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ヴェルディ:ファルスタッフ


トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 (Br)ヴァルデンゴ (Br)グァレーラ (T)マダージ (S)ネッリ 他1950年録音


ヴェルディに喜劇は書けない・・・?



ヴェルディには苦い思い出があります。それは生涯にただ一度だけ書いた喜劇「王国の一日」が見るも無惨な失敗に終わってしまったことです。それはヴェルディにとってのトラウマとなったのかどうかは分かりませんが、その後彼は一度もオペラ・ブッファを書こうとはしませんでした。
ですから、彼の作品の出版を一手に手がけていたリコルディも「ヴェルディには喜劇オペラを書く才能がない」と言って(ロッシーニが語った言葉の引用らしいのですが・・・)茶化したりもしました。しかし、すべきことは全て終えて、悠々自適の農耕生活をおくっていたヴェルディがその生涯の失敗を取り返すかのように誰にも気づかれずに取り組んだのがこの「ファルスタッフ」でした。

原作はシェークスピアの「ウィンザーの陽気な女房」です。一般的には初期の「マクベス」、音楽によるドラマの究極形とも言うべき「オテロ」、そしてこの最後の天国的とも言うべき「ファルスタッフ」の3作をシェークスピア3部作とよんでいます。
ヴェルディは己の身を削るようにオペラを作曲してきました。
彼の作品が人間が持っているあらゆる強さや弱さ、醜さや偉大さにあふれていると言うことは、それは同時に彼自身を傷つけずにはすまなかったはずです。まさに創作とは己の命を削る行為だったはずです。そんなヴェルディがその生涯の最後に、自分とは全く180度も違う快楽主義者のファルスタッフを取り上げて、その自由気ままなな生き方を心の底から羨ましがっていることに驚かされます。「名誉で飯が食えるか」と怒鳴りつけるファルスタッフにきっとヴェルディ自身も快哉をを叫んだことでしょう。
そして、オペラの最後にファルスタッフの音頭で「世の中は全て冗談」と歌い出した歌が壮大なフーガとなって締めくくられる時、そこに老境に達したヴェルディの人生観がにじみ出ているように思えます。
まさにヴェルディの偉大な創作を締めくくるに相応しい作品です。

<物語の登場人物>
サー・ジョン・ファルスタッフ(太った騎士):バリトン
フォード(裕福な男性):バリトン
アリーチェ・フォード(その妻):ソプラノ
ナンネッタ(その娘):ソプラノ
メグ・ペイジ:メゾソプラノ
クイックリー夫人:メゾソプラノ
フェントン(ナンネッタの求婚者のひとり):テノール
ドクター・カイウス:テノール
バルドルフォ(ファルスタッフの従者):テノール
ピストーラ(ファルスタッフの従者):バス
<物語のあらすじ>
第1幕
第1場:居酒屋<ガーター亭>の内部

 太鼓腹の老騎士ファルスタッフは、2人の従者バルドルフォとピストーラとともに、いつものようにガーター亭でとぐろを巻いている。そんなファルスタッフのもとに医師のカイウスが飛び込んできて彼らの悪行をなじります。二人の従者に酒を飲まされて金を盗まれたというのです。しかし、そんなことには全く取り合おうともしないファルスタッフの態度にカイウスは捨て台詞を残して去っていきます。
ファルスタッフは二人の従者に「盗みをするならもっと優雅にやれ」と注意をします。そして、金に困っていたファルスタッフは金持ちの夫人二人に目をつけて逢い引きの手紙を書き、二人の従者に届けさせようとします。しかし、二人の従者は名誉を盾にその仕事を断ると、ファルスタッフは「名誉だと!名誉で腹がいっぱいになるか!」と怒鳴りつけて二人の従者を追い出してしまいます。
 まさに、ファルスタッフという人間の生き様が実に鮮やかに提示される幕開けです。

