Home|
ラインスドルフ(Erich Leinsdorf)|モーツァルト:交響曲第37番 ト長調 K.444(偽作)
モーツァルト:交響曲第37番 ト長調 K.444(偽作)
ラインスドルフ指揮 ロイヤル・フィル 1955年3月録音
Mozart:交響曲第37番 ト長調 K.444(偽作) 「第1楽章」
Mozart:交響曲第37番 ト長調 K.444(偽作) 「第2楽章」
Mozart:交響曲第37番 ト長調 K.444(偽作) 「第3楽章」
「偽作」と確定されたために耳にする機会がほとんどない作品です
この作品はミヒャエル・ハイドンの交響曲にモーツァルトが冒頭の序奏部分を付けくわえたものです。
1783年にザルツブルグからウィーンに向かう途中のリンツで音楽会のために急遽2つのシンフォニーが必要となったモーツァルトは、大あわてで「リンツ交響曲」を書きあげます。しかし、もう一つ新作をひねり出すのはさすがに難しかったようで、もう一つの方は半年ほど前に作曲されていたミヒャエル・ハイドンの作品に冒頭の荘重なアダージョを付けくわえて間に合わせました。
後にケッヘルがリンツと同様に新作として作曲されたと誤り、この作品をモーツァルト自身の作品としてケッヘル目録に取り込まれて37番というナンバーまで与えられることになってしまいました。
もちろん、この「誤り」は後に訂正されて現在は37番は欠番となっているのですが、そのせいでこの「幻のシンフォニー」を実際に耳にする機会はほとんどなくなってしまいました。
その意味では、このランスドルフによる録音は非常に「貴重」なものといえるかもしれません。
世界最初のモーツァルト交響曲全集
ラインスドルフによるこの偉業は残念ながらほとんど忘れ去られようとしています。
理由はいくつか挙げることができます。
まずは、この全集の録音を行っている途中でモノラルの時代からステレオの時代に移り変わってしまったことがあげられます。さらに悪いことに、この録音作業がが有名どころの後期作品から始まり、初期作品の録音で完成するという手順だったために、結果として有名どころの後期作品がすべてモノラル録音になってしまったことは大きなハンデとなりました。(22番以降がモノラル)
第2には、この録音が完成した途端に、ベームがステレオ録音で、ベルリンフィルを擁して完全な全集の録音を始めたことも無視できません。結果としてそのベーム&ベルリンフィルによる録音が長くモーツァルト演奏のスタンダードとなりました。
しかし、あらためてこのラインスドルフによるモーツァルト演奏を聴き直してみると、忘れ去るにはあまりにも惜しいクオリティを持っていることに気づかされます。それは、同じ頃にワルターとニューヨークフィルのコンビで録音された一連の録音(
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」 K385・
モーツァルト:交響曲第29番 K201)なんどと比べてみれば、古いロマンティックなモーツァルト像を振り払って新しいスタイルを打ち立てようとしていることをハッキリと聞き取ることができます。その意味では、50年代初頭のヨーロッパにおける即物主義によるモーツァルト演奏とはどういうものだったのかを知る上では実に貴重な録音です。(とはいえ、ジュピターの第1楽章なんかは悪い冗談のように聞こえてしまうのですが、このテンポには何か裏付けでもあったのでしょうか?)
個々の演奏に対する評価とは、評価の対象となっている演奏だけをいくら聴いても本当のことは分かりません。大切なことは、その作品の演奏の歴史を知った上で、その線上においての比較を通したうえで個々の演奏の評価や位置づけなどをすることが大切です。その意味では、戦後におけるモーツァルト演奏のスタートラインを知る上では絶対に聞いておかなければいけない録音だと言えます。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
684 Rating: 4.8/10 (242 votes cast)
よせられたコメント
2011-02-06:ヨシ様
- これは貴重ですね。もちろん初めて聴きました。
モノラル録音なのが残念ですが・・・
37番が何故欠番なのか昔から疑問に思っていました。
こうして疑問が解けたのもユング君のお陰です。
感謝します!
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)