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バルビローリ((Sir John Barbirolli)|シベリウス:交響曲第2番ニ長調Op.43
シベリウス:交響曲第2番ニ長調Op.43
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1952年12月18日~19日録音
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [1.Allegretto]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [2.Tempo Andante, Ma Rubato]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [3.Vivacissimo]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [4.Finale (Allegro Moderato)]
シベリウスの田園交響曲?
シベリウスの作品の中ではフィンランディアと並んでもっとも有名な作品です。そして、シベリウスの田園交響曲と呼ばれることもあります。もちろん、ベートーベンの第6番を念頭に置いた比喩ですが、あちらがウィーン郊外の伸びやかな田園風景だとすれば、こちらは疑いもなく森と湖に囲まれたフィンランドの田園風景です。
さらに、この作品にはフィンランドの解放賛歌としての側面もあります。重々しい第2楽章と荒々しい第3楽章を受けた最終楽章が壮麗なフィナーレで結ばれるところが、ロシアの圧政に苦しむフィンランド民衆の解放への思いを代弁しているというもので、この解釈はシベリウスの権威と見なされていたカヤヌスが言い出したものだけに広く受け入れられました。
もっとも、シベリウス本人はその様な解釈を否定していたようです。
言うまでもないことですが、この作品の暗から明へというスタイルはベートーベン以降綿々と受け継がれてきた古典的な交響曲の常套手段ですから、シベリウスは自分の作品をフィンランドの解放というような時事的な際物としてではなく、その様な交響曲の系譜に連なるものとして受け取って欲しかったのかもしれません。
しかし、芸術というものは、それが一度生み出されて人々の中に投げ込まれれば、作曲家の思いから離れて人々が求めるような受け入れ方をされることを拒むことはできません。シベリウスの思いがどこにあろうと、カヤヌスを初めとしたフィンランドの人々がこの作品に自らの独立への思いを代弁するものとしてとらえたとしても、それを否定することはできないと思います。
この作品は第1番の初演が大成功で終わるとすぐに着手されたようですが、本格的取り組まれたのはアクセル・カルペラン男爵の尽力で実現したイタリア旅行においてでした。
この作品の中に横溢している牧歌的で伸びやかな雰囲気は、明らかにイタリアの雰囲気が色濃く反映しています。さらに、彼がイタリア滞在中にふれたこの国の文化や歴史もこの作品に多くのインスピレーションを与えたようです。よく言われるのは第2楽章の第1主題で、ここにはドンファン伝説が影響を与えていると言われています。
しかし、結局はイタリア滞在中にこの作品を完成させることができなかったシベリウスは、フィンランドに帰国したあとも精力的に作曲活動を続けて、イタリア旅行の年となった1901年の末に完成させます。
一度聞けば誰でも分かるように、この作品は極めて少ない要素で作られています。そのため、全体として非常に見通しのよいすっきりとした音楽になっているのですが、それが逆にいささか食い足りなさも感じる原因となっているようです。その昔、この作品を初めて聞いた私の友人は最終楽章を評して「何だかハリウッドの映画音楽みたい」とのたまいました。先入観のない素人の意見は意外と鋭いものです。
正直言うと、ユング君は若い頃はこの作品はとても大好きでよく聴いたものですが、最近はすっかりご無沙汰していました。やはり、食い足りないんですね。皆さんはいかがなものでしょうか?
バルビ節全開の演奏
バルビローリのシベリウスと言えば定番中の定番です。特に、その最晩年(1966年?70年)にEMIが録音した交響曲全集は今もってその存在価値を失っていません。と言うか、どこか北国のひんやりした空気感で彩られることの多いシベリスにとって、彼ほど熱気と情熱に満ちたシベリウスを描き出した人は他に思い当たらないという意味では、かけがえのない録音となっています。
もちろん、シベリウスを十八番にしていたバルビローリですから、ディスコグラフィを調べてみると結構たくさんの録音を残しています。
第1番
- 1942年4月11日録音 ニューヨークフィル
- 1957年12月30?31日録音 ハレ管弦楽団
- 1966年12月28?30日録音 ハレ管弦楽団
第2番
- 1940年5月6日録音 ニューヨークフィル
- 1952年12月18?19日録音 ハレ管弦楽団
- 1962年10月1日?9日録音 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
- 1966年7月25?26日録音 ハレ管弦楽団
第3番
- 1969年5月27?28日録音 ハレ管弦楽団
第4番
- 1969年5月29?30日録音 ハレ管弦楽団
第5番
- 1957年5月28日録音 ハレ管弦楽団
- 1966年7月26?27日録音 ハレ管弦楽団
- 1968年8月9日録音(プロムスのライブ録音) ハレ管弦楽団
第6番
- 1970年5月21?22日録音 ハレ管弦楽団
第7番
- 1949年3月3?5日録音 ハレ管弦楽団
- 1966年7月27?28日録音 ハレ管弦楽団
この中で、1942年の第1番だけは聞いたことがありません。もしかしたら、最近はライブ録音の発掘も進んでいるので、これ以外にもリリースされているかもしれません。何しろ、彼は客演なんかでもよくシベリスを取り上げていましたから、眠っている音源は結構あると思います。
今回は、52年の第2番と57年の第1番を取り上げました。(40年の2番と49年の7番は録音が悪いのでパス、57年の5番はリリースが59年なのであと1年の辛抱)
世間では、バルビローリのシベリウスはハレ管が下手すぎるので聴く気にならないという人もいるようですが、ホントにお気の毒な話です。弦楽器群を中心とした入念な表情付けと、ここぞと言うところでの金管群の咆吼というバルビ節全開の演奏を、オケが下手だからと入り口でシャットアウトするとは、いったい何を目的で音楽を聞いているのでしょう?
ただ、よく聞いていると、細かい表情付けはしているのですが、全体のテンポ設定は意外なほどにインテンポで、構成はしっかりしています。ですから、歌は歌いまくっていても決して下品にならない秘密その辺にあるのではないでしょうか。
特に第1番はやりたい放題という感じで、同じ時期に録音されたチャイコフスキーやドヴォルザークの録音と並んで、バルビローリにとっては最良の時だったのではないでしょうか。それと比べると、第2番はややおとなしめです。
もちろん、最晩年の全集はもっと行儀がいいです。
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