第2場:フォード家の庭園

 手紙を受け取った2人の夫人はお互いの文面を読みあって全く同じ内容であることに呆れます。
「同じ文句」「同じインク」「同じ筆跡」「同じ紋」、そしてこの上もなく美しいメロディに乗せて二人は恋文を交互に読み上げていきます。読み終わった女たちは「あの飲んだくれの太鼓腹に復讐を」とおしゃべりを始めるのですが、その4重唱は女たちのおしゃべりの雰囲気をこの上もなく見事に表現しています。
 さらに、ファルスタッフの二人の従者も一儲けを企んでこの事をフォードにたれ込み、男たちは男たちでファルスタッフへの復讐を計画します。この男と女の復讐の企みの合間に二人の若者、ナンネッタとフェントンの逢い引きがまるでネコがじゃれ合うように展開されます。
 この部分はオペラにおけるアンサンブルの素晴らしさが遺憾なく発揮されている場面です。

第2幕
第1場:居酒屋<ガーター亭>の内部

 いつものようにファルスタッフが酒を飲んでいると、クィックリー夫人がご免くださいませと時代がかった様子でやってきて「アリーチェがかわいそう」と話し始める。さらに「女殺しの色男」と持ち上げて2時から3時の間にあなたを待っていると告げます。あまりの展開に気をよくしたファルスタッフはクィックリー夫人に駄賃まで渡し、「いけ、年老いたジョン!」と歌い出します。
 そこへまた、フォードがフォンターナとという金持ち商人になりすましてやってきます。彼はアリーチェへの思いを打ち明け、ファルスタッフに彼女を誘惑してくれるように頼みます。そうすれば、貞操堅固な彼女も陥落させやすいと言うのです。金を受け取ったファルスタッフはこの上もなく上機嫌できらびやかに着飾り、この二人は連れだって出かけていきます。。 

第2場:フォード家の客間

 クィックリー夫人は笑いをこらえながらファルスタッフが罠にかかったことを女たちに伝えます。そこへナンネッタが泣きながら入ってきます。理由を聞くと父親から医師のカイウスとの結婚を言われたというのです。その話に女対は猛反対しナンネッタを元気づけると、やがて彼女もファルスタッフのための茶番劇の舞台設定に加わります。
 女たちは屏風と洗濯篭を企みの小道具として用意し、洗濯篭にファルスタッフを詰め込んでテムズ川に投げ込もうというのです。何も知らないファルスタッフは上機嫌であらわれてアリーチェを口説き始めると、打合せ通りクィックリー夫人があわてて入って来てメグが来たことをと告げます。あわてたファルスタッフは用意されていた屏風の後ろに隠れる、メグは芝居気たっぷりにフォードがアリーチェの浮気相手を打のめすために今ここへ帰って来ると告げます。ところが、事態は思わぬ方向に展開していき、妻が本当に裏切ったのではないかと疑心暗鬼に陥ったフォードが手下を連れて乗り込んできたのです。
 興奮したフォードがフェントンとカイウス、そしてファルスタッフの2人従者を引き連れて現れ、部屋の中のあちこちを本気でファルスタッフを探し回ります。
 そんな大騒ぎの中でファルスタッフは洗濯篭の中に入れられ、フェントンとナンネッタの2人はこの大騒ぎを絶好の好機とばかりに屏風の後ろでキスを始めます。フォードがファルスタッフはここだとばかり狙いを定めて屏風を開けるとあらわれたのは若い2人の恋人!
 しかしその隙にファルスタッフは予定素降りに洗濯篭ごとテムズ川にほおり込まれます。

