Home|
ナット(Yves Nat)|ショパン:幻想曲 ヘ短調, Op.49
ショパン:幻想曲 ヘ短調, Op.49
(P)イヴ・ナット:1953年3月6日録音
Chopin:幻想曲 へ短調 Op.49
ジョルジュ・サンドとの喧嘩と仲直りを描いたものと言われています。

冒頭のメロディを聴けば日本人ならばほとんどが「おやっ?」と思うはずです。中田喜直のあまりにも有名な「雪の降る町を」の冒頭のメロディとそっくりだからです。しかし、これは明らかに順番が逆なのであって、「雪の降る町を」のメロディがこの幻想曲の冒頭のメロディにそっくりなのです。
「雪の降る町を」の初出は1951年にNHKラジオで放送された連続放送劇「えり子とともに」の挿入歌としてでした。初回放送前日に時間が余ることが分かり、その時間を埋めるべく急拵えで制作されたものらしいので、時間がなかったためにこのショパンのメロディをモチーフとして制作したらしいのです。
さて、もう一つ、これもよく知られた話ですが、この作品はジョルジュ・サンドとの喧嘩と仲直りを描いたものと言われています。確かに、この日本人にとってはあまりにも有名にこのメロディはサンドとの不和を表すと言われれば「なるほどそうかな!」と思わせるものがあります。しかし、その後は「これぞショパン!!」と喝采をおくりたくなるほどの華麗で華やかなピアノの技巧が展開されます。
ニークスという偉い評論家(「フレデリック・ショパン~人および音楽家としての~」という本なんかを書いた人です)は「ショパンの天才がその発展の最高段階に到達したときであった」と語っています。そして、この作品は「ソナタやコンチェルトのような確定した形式構想によって妨げられず、作曲家が彼の想念を完全な自由さで展開しているのである。音楽は、心臓のなかまで激した人間の抑制しがたい吐露のように、はかりしれない愛情と憧憬に満ち充満して、われわれの耳に伝わってくる。」と述べています。
舟歌と並んで、気力に満ち満ちた時代のショパンを代表する作品です。
演奏よりは教育に力を注いだ人だったようです。
ベートーベンのピアノソナタと言えばクラシック音楽界で「売れ筋」ですから、一頃は廉価版と言えばシュナーベルかこのナットのものぐらいでした。ですから、よくシュナーベルとナットではどちらが上か?みたいな今から思えば不毛な論議もよくあったような記憶があります。しかし、ソフトの媒体がLPからCDにうつるにつれて様々な廉価版が市場を賑わすようになり、気がつけばいつの間にかシュナーベルもナットも店頭ではあまり見かけなくなりました。しかし、昨年、ナットの没後50年という事もあってかまとまった録音がリリースされました。(だからパブリックドメインということは大切なのです。)
正直言ってナットという人はユング君にとってはそれほどなじみのあるピアニストではありません。ベートーベンのピアノソナタぐらいしか聴いたことがなかったのですが、その時は。華やかなテクニックや演奏効果を狙うのではなくて、一音一音をとても大切にした誠実な演奏をする人だという印象があったものです。その後、このナットという人は演奏活動よりは母校パリ音楽院での教育活動に全力を尽くした人だったことを知り、その様な印象を持ったことに納得したものでした。
このショパンの演奏も、ある意味では「不器用」と言えるほどに愚直に一音一音をガッチリと演奏しています。最初は違和感を感じるほどの「ゴッツイ」感じのする演奏なのですが、それこそがナットという人の音楽なのでしょう。スマートでスタイリッシュなショパン演奏が全盛の今にあって、これはこれでインパクトのあるショパン像です。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
707 Rating: 5.1/10 (227 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-12-06]

ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)
(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)
[2025-12-04]

フォーレ:夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(Faure:Nocturne No.7 in C-sharp minor, Op.74)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-12-02]

ハイドン:弦楽四重奏曲第32番 ハ長調, Op.20, No.2, Hob.3:32(Haydn:String Quartet No.32 in C major, Op.20, No.2, Hob.3:32)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)
[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)
[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)
[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)
[2025-11-24]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番変ホ長調, Op.127(Beethoven:String Quartet No.12 in E Flat major Op.127)
ハリウッド弦楽四重奏団:1957年3月23日,31日&4月6日&20日録音(The Hollywood String Quartet:Recorded on March 23, 31 & April 6, 20, 1957)
[2025-11-21]

ハイドン:弦楽四重奏曲第31番 変ホ長調, Op.20, No1, Hob.3:31(Haydn]String Quartet No.31 in E flat major, Op.20, No1, Hob.3:31)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June l5, 1938)
[2025-11-19]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」 ハ長調 Op.53(eethoven:Piano Sonata No.21 in C major, Op.53 "Waldstein")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1956年3月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on March, 1956)
[2025-11-17]

フォーレ:夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(Faure:Nocturne No.6 in D-flat major, Op.63)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)