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ジュリーニ(Carlo Maria Giulini) |ラヴェル:スペイン狂詩曲
ラヴェル:スペイン狂詩曲
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1966年5月17日-18日録音
Ravel:Rapsodie Espagnole [1.Prelude a la Nuit]
Ravel:Rapsodie Espagnole [2.Malaguena]
Ravel:Rapsodie Espagnole [3.Habanera]
Ravel:Rapsodie Espagnole [4.Feria]
ラヴェルが初めて出版した本格的な管弦楽作品
もとはピアノの連弾用として作曲されたのですが、その後オーケストレーションをほどこし、さらには4曲をまとめて「組曲」として出版されました。そして、管弦楽法の大家と言われるラヴェルの記念すべき管弦楽作品の第1号がこの作品です。
ラヴェルの母親はスペインはバスク地方の出身であり、ラヴェル自身もそのバスクの血を引き継いでいることを誇りにしていました。その意味でも、彼がオーケストラ作品の第1号にスペインを素材に選んだことは十分に納得がいきます。そして、この後も「スペインの時」や「ボレロ」のように、スペイン素材を使った作品をたくさん作曲しています。
それにしても、この作品は間違いなくリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の華麗なオーケストレーションをまっすぐに受け継いでいます。オーケストラ作品の第1号にして、すでに後年「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれる片鱗・・・『複雑多様ではあるけれども繁雑難解ではない』という彼のモットーが実現されていることには驚かされます。
第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)
第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)
第3曲:Habanera(ハバネラ)
第4曲:Feria(祭り)
ジュリーニはラヴェルの指示に従って精緻な織物を織り上げて見せた
フィルハーモニア管の時代のジュリーニは一筋縄ではいかないところがあります。
概ねはがっしりとした造形で見通しの良い音楽を形づくっているのですが、驚くほど遅いテンポでネッチリと歌い上げる(ブラームスの1番)ときもあります。
かと思えば、それとは真逆の、デモーニッシュ的なものの欠片もないほどにひたすら気持ちよく横へと流れていく(チャイコフスキーの6番)時もあります。
万華鏡というものは見るたびにその姿を変えているようでも、その底には変わらない何かが張り付いている、と書いていた人がいました。
確か、何かのミステリー小説だったと記憶しているのですが、「人もまた同じであり、彼の場合のそれは『卑屈』さだった」みたいに続くのではないかと記憶しています。
ところが、このジュリーニという万華鏡について言えば、どうにもその底にあるはずの「変わらない」ものが見えてこないのです。そして、それが見えてこないがゆえにそこに分裂症的なものを感じとってしまうのですが、かといってそこにドイツ語圏のイタリア人という出自を持ってきてもなかなか自分を納得させるのは難しいのです。
しかしながら、それがラヴェルのような音楽になるとそう言う分裂症的なところは影をひそめます。
「スイスの時計職人」と呼ばれることもあるラヴェルの精緻な音楽を、その名にふさわしいように精緻に織り上げていくことい全ての力が傾注されています。そこにあるのは、ラヴェルが目指したものをひたすら現実の音として織りあげようとする献身です。
ラヴェルの音楽は19世紀的なロマン主義的な音楽とは一線を画しています。
そこにあるのは、音符という糸を使って、どれほど精緻な織物を織り上げることが出来るのかということへの挑戦です。そして、ジュリーニはラヴェルの指示に従って精緻な織物を織り上げて見せたのでした。
言うまでもないことですが、そこに「精神性」などと言うものを感じとろうとするのは全くの間違いであって、見るべきはそこで織り上げられた織物の色合いであり、絵柄であり、そしてその手触りであったりするのです。
ですから、その見事なまでの手仕事に大きな功績を果たしているのがフィルハーモニア管であることは言うまでもありませんし、その録音会場で鳴り響いていたであろう音を録音という形で刻み込んだEMIの録音スタッフもいい仕事をしています。
ただし、いささか残念なのは56年、62年、66年と録音年代が下っていくにつれて、せっかくの精緻な織り目が録音によって滲み始めることです。
56年録音の「マ・メール・ロワ」は、EMIにしてみればステレオ録音の最初期のものなのですが、鮮やか織り目を見事に刻み込んでいます。
それと比べれば、66年の録音は良く言えばふっくらとした響きという褒め言葉を呈することも可能かも知れないのですが、それはジュリーニが求めるものではなかったでしょう。
ステレオ録音の波に乗り遅れたEMIが、その遅れを取り返そうと必死で頑張っていた50年代の後半から60年代の初頭まではいい仕事をしていたのですが、それ以後は世間でよく言われるEMIのクオリティになってしまったことが、この一連のラヴェル録音からも感じとることが出来ます。
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