クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|シューリヒト(Carl Schuricht)|ブルックナー:交響曲第8番ハ短調

ブルックナー:交響曲第8番ハ短調

カール・シューリヒト指揮 北ドイツ放送交響楽団 1955年10月24日録音



Bruckner:交響曲第8番ハ短調 「第1楽章」

Bruckner:交響曲第8番ハ短調 「第2楽章」

Bruckner:交響曲第8番ハ短調 「第3楽章」

Bruckner:交響曲第8番ハ短調 「第4楽章」


ブルックナーの最高傑作

おそらくブルックナーの最高傑作であり、交響曲というジャンルにおける一つの頂点をなす作品であることは間違いありません。
もっとも、第9番こそがブルックナーの最高傑作と主張する人も多いですし、少数ですが第5番こそがと言う人もいないわけではありません。しかし、9番の素晴らしさや、5番のフィナーレの圧倒的な迫力は認めつつも、トータルで考えればやはり8番こそがブルックナーを代表するにもっともふさわしい作品ではないでしょうか。

実際、ブルックナー自身もこの8番を自分の作品の中でもっとも美しいものだと述べています。

規模の大きなブルックナー作品の中でもとりわけ規模の大きな作品で、普通に演奏しても80分程度は要する作品です。
また、時間だけでなくオーケストラの楽器編成も巨大化しています。
木管楽器を3本にしたのはこれがはじめてですし、ホルンも8本に増強されています。ハープについても「できれば3台」と指定されています。
つまり、今までになく響きがゴージャスになっています。ともすれば、白黒のモノトーンな響きがブルックナーの特徴だっただけに、この拡張された響きは耳を引きつけます。

また、楽曲構成においても、死の予感が漂う第1楽章(ブルックナーは、第1楽章の最後近くにトランペットとホルンが死の予告を告げる、と語っています)の雰囲気が第2楽所へと引き継がれていきますが、それが第3楽章の宗教的ともいえる美しい音楽によって浄化され、最終楽章での輝かしいフィナーレで結ばれるという、実に分かりやすいものになっています。
もちろん、ブルックナー自身がそのようなプログラムを想定していたのかどうかは分かりませんが、聞き手にとってはそういう筋道は簡単に把握できる構成となっています。

とかく晦渋な作品が多いブルックナーの交響曲の中では4番や7番と並んで聞き易い作品だとはいえます。


荒々しく豪快なライブ録音

 シューリヒトのブルックナーと言えば、まずは最晩年のウィーンフィルとの8番と9番の録音が思い起こされます。さらに、もう少し詳しい人ならばハーグフィルとの「墨絵のような」と形容された7番の録音を想起されるかもしれません。この両者に共通するのは、巨大性を排したスタイリッシュなブルックナーです。
 それは、ひたすら音楽を巨大化させていくクナとは対極にありながら、ブルックナー演奏の一つの典型として高く評価されてきました。
 しかし、最近になってシューリヒトのライブ録音が広く流通するようになってきて、彼のスタジオ録音とライブ録音ではかなりスタンスが違うことが指摘されるようになってきました。それは一言では言えば、熱いライブと取り澄ましたスタジオ録音となります。「サラサラ流れていく」と称されることの多いシューリヒトとは別人のような音楽作りがライブからは聞こえてきます。
 まず、すぐに分かるのは金管楽器の強奏であり、弦楽器群の分厚い響きです。さらに、テンポの方もサラサラ流れていくどころか、至る所で大胆なギアチェンジが施されています。その結果として聞こえてくる音楽は豪快かつ熱気に満ちたものとなっています。それも、いくつかのライブ録音でその様な「意外な姿」を見せるのではなくて、彼のブルックナーのライブ録音はほとんどその様な熱い音楽になっているのですから、逆にウィーンフィルとのスタジオ録音はいったい何だったんだ?と言う疑問がおこってくるほどです。
 ただし、荒々しく豪快な演奏というのは、言葉をかえれば荒っぽい演奏という見方もできます。そして、シューリヒトのライブ録音もシビアに見れば、荒々しさが時に荒っぽさにまでいたっている場面が多々見受けられます。例えば、管楽器の不安定な音程は至る所に散見されます。テンポの急変に追いつけずにオケが必死で追いかける場面も見受けられます。
 おそらく、シューリヒトという人は実演ではあまり細かいことを言わなかった人なのでしょう。
 ウィーン・フィルのメンバーが、シューリヒトの事を「偉大な老紳士」と呼んだのは、彼の音楽的才能に対する尊敬があったことは言うまでもないでしょうが、そう言う穏やかな人間性に対する親しみもあったのではないでしょうか。とにかく、彼のライブ録音からはオケをコントロールしようという強い意志を感じ取ることは出来ません。ですから、オケのメンバーはシューリヒトが提供する音楽的な霊感に共感しながらもかなり好き勝手に音楽を楽しんでいるような風情が感じ取れます。
 一期一会のライブ録音ならば、それはそれで感動的なコンサートになったでしょう。
 そう言えば、彼は基本的に客演が主で、最後まできちんとしたオケのシェフにはおさまりませんでした。彼の才能を考えれば不思議な話でありますが、こういう一連のライブ録音を聞くと、なるほど彼にはオーケストラビルドは不向きだったんだと納得せざるを得ません。
<追記>
 最近集中してシューリヒトの50年代のライブ録音を聞いてみました。感想としては、7番が一番丁寧に演奏されていて、4番がもっとも荒々しさを感じます。そして、この8番がそのちょうど中間で、もっともバランスがとれた熱気に満ちた演奏になっています。ただし、4番の演奏で強く感じる荒っぽさが8番でもあちこちで感じる事は否定できません。人によって、評価が分かれるでしょう。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



943 Rating: 4.9/10 (235 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-08-16]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年10月14日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on October 14, 1946)

[2025-08-14]

ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲&第3幕への前奏曲~従弟たちの踊りと親方達の入場(Wagner:Die Meistersinger Von Nurnberg Prelude&Prelude To Act3,Dance Of The Apprentices)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2025-08-11]

エルガー:行進曲「威風堂々」第4番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 4 In G Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)

[2025-08-09]

バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV.533(Bach:Prelude and Fugue in E minor, BWV 533)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-08-07]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)

[2025-08-05]

ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op. 115(Brahms:Clarinet Quintet in B Minor, Op.115)
(Clarinet)カール・ライスター:アマデウス四重奏団 1967年3月録音(Karl Leister:Amadeus Quartet Recorded on March, 1967)

[2025-08-03]

コダーイ: マロシュセーク舞曲(Zoltan Kodaly:Dances of Marosszek)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年11月15日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 15, 1962)

[2025-08-01]

ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲(Johann Strauss:Die Fledermaus Overture)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-07-30]

エルガー:行進曲「威風堂々」第3番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 3 in C Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-07-28]

バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV.545(Bach:Prelude and Fugue in C major, BWV 545)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)