第3幕
第1場:ガーター亭に面した広場

 散々な目にあったファルスタッフは不機嫌この上もないという様子で濡れた体を夕陽でかわかしています。口をついて出てくるのは「泥棒の世界、悪党だらけ」という愚痴ばかりです。しかし、熱い葡萄酒を飲んでいるうちに機嫌も良くなっておくのですが、子の酔いがまわっていく雰囲気をオケで表現するヴェルディの手際は実に見事です。
 すると、そこへクイックリー夫人がやって来て、午後の手違いを丁重に侘びながらアリーチェの手紙を渡しますそこには、「真夜中に王立公園のハーンの樫の木の所へ、黒の狩人の衣装でおいでください」と書かれています。
 物陰でその様子を見ていたメンバーたちはファルスタッフを罠に陥れるためには夜の仮装大会の役割分担をはじめます。そんなざわめきの中でフォードとカイウスがナンネッタとの結婚のことを密談しているところをクイックリー夫人に気づかれてしまいます。やがてそれぞれがそれぞれの思いをもちながら陽気にその場を去っていきます。

第2場:夜のウィンザー公園

 いよいよ夜の仮装大会が始まります。それぞれの登場人物がそれぞれの思惑をもってのどたばた喜劇の始まりです。誰が何に仮装し、誰と誰が入れ替わるかなどは書き始めると煩わしいだけですし、そんなことが分からなくても音楽の素晴らしさは十分に堪能できます。
 ただ、妖精の女王を見ると死ぬという言い伝えは知っておいた方がいいかもしれません。エウローパを誘惑するために雄牛なったジュピターの仮装をしているファルスタッフが妖精の女王を見ておびえるのはそのためです。そして、それをきっかけにファルスタッフは仮装した人々にこっぴどくやっつけられることになります。
 それにしても、ナンネッタが「夏のそよ風に乗って妖精たちよ駆け回れ」と歌って始まるこの場面の何と幻想的なことか。
 この騒ぎが一段落して、フォードが一組の結婚式でフィナーレにしようと呼びかけると、アリーチェもまたもう一組の結婚式もというので、二組同時に祝福の儀式が行われます。ところが、カイウスがナンネッタだと信じてヴェールを取った相手がなんとバルドルフィで、もう一組のカップルがナンネッタとフェントンであることが分かります。出し抜かれたことに気づいたフォードは怒り狂いますが、ファルスタッフに「恥をかいたのは誰ですかね」と言われて自らの敗北を認めます。
 そして最後に、ファルスタッフの音頭で一同は「世の中は全て冗談」と歌い始めます。
 「世の中は全て冗談。人はふざけるために生まれた。誠実もあやふや。理性もあやふや」と歌うファルスタッフの台詞を次々に歌い継いでいきます。「私はフーガを書いています。それは、フーガ・ブッファなのです」と書いたヴェルディのうれしそうな顔が浮かぶような大団円です。10人のソロと混声合唱によって壮大に締めくくられる「世の中は全て冗談」!!まさに老いたるヴェルディの最後を締めくくるのに相応しい音楽です。

おそらくは、ファルスタッフ最高の演奏


 このトスカニーニによる録音はこの作品の古典的名演であることは間違いありません。しかし、この録音がなされてから半世紀以上が経過するのですが、はたしてこれを上回る演奏がその後なされただろうかと問われれば、正直言って返答につまります。
 おそらくは、このトスカニーニによる演奏は、考えられる限りの完璧性に貫かれています。トスカニーニはオペラにおける演奏の恣意性に対してその生涯をかけて闘ってきました。楽譜に忠実という時には大きな誤解を生んだ彼のポリシーも、基本的には作曲家への献身から生まれたものでした。
 この録音においても、歌手たちは全てトスカニーニの厳格なコントロール下に置かれていることがすぐに分かります。リズムにおいてもフレージングにおいても全てがトスカニーニのコントロールされています。しかし、その結果として演奏がせせこましくなったり、息苦しくなったりはしていません。それどころか、これ以上はないと言うほどの男性的な活力に満ちあふれています。コノファルスタッフという快楽主義者がもつ男性的なエネルギー感がものの見事に描き出されています。
 おそらくは、録音の問題も考えれば、これこそがトスカニーニが残した最高のオペラ録音だと言い切ってもいいでしょう。

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