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バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第1番

クナッパーツブッシュ指揮 Vn. シュナイダーハン ウィーンフィル 1944年7月1日録音




3曲しか残っていないのが本当に残念です。

バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲しか残していませんが、残された作品ほどれも素晴らしいものばかりです。(「日曜の朝を、このヴァイオリン協奏曲集と濃いめのブラックコーヒーで過ごす事ほど、贅沢なものはない。」と語った人がいました)
勤勉で多作であったバッハのことを考えれば、一つのジャンルに3曲というのはいかにも少ない数ですがそれには理由があります。

バッハの世俗器楽作品はほとんどケーテン時代に集中しています。
ケーテン宮廷が属していたカルヴァン派は、教会音楽をほとんど重視していなかったことがその原因です。世俗カンタータや平均率クラヴィーア曲集第1巻に代表されるクラヴィーア作品、ヴァイオリンやチェロのための無伴奏作品、ブランデンブルグ協奏曲など、めぼしい世俗作品はこの時期に集中しています。そして、このヴァイオリン協奏曲も例外でなく、3曲ともにケーテン時代の作品です。

ケーテン宮廷の主であるレオポルド侯爵は大変な音楽愛好家であり、自らも巧みにヴィオラ・ダ・ガンバを演奏したと言われています。また、プロイセンの宮廷楽団が政策の変更で解散されたときに、優秀な楽員をごっそりと引き抜いて自らの楽団のレベルを向上させたりもした人物です。
バッハはその様な恵まれた環境と優れた楽団をバックに、次々と意欲的で斬新な作品を書き続けました。

ところが、どういう理由によるのか、大量に作曲されたこれらの作品群はその相当数が失われてしまったのです。現存している作品群を見るとその損失にはため息が出ます。
ヴァイオリン協奏曲も実際はかなりの数が作曲されたようなですが、その大多数が失われてしまったようです。ですから、バッハはこのジャンルの作品を3曲しか書かなかったのではなく、3曲しか残らなかったというのが正確なところです。
もし、それらが失われることなく現在まで引き継がれていたなら、私たちの日曜日の朝はもっと幸福なものになったでしょうから、実に残念の限りです。

敬虔なバッハ演奏


クナと言えば時にはおふざけがすぎる演奏も多いのだが、バッハに向き合うときは実に敬虔な態度で望んでいるように思えます。その姿勢は、シュナイダーハンにも共通していて、大戦末期の異様な時代状況も反映してか、実に感動的な演奏となっています。とりわけ第2楽章は「慟哭」という言葉を使いたくなるような凄みがあります。
もちろんスタイルは古色蒼然たるものであり、現在のバッハ研究の到達点から言えば「間違いだらけ」の演奏なのでしょうが、昨今の癒し系のイジー・リスニング的なバッハに飽き足らない人には貴重な録音だと言っていいでしょう。
なお、シュナイダーハンは当時のウィーンフィルのコンサートマスターでした。


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