Home|
セル(George Szell)|モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1960年3月11日録音
Mozart:交響曲第39番 変ホ長調 K.543 「第1楽章」
Mozart:交響曲第39番 変ホ長調 K.543 「第2楽章」
Mozart:交響曲第39番 変ホ長調 K.543 「第3楽章」
Mozart:交響曲第39番 変ホ長調 K.543 「第4楽章」
白鳥の歌
Googleで、「モーツァルト 白鳥の歌」と検索をかけてみると様々な作品が引っかかってきました。
まずは、「白鳥の歌」という言葉の概念通りに、彼の最後の作品となった「レクイエム:をあげている人、その少し前の「クラリネット協奏曲」に言及している人、さらには最後のピアノ協奏曲を引き合いに出している人と、実に多様です。
しかし、昔からモーツァルトの白鳥の歌といえばこの39番のシンフォニーをあげるのが定番でした。
もともと白鳥の歌というのは、「白鳥は死ぬ前に最後に一声美しく鳴く」という言い伝えから、作曲家の最後の作品をさす言葉として使われました。しかし、その後はもう少し拡大解釈されて、作曲家の最後に相応しい作品を白鳥の歌と呼ぶようになっているようです。
その意味でいえば、最後の三つの交響曲の中で最も明るく優美で、そして古典的な均衡を崩さないこの作品は「白鳥の歌」という言葉に最も相応しい作品だといえます。さらに、アインシュタインがこの作品に対して「あるのは永遠への訴えである」と語ったように、そこに彼岸的な美しさを見つけるならば、その思いはより確固としたものになります。
抑えに抑えた表現の中から立ち上る華の美しさ
吉田秀和氏はセルとクリーブランド管のコンビを宋時代の白磁にたとえられました。そして、その事を受けて「50年代後半の響きは「白磁」とは少し違うように思います。白磁なら落とせば割れてしまいますが、50年代のこのコンビの響きはその様な脆さや弱さとは無縁です。」と書いたことがあります。
この60年に録音されたモーツァルトの39番は、まさにそのような境目に位置する録音のように聞こえます。
この録音を聞けば、セルがオケを強引ドライブし、オケもそれに必死でついていくような「凄まじさ」はなくなっています。言葉をかえれば、クリーブランドのオケは、セルがそれほど必死で引っ張らないでも、彼を満足させるレベルの響きを出すようになっていました。
この事を、誰かが「セルがクリーブランドのオケに包摂された」と表現された人がいました。まさに言い得て妙で、その結果としてオケの響きからは思い詰めたような必死さが姿を消して、かわりに「落とせば割れるが故の白磁の美しさ」が前面に出てきました。
セルのモーツァルトというのは、下手な再生システムで聞くとキンキンとした金属的な響きが強くて聞いていられませんが、しっかりとしたシステムで再生すると、おそらくモダンオケを使ったモーツァルトとしては極上の響きが楽しめます。
とりわけ、このコンビの代表的な録音とも言うべきト短調のシンフォニーなどはその典型で、あの録音を聞いてファーストヴァイオリンの響きが金属的で聞いていられないと思う人は再生システムを見直すべきです。
セルのモーツァルトは外見だけを見るときわめて端正で人の心をぐっと引き寄せるロマン的な身振りなどは全くありません。しかし、その端正な表現の中で間違いなく熱い心が燃えています。そして、一番凄いのは、オケのプレーヤー全員がその熱い心を持ちながら、響きはどこまでも端正で誰一人突出することなくまさに白磁のごときつややかな響きを保持していることです。
この抑えに抑えた表現の中から立ち上る華の美しさこそが、セルのモーツァルトの最良の魅力なのでしょう。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1376 Rating: 5.4/10 (197 votes cast)
よせられたコメント
2011-10-02:せいの
- これは驚きました。セル・クリーブランドのちょっとひんやりした響きが、39番の透明感とマッチしてすごい名演になっていると思います。
この39番とピアノ協奏曲27番はモーツアルトの中でかなり異質な音楽だと思います。あまり愉悦感や色彩感を出すと音楽が壊れてしまうのではないでしょうか。ワルター・コロンビアなど交響曲38番は素晴らしいですが、39番はちょっと甘さが強すぎるかなと感じていました。
この演奏はわたしが今まで聴いてきた中では白眉の演奏です。
アップロード、ありがとうございました。
こういう出会いがあるからクラシック音楽は楽しいです。
2021-07-02:コタロー
- 私が10代後半の頃、CBSソニーから「ベストクラシック100」というレコードが出ていました。ジョージ・セルに関心を持ち始めた私は、すかさず彼のモーツァルト交響曲39番・40番のLPを購入しました。40番の方は、素晴らしい演奏と思いつつ、当時家にあった家庭用ステレオでは音がきつく聞こえたので、もっぱら39番の方を聴いていました。ここで驚嘆したのは、クリーヴランド管弦楽団の弦の響きのクールな美しさでした。
実はこの演奏、小林利之氏の著書『ステレオ名曲に聴く』には、「娯楽性はまったくありませんが、やはり忘れられない演奏です。」と書かれていて、「この曲には娯楽性なんて必要ない!」なんて息巻いていたのも懐かしい思い出です。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)