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レナード・ペナリオ(Leonard Pennario)|フランク:交響的変奏曲, FWV 46
フランク:交響的変奏曲, FWV 46
(P)レナード・ペナリオ:アーサー・フィードラー指揮 ボストン・ポップス 1963年5月24日録音
Franck:Variations symphoniques, FWV 46
職人作曲家の腕の冴え
フランクという人は若い頃は熱心にピアノ曲を作曲していたのですが、その後、この分野への興味を失ったのか、ぱったりと創作の筆が止まります。そんなフランクが再びピアノの世界に戻ってくるのは最晩年に達してからです。
フランクという人は、その晩年において、まさにねらいすましたように各ジャンルにおいて1曲ずつ「これぞ!」というような作品を生み出します。
この「交響的変奏曲」も、ピアノ協奏曲とは銘打っていませんが、まさに協奏曲のジャンルに送り込んだ「ねらいすました作品」の一つだと言えます。
まずは威圧的なオケの響きで音楽が開始されますが、それに続いてピアノが優しく主題を奏します。これが第1の主題であり、やがてそれに続いて別の主題がピアノで奏されます。そして最後に、弦楽器群が三番目の主題を提示します。
こうして、3つの主題を提示しておいて、あとの部分でこれら3つの主題が様々に変奏されていきます。
ですから、単一の主題が最初に提示されて、それが様々に変奏されていくというオーソドックスな形ではなくて、最初に提示された3つの主題が様々に絡み合いながら変奏されていくという、かなり高度で複雑な形態を取っています。
- 第1変奏:主題Aの前半が低音弦に現れ、ピアノは主題Bで応答する。主題A前半が管弦楽に広がると、ピアノは主題A後半、主題Cの順で展開を続ける。
- 第2変奏:主題Cがピアノと弦楽器、木管楽器により展開される。続いてヴィオラ、チェロが主題Cを奏で、これにピアノが装飾的に絡む。次第に盛り上がり、管弦楽が主題A、続いて主題Cを奏し、ピアノは三連音符で応答、クライマックスを築く。
- 第3変奏:ピアノが分散和音を奏でる中、チェロにより主題C、続いて主題Aがゆっくりと歌われる。最後はピアノのトリルに導かれて、ホルンと木管楽器が次の変奏のリズムを準備する。
- 第4変奏:主題Aを元にした軽妙な変奏。
- 第5変奏:ピアノに陽気な新しい主題Dが現れる。主題Cが示された後、ピアノが伴奏を伴わず独奏を繰り広げる。管弦楽が主題A、Cの順に奏し、ピアノと掛け合いを演じた後、力強く終了する。
常に「軽み」を失わない
「レナード・ペナリオ」というピアニストは小澤征爾が伴奏を務めた時のソリストとして一度取り上げたことがあるのですが、その時の興味はあくまでも「若き日の小澤征爾」でした。
その時は、恥ずかしながら「レナード・ペナリオって、誰れ?」というかんじでした。
しかし、実際に聞いてみると、派手ではないものの難しいことをサラリとやってのける人だなと感じ、その事を、「100メートル×4」の4継リレーの第3走者のような存在だと、分かったような分からないような妙な喩えで表現しました。
それは地味ではあっても難しい役割を確実にミスなくこなしていく能力を持ったピアニストだと思った故のたとえでした。
と言うことで、このレナード・ペナリオ」というピアニストをある程度まとめて聞いてみたいと思いあれこれ探し出してきました。
調べてみれば、12歳でグリーグのピアノ協奏曲をダラス交響楽団と共演して神童として名を馳せたピアニストらしいです。さらに、「ラフマニノフ追悼演奏会」で協奏曲の第2番も演奏し、その後は彼の「ピアノ協奏曲全曲」と「パガニーニの主題による狂詩曲」の録音を初めて成し遂げた人物として記憶されています。
確かに、すでに紹介しているリヒャルト・シュトラウスの「ブルレスケ」の最後のカデンツァなどを聞けば、大変なテクニックを持ったピアニストであることが分かります。20歳前後にしてその才能を全面的に開花させ、その後も「只の人」になることなく長く活動を続けてきたことがよく分かる録音でした。
しかし、何故か今のこの国から眺めてみれば、少なくない人(私も含めて)にとっては「レナード・ペナリオって、誰れ?」というかんじになっているのですから不思議です。
それも、早くに指揮者に転向したとか、教育活動に舵を切ったとか、さらには早くして燃え尽きたというわけでもなく1990年代まで精力的に活動していたらしいので、不思議と言えば不思議です。
ただし、今回彼の残された録音をある程度まとめて聞いてみて、何となくその理由が分かりました。それは、ソリストとして必要な「オレがオレが!」という我欲が非常に少ない人だったと言うことです。
特に、室内楽などになるといつも一歩引くような感じで全体のバランスをとることに力を尽くし、自分が目立とうという気持ちは全くなかったことがよく分かります。
ハイフェッツが室内楽のパートナーとして彼をよく指名したらしいのですが、「なるほど、さもありなん」と思わさせられたものです。まさに、4継リレーの第3走者のような存在です。
そして、それは協奏曲のソリストとしてもスタンスは変わらず、己のテクニックを「どうだ!」と言わんばかりに誇示することはなく、常にどこか飄々とした感じで、難しいところもさも簡単そうにサラリと演奏してしまうのです。
言葉をかえれば、常に軽み(「かろみ」と読んでください)を失わないのです。
とりわけ、このアーサー・フィードラーとボストン・ポップスと組んで録音した一枚などは、そう言う特徴が見事に洗われています。
- ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲, Op.43
- フランク:交響的変奏曲, FWV 46
- アンリ・リトルフ:交響的協奏曲第4番 ニ短調, Op.102
それは、重々しいクラシックの音楽と言うよりはどこかポップス的な音楽のように聞こえます。そして、それはフィードラー&ボストン・ポップスと組むことによって実に上手くいっていて、これほど聞いていて気持ちのよくなる演奏は極めて貴重です。
また、アンリ・リトルフの交響的協奏曲なんてのは極めてレアな作品なのですが、これもまた実に軽やかに演奏していて、マイナー曲につきものの「修行」的な雰囲気を持って聞く必要は全くありません。
しかしながら、こういう楽しい演奏をしてくれる人というのは何故か軽く見られてしまうようです。それだけに、こういう人こそせっせと発掘しなければいけませんね。
もちろん、何を今頃になって「発掘」などと言ってるんだ、と言う言葉も聞こえてきそうですが・・・(^^;)
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