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Home|ワルター・バリリ(Walter Barylli)|モーツァルト:ヴァイオリンソナタ K377 ヘ長調

モーツァルト:ヴァイオリンソナタ K377 ヘ長調

(Vn)バリリ (P)スコダ 1952年録音



Mozart:ヴァイオリンソナタ K377 ヘ長調 「第1楽章」

Mozart:ヴァイオリンソナタ K377 ヘ長調 「第2楽章」

Mozart:ヴァイオリンソナタ K377 ヘ長調 「第3楽章」


モーツァルトのヴァイオリンソナタの概要

私がよく利用させてもらっているThe Mozart Projectでは、モーツァルトのヴァイオリンソナタとして以下の作品がまとめられています。これだけ膨大な作品群になると、作曲年代やその作品の様式などをもとにグルーピングしていかないと、それぞれの作品と向き合っていく上での己のポジションを見失ってしまいます。

K1K6CompositionDatePlace
66Sonata in C for Keyboard and Violin1762-64Salzburg or Paris
77Sonata in D for Keyboard and Violin1762-64Salzburg or Paris
88Sonata in B flat for Keyboard and Violin1763-64Paris
99Sonata in G for Keyboard and Violin1763-64Paris
1010Sonata in B flat for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
1111Sonata in G for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
1212Sonata in A for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
1313Sonata in F for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
1414Sonata in C for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
1515Sonata in B flat for Harpsichord, Violin (Flute) and Cello1764London
2626Sonata in E flat for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
2727Sonata in G for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
2828Sonata in C for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
2929Sonata in D for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
3030Sonata in F for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
3131Sonata in B flat for Keyboard and ViolinFebruary 1766The Hague
301293aSonata in G for Violin and KeyboardEarly 1778Mannheim
302293bSonata in E flat for Violin and KeyboardEarly 1778Mannheim
303293cSonata in C for Violin and KeyboardEarly 1778Mannheim
305293dSonata in A for Violin and KeyboardEarly 1778Mannheim
296296Sonata for Violin and Keyboard in CMarch 11, 1778Mannheim
304300cSonata in E minor for Violin and KeyboardEarly summer 1778Paris
306300lSonata in D for Violin and KeyboardSummer 1778Paris
378317dSonata in B flat for Violin and KeyboardEarly 1779 or 1781Salzburg or Vienna
372372Allegro in B flat for Keyboard and ViolinMarch 24, 1781Vienna
379373aSonata in G for Violin and KeyboardApril 1781Vienna
359374a12 Variations in G on "La Bergere Celimene"June 1781Vienna
360374b6 Variations in G on "Helas, j'ai perdu"June 1781Vienna
376374dSonata in F for Violin and KeyboardSummer 1781Vienna
377374eSonata in F for Violin and KeyboardSummer 1781Vienna
380374fSonata in E flat for Violin and KeyboardSummer 1781Vienna
454454Sonata in B flat for Keyboard and Violin, "Strinasacchi"April 21, 1784Vienna
481481Sonata in E flat for Violin and KeyboardDec. 12, 1785Vienna
526526Sonata in A for Violin and KeyboardAug. 24, 1787Vienna
547547Sonata in F for Violin and KeyboardJuly 10, 1788Vienna
Keyboard and Violin


<子ども時代の作品:K6・7、K8・K9、K10〜K15、K26〜K31>
作曲年代からも明らかなように、K6〜K31の16の作品がこのグループに入ります。神童モーツァルトがレオポルドに連れられてヨーロッパ各地を演奏旅行した中で作曲された作品であり、さらに作曲された場所や年代から、K6・7、K8・K9、K10〜K15、K26〜K31の4グループに分かれることは明らかです。
この時代のモーツァルトは演奏会においてその才能のきらめきを数々の即興演奏という形で披露しました。しかし、ピアノソナタの項でも述べたことですが、それらは、書き記されなければその場限りのものとして消え去ってしまいました。
子ども時代のモーツァルトの作品が後世に残ったのは、何らかの形で「書き残す」必要があったときか、もしくは父レオポルドが何らかの理由でその演奏を書き残したときに限られます。そして、この子ども時代のヴァイオリンソナタが後世に残ったのは、これらの作品群が「神童モーツァルト」の作品番号1として出版されたからです。

アインシュタインはこれらの作品群のことを「少年の音楽的発展を見るにはこのうえもなく興味をひくものである」といいながらも「伴奏ヴァイオリンを伴うピアノ用の練習ソナタ」にしかすぎないと断言しています。

<マンハイム・ソナタ:作品番号1のK301〜K306と愛らしいピエロンに捧げられたK296>
モーツァルトが本当の意味でヴァイオリンソナタの作曲に着手するのは就職先を求めて母と一緒にマンハイムからパリへと旅行したときです。このとき、モーツァルトはマンハイムにおいてシュスターという人物が作曲した6曲のヴァイオリンソナタに出会います。モーツァルトはこのときの感想を姉のナンネルに書き送ってます。
「・・・わたしはこれらを、この地ですでに何度も弾きました。悪くありません。・・・」
「悪くありません。」・・・この一言がモーツァルトから発せられるとは何という賛辞!!

