Home |
アイザック・スターン(Isaac Stern) |ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
バーンスタイン指揮 (Vn)スターン ニューヨークフィル 1959年12月6日録音 Berg:Concerto for Violin and Orchestra "To the Memory of an Angel" [1st movement]
Berg:Concerto for Violin and Orchestra "To the Memory of an Angel" [2nd movement]
ある天使の思い出に
無調の音楽や12音技法に対してどれほど違和感を感じ疑問を持っていても、このベルクのヴァイオリン協奏曲だけは多くの人に素直に受け入れられてきました。
こういう音楽はいわゆる「ロマンティックな音楽」とは対極にあるように見えます。人の心に触れてくる感情とは無縁な場所で鳴り響いているように聞こえます。しかし、もう一歩踏み込んで聞いていると、19世紀的なロマンティックとは異なる、もう少し硬質で透明感に満たされた深い感情が通底していることに気づかされます。
そう気づいて、もう一度頭から聞き直してみると、なるほど20世紀の「ロマンティック」とはこんなものかもしれないという気になってきます。そして、独奏ヴァイオリンが虚空に消えていくようなラストに心が動かされてもう一度聞き直してみれば、この「ある天使の思い出に」と題されたこの音楽こそが20世紀における最もロマンティックな音楽であることに気づくのです。
それにしても不思議な音楽です。
この作品は12音技法に基づいた無調の音楽です。しかし、普通に聞いていると「調性のようなもの」が感じられます。しかし、「調性のようなもの」が感じられても、そこで鳴り響いている音楽は機能和声による従来の音楽とは明らかに異なる「新しさ」があることも事実です。
これは、考えてみれば奇蹟の「共存」みたいなものです。
クラシック音楽はこの後、ひたすら聞き手を置き去りにした知的競技へと堕していき、さらにはその競技は仲間内でしか通用しない独善に落ち込んでいることにも気づかずに滅びの道を突き進んでいきました。
聞きようによっては、この作品は若くしてこの世を去った天使(マノン・グロピウス)へのレクイエムであり、さらには作曲家自身のレクイエムである事にとどまらず、もしかしたらクラシック音楽そのもの対するレクイエムのようにも聞こえたりします。
今もって古びることのない偉大な演奏
ベートーベンの交響曲に対して、距離を置いているように聞こえると書きました。
しかし、そんなことを書いた後に、ふと気づいたのは、「そうだ、バーンスタインには作曲家というもう一つの顔があったんだ」という事実に思い当たりました。今では、バーンスタインと言えば20世紀を代表する偉大な指揮者というイメージが強いのですが、聞くところによれば、60年代の初め頃は「あのウェストサイドストーリーを書いたバーンスタインという作曲家は指揮もやっているそうだ」という文脈で語られることが多かったようなのです。
そう考えると、どちらかと言えば作品の構造をすっきりと描いて見せた60年代のベートーベンの交響曲全集は、「僕は作曲家だから、こんなにも見事に作品の構造を描き出せるんだよ」というバーンスタインのもう一つの顔、もう一つの我が儘が出た演奏だと言えるような気がしました。
ただし、作品の持つ構造をすっきりと描き出すだけでは、ベートーベンという巨大な存在を描ききることができないというのが辛いところです。
しかし、ベルクのヴァイオリン協奏曲のような作品ならば、それと全く同じようなベクトルで取り組むことがものの見事につぼにはまっています。
この、基本は無調でありながらどことなく調性を感じさせ、その感じさせる調性を通してどこか聞く人の心の琴線に触れてくるようなロマンティシズムの描き方はものの見事です。バーンスタインと言えば思いの丈をぶつけるような粘着質な音楽作りが想像されるのですが、此処でのバーンスタインは真逆のスタンスで音楽に向かっています。
そして、そのような精緻なキャンパスをバックに、スターンならでは太めの筆遣いでぐいぐい描き出していくラインは人の心に触れてくる暖かさがあります。ベルクのような新ウィーン楽派の音楽というと、細身の音でキコキコというのが通り相場なだけに、このスターンのようなアプローチはかえって新鮮さを感じさせてくれます。
録音から半世紀以上の時間が経過したのですが、今もって古びることのない偉大な演奏です。
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
2081 Rating: 5.3 /10 (204 votes cast)
よせられたコメント 2014-11-26:nakamoto アルバンベルクの、ルルと並んで、最高傑作のこの曲に、二人の巨匠が、十二分に実力を発揮した、演奏です。とても私では、探すことの出来ない、素晴らしい録音です。 バースタインというと、マーラーを良く聴いてきている私ですので、マーラーの晩年の作品を思わせる。精緻ながら、ロマンティックな、素晴らしさのある、貴重な、録音と思います。私個人としては、こういった、20世紀音楽の素晴らしい録音を紹介してくれる、このサイトは、相変わらず素晴らしいと、改めて感じさせて頂きました。
【最近の更新(10件)】
[2025-09-08]
フォーレ:夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(Faure:Nocturne No.2 in B major, Op.33 No.2)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-09-06]
バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-04]
レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)
[2025-09-01]
フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-08-30]
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)
[2025-08-28]
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)
[2025-08-26]
フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)
[2025-08-24]
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ヘ長調 BWV.540(J.S.Bach:Toccata and Fugue in F major, BWV 540)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-08-22]
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(Debussy:Prelude a l'apres-midi d'un faune)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:London Festival Orchestra Recorded on 1960)
[2025-08-20]
エルガー:行進曲「威風堂々」第5番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 5 in C Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)