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フルトヴェングラー(Wilhelm Furtwangler)|モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1948年12月7、8日 & 1949年2月17日 録音
Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550 [1.Molto Allegro]
Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550 [2.Andante]
Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550 [3.Menuetto]
Mozart:Symphony No.40 in G minor, K.550 [4.Allegro assai]
「哀切なるモーツァルトの音楽」の中でも、もっとも哀切なものだといえます。
おそらく、日頃クラシック音楽なんかを聞かない人でも、冒頭のメロディはどこかで聞いたことがあるはずです。
モーツァルトの交響曲は番号付きの物は41番までありますが、ベートーベン以降のようにガッチリとした形式があったわけではないので、広く解釈すれば数はもっと多くなります。逆に言えば、強固な形式観がなかっただけに、この時代の作曲家は実に多くの交響曲を残しています。
ブラームスがベートーベンの影に怯えて(?)、第1番を作り出すのに20年以上かかったのは有名な話ですが、モーツァルトやハイドンは実に気楽にたくさんの作品を生みだしています。(ちなみにハイドンの場合は番号付きの作品だけでなんと104番まであります)
そんなわけで、モーツァルトの交響曲は、いかに彼が天才だったとはいえ、ほんの子供時代の作品もふくまれていますから、すべてが傑作とは言いかねます。
たとえば、交響曲1番(E−Flat Major K.16)なんかは、わずか8歳の時の作品です。
とはいえ、父親のレオポルドは、「8歳というのに、40歳の男に要求される物をみな知っている」と言わせた天才を感じ取ることができます。そして、この作品で聞くことのできる哀切な響きは、すでにモーツァルトの音楽の「哀しさ」を刻み込んでいます。こんな「哀しさ」がすでに8歳の子供にも宿っていたのかと驚かされます。
ちなみに若書きの作品として有名なものに、ロッシーニの「弦楽のためのソナタ」があります。ロッシーニ12歳の作品です。
しかし、この4歳の差は大きく、両者を比べるとロッシーニの作品は完全に大人の作品です。幼さを全く感じさせません。
そして、この作品に聞こえる哀切な響きには「甘いあこがれ」が感じ取れ、決してモーツァルトの模倣にはなっていないのはさすがです。(閑話休題)
それから、モーツァルトの交響曲の中で短調の曲はたったの2曲だけで、ともにGマイナーというのもよく指摘されてきたことです。
一曲は今お聞きの40番、そしてもう一曲は映画「アマデウス」で有名になった25番です。通常、40番を「大ト短調」、25番を「小ト短調」と言います。
ともに「哀切なるモーツァルトの音楽」の中でも、もっとも哀切なものだといえます。
フルトヴェングラーとは思えないような演奏スタイル
ある人の言によると、これが数あるト短調シンフォニーの中の最速テンポによる演奏らしいです。
まあ、最速かどうかは星の数ほども録音がありますから確証のほどはありませんが、それでも驚くほどの快速テンポです。フルトヴェングラーと言えばネチネチと強弱やテンポに変化をつけてドラマティックに仕上げるというのが通り相場ですから、この表現にはいささか驚かされます。
なお、フルトヴェングラーのト短調シンフォニーに関しては、その真偽に関して諸説がありましたので、ここで少し整理しておきます。
現在残されているト短調シンフォニーの録音は3種類です。(私が知らないだけで他にもあるのかもしれません)
一つは、ここで紹介している48年から49年にかけての録音です。
フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1948年12月7、8日/1949年2月17日録音
これに関しては、EMIによる正規のスタジオ録音なので、真偽に関しては何の問題もありません。どう聞いたってフルトヴェングラーとは思えない表現なのですが、その真偽に関しては疑う余地がありません。
そして、この録音は当初SP盤6枚組として発売されたらしいのですが、その内の3面と4面が1949年の2月に録り直したものが採用され、48年の12月に録音したものはリリースされなかったようなのです。
もう一枚は、同じ年の6月のライブ録音です。
フルトヴェングラー指揮 ヴィースバーデン国立劇場 1948年6月10日録音
フルトヴェングラーという人は、本当に選り好みをしないで色んなオケを平気で振る人でした。この日の録音に関しては、ブラームスの4番が名演として評価されていて、モーツァルトに関しては殆どスルー状態です。やはり、モーツァルトとフルトヴェングラーはあまり相性がよくないようです。
さて、問題はもう一枚の1944年盤です。
フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1944年6月2、3日録音
ややこしさの原点はとある海賊盤レーベルが、この音源を「1949年2月8日録音」として発売したことです。当然の事ながら、EMIのスタジオ録音とは全く異なる演奏スタイルなので一斉に「偽物説」がでたわけです。しかし、その後幾つかのレーベルがこの音源を1944年6月の録音としてリリースされることで、当初の1949年2月録音というクレジットは否定されることになりました。
しかしながら、これが戦時中の録音だったと言うことが確定しても、それでもなお、49年のスタジオ録音との様式の違いは小さくないので、未だに「偽物説」がくすぶり続けているわけです。
ただし、フランスの「TAHRAレーベル」がこの音源を1944年6月2,3日の録音として、同じ日に録音されたロザムンデ3番と並んでリリースしたことで、今ではほぼ「本物」と言うことで落ち着いているようです。
そして、問題となってきた演奏様式の変化については戦時中から戦後にかけての時代の変化の中で、フルトヴェングラー自身も変化したという解釈が為されているようです。
その辺りは、いささか都合のよすぎる解釈のような気もするのですが、まあ世間がそうなっているのですからそれで良しとするしかありません。
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よせられたコメント
2018-01-11:Sammy
- ウィーンフィルの美質を生かした、端正で集中力の高い演奏だと思いました。確かに今となってはそういう録音はほかにもあるだろう、とか、yungさんご指摘の通りフルトヴェングラーらしくないとかいったこともあると思いますが、その辺りをわきにおいて演奏を聴くと、録音も明瞭ですし、いいのでは、と思います。
そして、かつて一度聞いた時に感じられた圧倒的な緊迫感は、今回聞いてみて、厚みのある響きを保ったうえでの疾走感にあったのかな、と再度確かめた感じにもなりましたが、この辺りは私には、指揮者の特徴の一端を反映しているようにも思われます。
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