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ベートーベン:ピアノソナタ第27番

(P)バックハウス 1954年1月録音



Beethoven:ピアノソナタ第27番 「第1楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第27番 「第2楽章」


人生におけるもっとも困難な時期の作品

社会的な名声の高まりと、それとは裏腹な創作力の衰え。さらに私生活における様々な困難や最後に望みを託した結婚への試みの失敗、それに伴う深い絶望感。

まさにベートーベンの人生におけるもっとも困難な時期に生み出されたのがこのピアノソナタです。
確かにワルトシュタインや熱情に代表されるような中期様式のソナタとは全く異なった作品となっていますが、後期様式の深みにも到達していません。
ある意味では中途半端な存在ですが、そこにこそこの時期のベートーベンのスランプの一端がうかがえます。

また弟子のシンドラーの質問に対して、「第1楽章は理性と感情の争い、第2楽章は恋人の会話」と語ったと伝えられていますが、これもどこまで真意であったかは疑問です。おそらくはあまりのしつこさに適当に答えたというのが真相でしょう。

ピアノソナタ27番 Op.90 ホ短調

第1楽章(速く、そして終始感情と表情を持って)
 ホ短調 4分の3拍子 ソナタ形式
第2楽章(速すぎないように、そして、十分に歌うように演奏すること)
 ホ長調 4分の2拍子 ロンド
実に叙情的で歌心にあふれた音楽。後期様式への入り口が開きかけていることがうかがえる楽章です。


バックハウス全盛期の演奏

バックハウスはモノラルの時代とステレオの時代にそれぞれ全集を録音しています。(ただし、29番「ハンマークラヴィーア」のみはステレオでの再録音がされなかったのでモノラル時代の録音が流用されています)
以前は随分と高価なボックスだったように記憶しているのですが、最近はどのような仕掛けがあるのか分かりませんが、イタリア・ユニーバーサルからかなり安価な値段で供給されるようになりました。

ところが、面白いのが、音質的には劣るモノラル録音の方がステレオ録音よりも高く値段が設定されていることです。
この手のものはお店によって価格設定が変わることが多いのですが、私がよく利用しているお店では

モノラル録音が10000円
ステレオ録音が6900円

に設定されています。
こういう古い録音は最終的には需要と供給の関係で決まるようですから、多くの人が音質的には劣ることは分かっているのにモノラル録音を求めることをこの事実は示しています。
理由はいうまでもありません、演奏そのものが圧倒的にモノラル録音の方が優れているからです。

日本では何故かシルバーシート優先で老大家の枯れた演奏を持ち上げる習慣があるのですが、いうまでもなく、その様な「枯れた演奏」よりは脂ののりきった全盛期の演奏の方が優れていることが多いのは自明の理です。とりわけ、この23番のような覇気満々たる作品であるならばそのアドバンテージは絶対的です。
ステレオ録音によるバックハウスしか聞いたことがない人には是非とも一度は聞いてもらいたい演奏です。

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