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ベートーベン:交響曲第5番「運命」 ハ短調 作品67

エーリッヒ・クライバー指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1953年9月録音




極限まで無駄をそぎ落とした音楽

今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。

交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。

この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803〜4年にかけて創作されています。)

しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。

そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。

その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。

それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)

それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。

エーリッヒは凄かった・・・冷や汗が出ました。


以前、ユング君はエーリッヒに関して次のように書いたことがあります。

「今では「カルロス・クライバーのお父さん」と言う方が通りがよくなってしまったエーリッヒです。カルロスがデビューした頃は、「あのエーリッヒの息子」として紹介されたことを思えば隔世の感です。」

さらに、これに続けてこんな事まで書きました。

「ここで聞けるエーリッヒの演奏は(注:リスト:交響詩「プレリュード」 エーリッヒ・クライバー指揮 チェコ・フィル 1936年録音)、1954年にフルトヴェングラーが残した演奏を聞いたものにとってはやはり物足りなさを感じます。しかし、それはエーリッヒの演奏が不十分だというのではなくて、フルトヴェングラーがすごすぎるのです。同じように、息子との立場の逆転も、エーリッヒが「それほどの存在」ではなかったからではなくて、クライバーがすごくなりすぎたからです。」

うーん、かえすがえすも阿呆なことを書いてしまった。"/(;-_-) イテテ・・・
今回、この「運命」の録音を聞いて、その演奏の素晴らしさにのけぞりながらも、昔書いたこの文章を思い出して冷や汗が流れてしまいました。

何というスピード感!!それでいながら音楽の隅々までエネルギー感が満ちあふれています。そして、何よりも凄いのがこれほどのスピード感あふれる演奏を展開しながら、キリリとした造形感覚が全く崩れないことです。
そして、これを聞いて、あの天才クライバーがなぜに父エーリッヒの影をおそれたか、その理由が初めて理解できました。

これを聞けば、どんなに鈍感な人間でも、クライバーのあの素晴らしい演奏の原点がここにあることを理解するでしょう。上で述べた褒め言葉は、息子のクライバーの演奏に対する褒め言葉とほとんど同じです。しかし、この両者には決定的な違いがあります。
クライバーはコンサートで取り上げる作品を極端に絞り込み、その限られたレパートリーの中で父エーリッヒに劣らないほどの完成度の高い演奏を展開したのに対して、エーリッヒは膨大なレパートリーを持ち、そのほとんどの作品で高い完成度を維持していたのです。
確かに、限定されたクライバーのレパートリーの中で勝負をすれば、息子の方に軍配が上がるかもしれませんが、その違いもこの「運命」を聞く限りでは、こちらに軍配を上げる人が出ても不思議ではないと言うほどの微差です。

可哀想なクライバー。
おそらく彼は誰よりも父の偉大さを知っていたでしょう。そして、その偉大な父に恥じることがないと確信できるまで己のレパートリーに追加しようとしなかったのでしょう。そして、世間の人が彼を褒めそやし、ユング君のような阿呆が「クライバーはエーリッヒを追い抜いた」などと語る言葉を苦々しくも悲しく見つめていたのかもしれません。

エーリッヒの凄さはこの演奏を聞いただけで十分に理解できます。
偉い父親を持つと言うことは、息子にとっては本当に大変なことです。

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