クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ケンペン(Paul van Kempen)|チャイコフスキー:交響曲第5番

チャイコフスキー:交響曲第5番

ケンペン指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1951年12月録音



Tchaikovsky:交響曲第5番 「第1楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番 「第2楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番 「第3楽章」

Tchaikovsky:交響曲第5番 「第4楽章」


何故か今ひとつ評価が低いのですが・・・

チャイコフスキーの後期交響曲というと4・5・6番になるのですが、なぜかこの5番は評価が今ひとつ高くないようです。

 4番が持っているある種の激情と6番が持つ深い憂愁。その中間にたつ5番がどこか「中途半端」というわけでしょうか。それから、この最終楽章を表面的効果に終始した音楽、「虚構に続く虚構。すべては虚構」と一部の識者に評されたことも無視できない影響力を持ったのかもしれません。また、作者自身も自分の指揮による初演のあとに「この作品にはこしらえものの不誠実さがある」と語るなど、どうも風向きがよくありません。
 ただ、作曲者自身の思いとは別に一般的には大変好意的に受け入れられ、その様子を見てチャイコフスキー自身も自信を取り戻したことは事実のようです。

 さてユング君はそれではどう思っているの?と聞かれれば「結構好きな作品です!」と明るく答えてしまいます。チャイコフスキーの「聞かせる技術」はやはり大したものです。確かに最終楽章は金管パートの人には重労働かもしれませんが、聞いている方にとっては実に爽快です。第2楽章のメランコリックな雰囲気も程良くスパイスが利いているし、第3楽章にワルツ形式を持ってきたのも面白い試みです。
 そして第1楽章はソナタ形式の音楽としては実に立派な音楽として響きます。
 確かに4番と比べるとある種の弱さというか、説得力のなさみたいなものも感じますが、同時代の民族主義的的な作曲家たちと比べると、そういう聞かせ上手な点については頭一つ抜けていると言わざるを得ません。
 いかがなものでしょうか?


チャイコフスキー指揮者ととしての面目躍如の演奏

ケンペンは、20世紀前半におけるオランダの音楽界を代表した3人の一人といえます。
他の二人は言うまでもないことですが、メンゲルベルグとベイヌムです。ただし、メンゲルベルグとベイヌムはあくまでもオランダを活動の拠点にしていたのに対して、ケンペンはドイツを活動の本拠にしていました。その事が、ケンペンの芸風に大きな影響を与えたように思えます。
メンゲルベルグの濃厚なロマンティシズムとも、ベイヌムの近代的な見通しのよい演奏とも異なる、重厚で剛直な演奏が持ち味の人でした。

ケンペンは1893年にライデン近郊の町で生まれ、早くからヴァイオリンに親しんでいました。その才能は早熟で、17才で早くもコンセルトヘボウの一員としてむかえられています。しかし、その後どのような事情があったのかはよく分かりませんが、20代の前半で活動の拠点をドイツのオケに移します。各地の地方オケでコンサートマスターを歴任したあとに、1932年にはオーバーハウゼンで指揮者としてのデビューを飾り、ついには34年にドレスデンフィルの指揮者にむかえられます。その後は、ベルリンのオペラにも招かれ、42年にはカラヤンの後任としてアーヘンの指揮者に招かれます。
しかし、ナチス政権下におけるこのようなキャリアアップは戦後の戦犯容疑者のリストに名前が連なることとなり、メンゲルベルグやフルトヴェングラーと同じく指揮活動が制限されることになってしまいます。その制限が解除されるのは49年であり、さらにドイツでの活動が再開されるのは53年からになります。
ですから、ここでの録音はようやくにして制限は解除されたものの活動の範囲がオランダに限定されていた時代のものです。

ケンペンと言えば一般的にはベートーベンやブルックナーなどのいわゆるドイツ正統派の作品演奏に定評のある人でした。重厚であるとともに剛直さを失わないその演奏は、月並みな言い方で申し訳ないのですが、ドイツ人以上にドイツ的なゲルマン的ガッツにあふれたものでした。ですから、そのような作品を演奏するにはピッタリの資質だったといえます。
しかし、それと同時にチャイコフスキーの演奏においても高い評価を受けていました。それは、想像すれば分かるとおりに、ロマンティックな感情を前面に出したようなメンゲルベルグなどとは全く異なる、ガッチリとした構造の背後から次第次第に熱いものがこみ上げてくると言う性質のものです。その中でも、この51年に録音された第5番や第6番「悲愴」はケンペンのチャイコ振りとしての美質が最もよくあらわれたものです。
是非とも一度お聞きあれ!!

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



723 Rating: 6.6/10 (328 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2008-05-25:ケンプ、ケンペン、ケンペ


2009-12-20:Ohtaro


2009-12-21:Ohtaro


2024-08-03:ken1945





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-09-06]

バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-04]

レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)

[2025-09-01]

フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-08-30]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)

[2025-08-28]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)

[2025-08-26]

フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)

[2025-08-24]

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ヘ長調 BWV.540(J.S.Bach:Toccata and Fugue in F major, BWV 540)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-08-22]

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(Debussy:Prelude a l'apres-midi d'un faune)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:London Festival Orchestra Recorded on 1960)

[2025-08-20]

エルガー:行進曲「威風堂々」第5番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 5 in C Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-08-18]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)