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ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83

(P)カーゾン セル指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1953年1月録音



Brahms:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83 「第1楽章」

Brahms:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83 「第2楽章」

Brahms:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83 「第3楽章」

Brahms:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83 「第4楽章」


まったく可愛らしいきゃしゃなスケルツォをもった小さなピアノ協奏曲・・・

逆説好みというか、へそ曲がりと言うべきか、そう言う傾向を持っていたブラームスはこの作品のことそのように表現していました。しかし、そのような諧謔的な表現こそが、この作品に対する自信の表明であったといえます。

ブラームスは第1番の協奏曲を完成させた後に友人たちに新しい協奏曲についてのアイデアを語っています。しかし、そのアイデアは実現されることはなく、この第2番に着手されるまでに20年の時間が経過することになります。

ブラームスという人は常に慎重な人物でした。自らの力量と課題を天秤に掛けて、実に慎重にステップアップしていった人でした。ブラームスにとってピアノ協奏曲というのは、ピアノの名人芸を披露するためのエンターテイメントではなく、ピアノと管弦楽とが互角に渡り合うべきものだととらえていたようです。そう言うブラームスにとって第1番での経験は、管弦楽を扱う上での未熟さを痛感させたようです。
おそらく20年の空白は、そのような未熟さを克服するために必要だった年月なのでしょう。
その20年の間に、二つの交響曲と一つのヴァイオリン協奏曲、そしていくつかの管弦楽曲を完成させています。

そして、まさに満を持して、1881年の夏の休暇を使って一気にこの作品を書き上げました。
5月の末にブレスハウムという避暑地に到着したブラームスはこの作品を一気に書き上げたようで、友人に宛てた7月7日付の手紙に「まったく可愛らしいきゃしゃなスケルツォをもった小さなピアノ協奏曲」が完成したと伝えています。
決して筆のはやいタイプではないだけにこのスピードは大変なものです。まさに、気力・体力ともに充実しきった絶頂期の作品の一つだといえます。

さて、その完成した協奏曲ですが、小さな協奏曲どころか、4楽章制をとった非常に規模の大きな作品ででした。
また、ピアノの技巧的にも古今の数ある協奏曲の中でも最も難しいものの一つと言えます。ただし、その難しさというのが、ピアノの名人芸を披露するための難しさではなくて、交響曲かと思うほどの堂々たる管弦楽と五分に渡り合っていかなければならない点に難しさがあります。いわゆる名人芸的なテクニックだけではなくて、何よりもパワーとスタミナを要求される作品です。

そのためか、女性のピアニストでこの作品を取り上げる人はほとんどいないようです。また、ブラームスの作品にはどちらかと言えば冷淡だったリストがこの作品に関してだけは楽譜を丁重に所望したと伝えられていますが、さもありなん!です。

それから、この作品で興味深いのは最終楽章にジプシー風の音楽が採用されている点です。
何故かブラームスはジプシーの音楽がお好みだったようで、「カルメン」の楽譜も入手して研究をしていたそうです。この最終楽章にはジプシー音楽とカルメンの大きな影響があると言われています。


セル&カーゾン、まさに黄金のコンビ!

まさに、これぞセル&カーゾン!と喝采をおくりたかったのは私だけでなかったようです。引き締まった響きでオケをグイグイとドライブしながら圧倒的な演奏を繰り広げた第1楽章を聞き終わった後に思わず拍手をしてしまったら、何とスピーカーからも拍手が聞こえて来るではないですか・・・(^^;。
楽章と楽章の間で拍手をするのは基本的にはマナー違反でしょうが、そうせずにはおれないような演奏も存在することも事実です。思い出せば、テンシュテットがロンドンフィルと初来日したときの初日、マーラーの5番の第3楽章が終わったときに、その圧倒的な迫力に観客席から思わず拍手が巻き起こりました。その場に私も居合わせたのですが、それは決して嫌な感情を引き起こすようなものではなく、心の底から共感できる拍手でした。ある意味では、それは演奏者に対する最大のオマージュの一種かも知れません。
そして、驚くなかれ、この日のコンサートでは第2楽章が終わった後にも拍手が巻き起こったのです。流石に、叙情的な第3楽章が終わった後には拍手はありませんでしたが、ほとんど間をおかずに最終楽章になだれ込ませたセルの劇場的な直感はたいしたものです。

それから、ピアニストのカーゾンですが、これもまた冴え冴えとした透明感のある深々とした響きが本当に素晴らしいです。さらに、音楽的に決して恣意的な振る舞いをする人ではないので、セルとの相性もすこぶるいいようです。第1番のコンチェルトでは優れたスタジオ録音を残しているだけに、この2番に関しても万全な状態でのスタジオ録音を残してほしかったなと思わずにはおれません。(クナ&VPOとのコンビで1957年に録音していますが・・・。)
録音の方も、50年代の初頭のライブ録音としては極上の部類に属すると言えます。

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