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Home|ケルテス(Istvan Kertesz)|ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

イシュトヴァン・ケルテス指揮 ロンドン交響楽団 1964年3月5日~6日録音

Dvorak:Symphony No.7 in D minor, Op.70 (B.141) [1.Allegro maestoso]

Dvorak:Symphony No.7 in D minor, Op.70 (B.141) [2.Poco Adagio]

Dvorak:Symphony No.7 in D minor, Op.70 (B.141) [3.Scherzo: Vivace]

Dvorak:Symphony No.7 in D minor, Op.70 (B.141) [4.Finale: Allegro]


ブラームスの仮面をかぶったシンフォニー

1882年、ドヴォルザークはロンドン・フィルハーモニー協会から自作の指揮をするように招待を受けて、はじめてイギリスの地を踏みます。演奏会は空前の大成功をおさめ、ドヴォルザークは協会の名誉会員に選ばれるとともに、協会のために新しい交響曲を書くように依頼されます。
ちょうど同じ頃に、ブラームスの交響曲3番を聞いて深く感動して新たな交響曲の創作に意欲を見せていたドヴォルザークはその依頼を即座に受け入れます。1884年の2回目のイギリスへの演奏旅行も成功裏に終り、プラハに戻ったドヴォルザークはその年の暮れから創作に取りかかり、翌年の3月には完成させました。その新しい作品が、現在では「第7番」とナンバーリングされている交響曲です。(この交響曲は出版されたときは「第2番」とされていて、それで長らく通用していました。)

この作品は同年4月からの3回目のイギリス訪問で初演され過大にすぎるくらいの成功と評価を勝ち得ました。一般的、ドヴォルザークとイギリスは相性が良かったようで、イギリスの評論家は常にドヴォルザークの作品に対して高い評価を与えてきました。その中でも、この作品は特にお気に入りだったようで、シューベルトのハ長調交響曲やブラームスの最後の交響曲に匹敵する傑作とされ続けてきました。(さすがに、今はそんなことを言う人はいないでしょうが・・・)

この作品はドヴォルザークに特有なボヘミア的な憂愁よりは、どこかブラームスを思わせるような重厚さが作品を支配しています。内省的でどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があります。
ドヴォルザーク自身も出版業者のジムロックにあてて「新しい交響曲に取り組んでもう長期になるが、それは何か本格的なものになりそうだ」と述べています。その「本格的なもの」とはブラームスの交響曲をさしていることは明らかです。
誤解を招くかもしれませんが、ドヴォルザークがブラームスの仮面をつけて書いたような音楽です。


シンフォニストとしてのドヴォルザーク

ケルテスのドヴォルザークと言えば、彼にとってのデッカデビュー盤となった1960年録音の「新世界より」が思い出されます。何しろ、オケがウィーンフィルでしたし、今とは全く違う往年の(?)のウィーンフィルの響きが収められていました。

ケルテスは、その後に、63年からデッカレーベルでドヴォルザークの交響曲を次々と録音していくのですが、その時のオケはロンドン交響楽団でした。さすがに、ドヴォルザークの1番から6番までの交響曲をウィーンフィルで録音するというわけにはいかなかったのでしょうか。

しかし、「新世界より」の60年盤は今もって名盤としての地位を失っていないのですから、その事はロンドン交響楽団と交響曲全集を録音していく上で、大きなプレッシャーとなったであろう事は容易に察しがつきます。
なんと言っても「新世界より」はドヴォルザークにとっては「名刺代わり」の代表作です。
交響曲の全曲録音というのは「資料的価値」の大きい仕事にはなるのですが、肝心の「新世界より」が「前の方がよかったね。」では格好が付きません。

ですから、録音の順番を見てみると、そんなケルテスの思いが伝わってくるようです。

63年に第8番の録音でこの全集はスタートして、翌64年には第7番を録音しています。

この辺りは納得でしょう。
いくら、新しく全曲録音をスタートさせるからと言って、60年にウィーンフィルと「新世界より」を録音しているのではダブらせるわけにはいかなかったのでしょう。

しかし、それに続けて65年にはかなりマイナーな作品である第5番と第6番を録音しています。

ケルテスにとっては、9番「新世界より」はそれほど容易に録音できる作品ではなかったのです。
そして、その翌年の66年になると、10月に3番と4番を録音し、11月に漸く2番と9番を録音しています。

まさに、満を持してという感じで「新世界より」に取り組んでいるのです。
そして、最後に落ち穂拾いのように第1番をその年の12月に録音しています。

ですから、ここでのドヴォルザークはウィーンフィルとの60年盤とは雰囲気がかなり異なります。
言葉は悪いかもしれませんが、60年盤の「新世界より」では主導権は明らかにウィーンフィルが握っていました。ケルテスはここぞという場面では自分の考えをおしだして覇気溢れる音楽に仕上げているのですが、全体としてはオケの邪魔にならないように振る舞っているように聞こえます。
しかし、63年から始まった全曲録音では、彼自身もあらためてドヴォルザークのスコアを徹底的に研究し直して、まさにブラームスからの流れを次ぐシンフォニストしてのドヴォルザークを描き出しています。

そして、これを聞けば、一見きわめて即物的で客観的に見えるセルやライナーやトスカニーニのドヴォルザークが、その実きわめて主情的な演奏であったことに気づくのです。
ドヴォルザークの音楽というのは、あそこまで非情で、近代的な佇まいではないのです。
そして、一見すればきわめて即物的に見えながら、その後のただただ「楽譜に忠実」なだけの凡庸な演奏とは全く格が違うのは、彼らの演奏というのはその様な強い主情性に貫かれていたからなのです。

その意味で、このケルテスの音楽は、あの化け物たちのように(^^;、オケとスコアを引きずり回して己のイメージを形にするような事はしていません。
まさに、ドヴォルザークのスコアが語りかけるものを大切にすることで、シンフォニストとしてのドヴォルザークの姿を聞き手に提示してくれます。

その意味では、この一番最初に録音された7番と8番こそは、ケルテスの一連の録音の中でも最も相性のよい作品だったようです。

なお、残る1番から6番まではきわめて録音の数が少ないので、2018年には全てパブリックドメインとなるケルテスの録音は貴重です。しかし、TPP関連の条約発効がどうなるかによってそのラインが20年先延ばしになる可能性もあります。アメリカ大統領選挙ではクリントンもトランプもともにTPPには反対だと言っているので、もしかしたらかなり長期にわたって「漂流」する可能性もあります。個人的には「漂流」は大歓迎です。(^^v

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