クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|フリッチャイ(Ferenc Fricsay)|バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント Sz.113

バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント Sz.113

フリッチャイ指揮 RIAS交響楽団 1953年4月11&13日録音

Bartok:Divertimento for String Orchestra Sz.113 [1st movement]

Bartok:Divertimento for String Orchestra Sz.113 [2nd movement]

Bartok:Divertimento for String Orchestra Sz.113 [3rd movement]


バルトークの絶頂期を代表する作品の一つ

バルトークと言えば楽器を打楽器的に扱った「暴力的」な音楽というイメージがどうしても払拭できない人がいるようです。そう言う人には、是非とも一度は聞いてもらいたいのがこの「ディヴェルティメント」です。弦楽5部によって演奏されるので「弦楽のためのディヴェルティメント」と呼ばれたりもします。
もっとも、人によっては冒頭の部分から弦楽器を打楽器的に扱う指揮者もいるので、そう言う録音で聞くと「やっぱり、暴力的!!」と思ったりするかもしれませんが、全体的には「夜曲」と言えるような部分が多くて、とっても神秘的な音楽です。

どこかでも書いた記憶があるのですが、1930年代のバルトークをどの様に見るかは意見が分かれます。無調の方に歩を進み始めたそれ以前のバルトークを「良し」とする人々は、古典的なものに回帰した30年代を「退歩」とみなします。逆に、バルトークこそ「現代音楽」という愚かな営みにはまりこまなかった偉大な「現代の作曲家」ととらえる人々にとっては、この30年代の作品こそ彼の絶頂期を形作るものだと評価します。
私などは、迷うことなく30年代の作品こそベストだと確信していますし、その中でもこの「ディヴェルティメント」は初めて聞いたときから大好きに「なれた」作品でした。バルトーク=難解等という構えた姿勢などなくても、すんなりと心と耳に入り込んでくる作品です。

なお、バルトークの記述によると今作品はお世話になった指揮者のパウル・ザッハーへのお礼の意味をこめて夏のお休みに一気に作曲されたそうです。バルトークという人はやるときは結構やる人だったみたいで、短時間に集中して密度の高い作品を書くことがよくあったようです。彼の一番の人気作品であるオケコンも構想から完成までわずか2ヶ月足らずで仕上げていますが、このディヴェルティメントはなんと2週間程度で完成させています。


多面的な複雑さへの共感

ハンガリという国はすぐれた指揮者を輩出しています。ざっと指を折っただけで、ライナー、セル、ショルティなどです。そして、その中にフリッチャイを数え上げることに異議を差し挟む人はいないでしょう。
そして、当然と言えば当然のことですが、彼らのレパートリーの重要な部分としてバルトークが位置づけられていたことに異議を申し立てる人はいないでしょう。

しかし、彼らの演奏するバルトークを聞いてみると、フリッチャイのバルトークはかなり土臭く感じます。
その違いは、たとえば、バルトーク晩年の名作である「管弦楽のための協奏曲」を聞き比べてみればよく分かります。セルもライナーも、明らかにバルトークがもっている「理知的」な部分を強調して音楽を構成しています。そして、そう言う理知的な部分を骨格に音楽を構成しようと思えば、オケの演奏精度を極限にまで引き上げて対応せざるを得ないのですが、彼らは時代の制約などは完全に吹き飛ばして、その難事を見事に成し遂げています。
ショルティが手兵のシカゴ響を使って80年代に録音した演奏などは、その延長線上における「極値」として記録されるべきものです。

それと比べると、フリッチャイのバルトークは随分ともっさりとしています。オケが「ベルリン放送交響楽団」や「RIAS交響楽団」ですから、シカゴ響やクリーブランドのオケのようなわけにはいかないことは分かります。しかし、重要なことはそのような外的条件にあるのではなく、音楽の作り方の根本的な部分で違いがあるように思えます。

その違いは、バルトークという人がもっている、一筋縄ではいかない多面的な複雑さに共感できるか否かです。

セルは明らかに共感していません。ですから、冗長に過ぎると言って終楽章でばっさりとカットを施し、「弱点の改善」を行った嘯いています。彼は、バルトークが本当は改善したかったように改めてやったので、これこそが正しいというスタンスをとっていたようです。セルはあの終楽章の「夜の歌」は理知的なバルトークにはふさわしくないと考えたのです。
ライナーやショルティは、さすがにそこまでの「暴挙」はしていませんが、それでも理知的なバルトークの音楽の精緻にして明晰な造形を際だたせています。

しかし、フリッチャイは、そう言う複雑さにココロからの共感を寄せています。ですから、バルトークの音楽が土臭くなればフリッチャイの音楽もためらうことなく土臭くなります、そこに、オケの至らなさも加わって、ますます土臭くなるのはご愛敬です。
しかし、フリッチャイはバルトークが内包している複雑さを鏡のように映し出して見せます。
ですから、どうか冒頭の部分だけを聞いて「こりゃ、駄目だ」と聞くのをやめるのではなく、出来れば一度は最後までおつきあいください。

セルやライナーのようなスタイリッシュで近代的なたたずまいとは異なる、もう一つのバルトーク像を体験することが出来るはずです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2052 Rating: 4.9/10 (141 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2015-06-10:Lisadell





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-07-22]

エルガー:行進曲「威風堂々」第2番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 2 in A Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-07-20]

ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調, Op.53「英雄」(管弦楽編曲)(Chopin:Polonaize in A flat major "Heroique", Op.53)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-07-18]

バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565(Bach:Toccata and Fugue in D Minor, BWV 565)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-07-16]

ワーグナー:ローエングリン第3幕への前奏曲(Wagner:Lohengrin Act3 Prelude)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 30, 1959)

[2025-07-15]

ワーグナー:「タンホイザー」序曲(Wagner:Tannhauser Overture)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1964年12月7日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 7, 1964)

[2025-07-11]

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)

[2025-07-09]

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 1 In D Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)

[2025-07-07]

バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調 BWV.537(J.S.Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 537)
(organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月10日~12日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 10-12, 1961)

[2025-07-04]

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調, Op.64(Mendelssohn:Violin Concerto in E minor Op.64)
(Vn)ヨーゼフ・シゲティ:トーマス・ビーチャム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1933年録音(Joseph Szigeti:(Con)Sir Thomas Beecham London Philharmonic Orchestra Recoreded on 1933)

[2025-07-01]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)