺の音楽ならば、下手なステレオ録音よりもこの方が好ましいかもしれません。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



3925 Rating: 4.8/10 (113 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください。
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-10-13]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)

[2026-10-11]

ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)

[2026-10-09]

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)

[2026-10-07]

J.S.バッハ:カンタータ第51番「全地よ、神を向かえて歓呼せよ」,BWV 51(J.S.Bach:Cantata: "Jauchzet Gott in Allen Landen", BWV 51)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ペーター・ゲルホルン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年10月6日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(cpn)Peter Gellhorn Philharmonia Orchestra Recorded on October 6, 1950)

[2026-10-05]

J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069(J.S.Bach:Orchestral Suite No.4 in D major, BWV 1069)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)

[2026-10-02]

ルイス・デ・ミラン:「エル・マエストロ」からのファンタジア、舞曲、そしてロマンセ(Luys Milan:Fantasias, Dances And Romances From El Maestro)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ:(T)ベルンハルト・ミヒャエリス 1956年11月30日~12月1日録音(Walter Gerwig:(T)Bernhard Michaelis Recorded on Novembar 30~December 1, 1956)

[2026-09-30]

ヴィヴァルデ:オーボエ協奏曲 ハ長調, Rv.447(Vivaldi:Oboe Concerto in C major, RV.447)
レナート・ファッサーノ指揮:(Ob)レナート・ザンフィーニ ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:(Ob)Renato Zanfini Virtuosi Di Roma Published in 1958)

[2026-09-28]

マヌエル・ポンセ:南の協奏曲(Manuel Ponce:Concierto del Sur)
(Gt)アンドレス・セゴビア:エンリケ・ホルダ指揮 シンフォニー・オブ・ジ・エア 1958年録音(Andres Segovia:(con)Enrique Jorda the Symphony of the Air Recorded in 1958)

[2026-09-26]

モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」{エクスルターテ・ユビラーテ), K.165(Mozart:Exsultate, Jubilate, K.165/K.158A)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ワルター・ジュスキント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1947年5月26日,28日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(con)Walter Susskind Philharmonia Orchestra Recorded on May 26,28, 1947)

[2026-09-24]

マラン・マレー:組曲第4番 ニ長調(Marin Marais:Suite No. 4 In D Major)
アウグスト・ヴェンツィンガー:(Vdg)ハンネロレ・ミュラー (harpsichord)フリッツ・ノイマイヤー 1956年4月4日~5日録音(August Wenzinger:(Vdg)Hannelore Mulle (harpsichord)Fritz Neumeyer Recorded on April 4-5, 1956)