Home|
アナトゥール・フィストラーリ(Arthur Fiedler)|チャイコフスキー:くるみ割り人形 組曲(selected by Anatole Fistoulari)
チャイコフスキー:くるみ割り人形 組曲(selected by Anatole Fistoulari)
アナトール・フィストゥラーリ指揮 パリ音楽院管弦楽団 1951年6月21日~23日録音
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [1.Scene (Act I) And Coda]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [2.Pas De Deux (Permission De Dix Heures)]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [3.Pas De Deux (Andante Maestoso)]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [4.Waltz Of The Snowflakes]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [5.Scene (Act Il)]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [6.Spanish Dance]
Tchaikovsky:The Nutcracker Suite2(selected by Anatole Fistoulari) [7.Final Waltz And Apotheosi]
クリスマスイブの一夜の物語
チャイコフスキーの三大バレー曲の中では最もまとまりがよく、また音楽的にも充実しているのがこの「くるみ割り人形」です。
物語はクリスマスイブにおける少女の一夜の夢です。全体の構成は以下の通りです。
第一幕
- 第一場:シュタールバウム家の玄関前
- 第ニ場:シュタールバウム家の居間
- 第三場:シュタールバウム家の居間
- 第四場:雪の国
第二幕
- 第一場:水の国
- 第二場:お菓子の国の都
- 第三場:シュタールバウム家の広間
- 第四場:シュタールバウム家の玄関前
ちなみに組曲は以下の通りの構成となっています。
- 小序曲
- 行進曲
- こんぺいとうの踊り
- トレパック:ロシアの踊り
- アラビアの踊り
- 中国の踊り
- あしぶえの踊り
- 花のワルツ
ただし、ホフマンによる原作「くるみ割り人形とネズミの王様」と比べると根本的な部分で相違があります。
原作では、人形の国からクララ(原作ではマリー)が帰ってくるところまでは同じですが、それを夢の話としては終わらせていません。
クララが話す人形の国について両親は全く信じようとしないのですが、やがて王子が彼女を迎えに来て人形の国へ旅立つというラストシーンになっています。
バレーの台本はマリウス・プティパによって書かれたものですが、彼はこの最後の場面をバッサリとカットして、人形の国シーンで物語を終わらせています。
ただし、それではいかにもおさまりが悪いので、その後ワイノーネンの振付によって改訂され、クララが夢から醒めた場面で終わらせることによってこの物語をクリスマスイブの一夜の物語として設定することが一般的になりました。
夢を夢として終わらせない原作と、そこの部分をわざとぼかした原作では大きな相違がありますし、ましてや、夢はしょせん夢だとして終わらせる改訂版とでは根本的に違った作品になっていると言わざるを得ません。
当然の事ながら、プティバもワイノーネフもホフマンの原作を知っていたでしょうから、なにゆえにその様な改訂を行ったのかは興味のあるところです。(最近は原作回帰の動きもあるようです。)
バレエという芸術を本当に愛していたのだな
フィストラーリについてはすでにステレオ録音による演奏を取り上げています。ですから、今さら50年代のモノラル録音を取り上げる必要などはないとも思ったのですが、聞いてみればそれなりに面白くやはり取り上げてみたくなりました。
まず何よりも注目したいのはレコードの裏表に2種類のくるみ割り人形の組曲が収録されている1951年の録音です。レコードのジャケットには「First Suite」と「Second Suite」と記されています。
「First Suite」は言うまでもなく「Op.71a」とされているチェイコフスキー自身の手によって編集された組曲版です。そして、「Second Suite」とされているのはフィストラーリ自身が全曲版から自らの意志で選び出した組曲版です。
面白いのは、このフィストラーリ版の組曲は、その他の指揮者がよく行っている「ハイライト盤」とは少し趣が違うことです。
まず、曲の並び方は自由に変更されていることにはすぐに気づくなのですが、それよりも、全体を聞き通したときにまるで一篇のバレエ音楽を聞いたような雰囲気とまとまりの良さを感じるのです。
それと比べてみれば、通常の組曲版は、バレエ音楽の中から聴き応えのある音楽をとりまとめた「管弦楽曲」になっていることです。もちろん、そう言う「管弦楽曲」としての組曲の方も悪くはありません。確かに、例えばカラヤンのような華やかさには欠けるかもしれませんが、その端正で折り目正しい演奏は、また異なった魅力を湛えています。
それは、その翌年に録音された「眠れる森の美女」の組曲盤でも同様です。
「眠れる森の美女」の組曲はチャイコフスキーの全くあずかり知らないところで別の人物によって勝手に仕上げられたものが世に流布しているのですが、それもまた本質的にはバレエ音楽と言うよりはコンサート用の「管弦楽曲」として仕上げられていることは明らかです。そしてやろうと思えばいくらでもゴージャスに演奏することは可能なのですが、フィストラーリは決してそう言う誘惑に惑わされることなく、何処までいっても節度を保っています。
そして、そう言う節度を保った上品さこそがイギリスでは高く評価されたのでしょう。
それ故に彼のモノラル録音の「白鳥の湖」はステレオ録音の時代に入っているにもかかわらず「女王陛下の Swan Lake」と称されたのでしょう。
しかし、おそらくバレエ指揮者としてのフィストラーリの魅力と実力が存分に味わえるのは、この「くるみ割り人形」のフィストラーリ版の組曲でしょう。
一般的には、バレエ指揮者と言えば一段低く見られるクラシック音楽の世界にあって、その真の魅力を伝えているのがこの録音です。
おそらく、普通のコンサート指揮者には絶対に不可能な音楽の作り方です。
そして、この組曲版の構成と演奏ならば、そのまま振り付けをつければ短いバレエ作品として自立できるはずです。
こういう演奏を聞かされると、フィストラーリという人は本当にバレエという芸出を本当に愛していたのだなと思い知らされます。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
4597 Rating: 4.9/10 (63 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-12-01]
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品82(Glazunov:Violin Concerto in A minor, Op.82)
(Vn)ナタン・ミルシテイン:ウィリアム・スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1957年6月17日録音(Nathan Milstein:(Con)William Steinberg Pittsburgh Symphony Orchestra Recorded on June 17, 1957)
[2024-11-28]
ハイドン:弦楽四重奏曲 ハ長調「鳥」, Op.33, No.3,Hob.3:39(Haydn:String Quartet No.32 in C major "Bird", Op.33, No.3, Hob.3:39)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月1日録音(Pro Arte String Quartet Recorded on December 1, 1931)
[2024-11-24]
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)