Home|
セル(George Szell)|ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1955年10月19〜21日録音
Brahms:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
変奏曲という形式にける最高傑作の一つ

これが、オーケストラによる変奏曲と括りを小さくすれば、間違いなくこの作品が最高傑作です。
「One of The Best」ではなく「The Best」であることに異論を差しはさむ人は少ないでしょう。
あまり知られていませんが、この変奏曲には「オーケストラ版」以外に「2台のピアノによる版」もあります。最初にピアノ版が作曲され、その後にオーケストラ版が作られたのだろうと思いますが、時期的にはほとんど同時に作曲されています。(ブラームスの作品は交響曲でもピアノのスコアが透けて見えるといわれるほどですから・・・)
しかし、ピアノ版が評判となって、その後にオーケストラ版が作られた、という「よくあるケース」とは違います。作品番号も、オーケストラ版が「Op.56a」で、ピアノ版が「Op.56b」ですから、ほとんど一体のものとして作曲されたと言えます。
この作品が作曲されたのはブラームスが40歳を迎えた1873年です。
この前年にウィーン楽友協会の芸術監督に就任したブラームスは、付属している図書館の司書から興味深いハイドンの楽譜を見せられます。野外での合奏用に書かれた音楽で「賛美歌(コラール)聖アントニー」と言う作品です。
この作品の主題がすっかり気に入ったブラームスは夏の休暇を使って一気に書き上げたと言われています。
しかし、最近の研究では、この旋律はハイドン自身が作曲したのではなく、おそらくは古くからある賛美歌の主題を引用したのだろうと言われています。
それが事実だとすると、、この旋律はハイドン、ブラームスと二人の偉大な音楽家を魅了したわけです。
確かに、この冒頭の主題はいつ聞いても魅力的で、一度聞けば絶対に忘れられません。
参考までに全体の構成を紹介しておきます。
主題 アンダンテ
第1変奏 ポコ・ピウ・アニマート
第2変奏 ピウ・ヴィヴァーチェ
第3変奏 コン・モート
第4変奏 アンダンテ・コン・モート
第5変奏 ヴィヴァーチェ
第6変奏 ヴィヴァーチェ
第7変奏 グラツィオーソ
第8変奏 プレスト・ノン・トロッポ
終曲 アンダンテ
冒頭の魅力的な主題が様々な試練を経て(?)、最後に堂々たる姿で回帰して大団円を迎えると言う形式はまさに変奏曲のお手本とも言うべき見事さです。
アンサンブルの鬼
セルはこの作品をモノラルとステレオで2回録音しています。ここで紹介しているのは当然のことながら古い方のモノラル録音ですが、この2つの録音は雰囲気が微妙に異なります。
それは、ステレオ録音の方がセル&クリーブランドというコンビが完成期に入った頃の録音だったために、演奏そのものにどこか余裕のようなものがただよっているのに対して、こちらのモノラルの方は何とも言えないゴリゴリした雰囲気がただよっています。
おそらく、演奏の完成度という点では間違いなくステレオ録音の方に軍配が上がるのでしょうが、高みを目指して必死の奮闘を展開しているモノラル録音にはどこか人の心を魅了する潔さが感じられます。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
802 Rating: 5.5/10 (255 votes cast)
よせられたコメント
2009-05-27:Sammy
- 一つ一つの楽器がしっかりと立ち上がり、そして全体が高い凝集力で結ばれている、そういう演奏のスタイルが、この作品の変奏曲としての展開をくっきり明らかにしているように思いました。
2012-12-29:ヨハネス
- 実によく練られた作品だと思います。でも正直、主題の部分と最後の変奏以外は技術が先行してはいるが心に響かないように思うことがあります。「こんなに手の込んだことをしてるんだぞ」と示しているけど思ったより感動がないと言うか技巧に終わっている気もします。私の聴き方の未熟でしょうか…。しかしよく聴けば管弦楽の変奏曲としては一級の作品でしょう。いつもの4つの交響曲に少々胃もたれがちのときはふと聴きたくなります。セルの演奏は非の打ち所がありません。
【最近の更新(10件)】
[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)
[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-03-21]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125(Schubert:Symphony No.2 in B-flat major, D.125)
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1949年12月20日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 20, 1949)
[2025-03-17]

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)
[2025-03-15]

リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 ,Op.18(Richard Strauss:Violin Sonata in E flat major, Op.18)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)グスタフ・ベッカー 1939年録音(Ginette Neveu:(P)Gustav Becker Recorded on 1939)
[2025-03-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589(プロシャ王第2番)(Mozart:String Quartet No.22 in B-flat major, K.589 "Prussian No.2")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-03-09]

ショパン:ノクターン Op.27&Op.37(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
[2025-03-07]

モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調「リンツ」 K.425(Mozart:Symphony No.36 in C major, K.425)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)
[2025-03-03]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月8日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 8, 1945)
[2025-02-27]

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調(Debussy:Sonata for Violin and Piano in G minor)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ジャン・ヌヴー 1948年録音(Ginette Neveu:(P)Jean Neveu Recorded on 1948)