残念なことに、モーツァルトを感心させたシュスターの作品がどのようなものかは現在に伝わっていません。しかし、それらの作品が、従来のピアノが「主」でヴァイオリンが「従」であるという慣例を打ち破り、その両者が「主従」の関係を交替しながら音楽を作り上げていくという「交替の原理」にもとづくものであったことは間違いありません。
モーツァルトは旅費を工面するために引き受けたド・ジャンからのフルート作品の作曲にうんざりしながら、その合間を縫ってヴァイオリンソナタを作曲します。このうちの5曲(K301・K302・K303・K305・K296)はマンハイムで完成し、残りの2曲(K304、K306)はパリへ移動してから完成されたと言われています。そして、K301〜K306の6曲はプファルツの選帝候妃に作品番号1として、そしてK296はマンハイムで世話になった宿の主人の愛らしい娘、テレーゼ・ピエロンに捧げられています。
私たちが、モーツァルトのヴァイオリンソナタとしてよく耳にするのはこれ以降の作品です。

モーツァルトは選帝候妃に捧げた作品番号1の6曲について、明確に「ピアノとヴァイオリンのための二重奏曲」と述べています。そして、あまりにも有名なホ短調ソナタを聴くときに、何かをきっかけとして一気に飛躍していくモーツァルトの姿を見いだすのです。
そこでは、ピアノとヴァイオリンはただ単に交替するだけでなく、この二つの楽器が密接に絡み合いながら人間の奥底に眠る深い感情を語り始めるのです。アインシュタインが指摘しているように、「やがてベートーベンが開くにいたる、あの不気味な戸口をたたいている」のです。
さらに、作品番号1の最後を飾るK306と愛らしいピエロンのためのK296は、当時のヴァイオリンソナタの通例を破って3楽章構成になっています。このK296は第2楽章がクリスティアン・バッハのアリア「甘いそよ風」による変奏曲になっていて、実に親しみやすい作品です。また、K306の方は、K304のホ短調ソナタとは打って変わって、華やかな演奏効果にあふれたコンチェルト・ソナタに仕上がっています。

<ザルツブルグからウィーンへ:K376〜K380>
モーツァルトはこの5曲と、マンハイムの美しい少女のために捧げたK296をセットにして作品番号2として出版しています。しかし、成立事情は微妙に異なります。
まず、K296に関してはすでに述べたように、マンハイムで作曲されたものです。
次に、K376〜K380の中で、K378だけはザルツブルグで作曲されたと思われます。この作品は、就職活動も実らず、さらにパリで母も失うという傷心の中で帰郷したあとに作曲されました。しかし、この作品にその様な傷心の影はみじんもありません。それよりも、青年モーツァルトの伸びやかな心がそのまま音楽になったような雰囲気が作品全体をおおっています。
そして、残りの4曲が、ザルツブルグと訣別し、ウィーンで独立した音楽家としてやっていこうと決意したモーツァルトが、作品の出版で一儲けをねらって作曲されたものです。
ただし、ここで注意が必要なのは、モーツァルトという人はそれ以後の「芸術的音楽家」とは違って、生活のために音楽を書いていたと言うことです。彼は、「永遠」のためにではなく「生活」のために音楽を書いたのです。「生活」のために音楽を書くのは卑しく、「永遠」のために音楽を書くことこそが「芸術家」に求められるようになるのはロマン派以降でしょう。ですから、一儲けのために作品を書くというのは、決して卑しいことでもなければ、ましてやそれによって作り出される作品の「価値」とは何の関係もないことなのです。

実際、ウィーンにおいて一儲けをねらって作曲されたこの4曲のヴァイオリンソナタは、モーツァルトのこのジャンルの作品の中では重要な位置を占めています。特に、K379のト長調ソナタの冒頭のアダージョや第2楽章の変奏曲(アインシュタインは「やや市民的で気楽すぎる変奏曲」と言っていますが・・・^^;)は一度聴いたら絶対に忘れられない魅力にあふれています。また、K377の第2楽章の変奏曲も深い感情に彩られて忘れられません。
ここでは、ヴィオリンとピアノは主従を入れ替えて交替で楽想を分担するだけでなく、二つの楽器はより親密に対話をかわすようになってます。これら4曲は、マンハイムのソナタよりは一歩先へと前進していることは明らかです。

<後期の三大ソナタ:K454、K481、K526>
「三大ソナタ」という呼び方は一般的ではありあせんが、モーツァルトのこのジャンルにおける最後の貢献としてこの3作品を指摘することができますから、あえてこのようなネーミングをしてみました。
この3作品は、K376〜K380のように、何らかの目的を持ってまとめて作曲されたわけではありません。

K454については、モーツァルトは父親に宛てた手紙でふれていますからその成立状況はよく分かっています。そして、それはモーツァルトの「天才伝説」を彩るエピソードの一つでもあります。
この作品は、当時ウィーンを訪れていたストリナサッキというヴァイオリニストのために作曲されたもので、それをモーツァルトとの競演で演奏しました。しかし、演奏会当日までにはヴァイオリンのパートしか楽譜が完成しなかったために、モーツァルトは白紙の楽譜を前にピアノを演奏したというのです。・・・恐るべし、モーツァルト!!

次のK481については成立事情に関しては何も分かっていません。おそらくは出版目的の小銭稼ぎだったと思われますが、これもまた作品の「価値」とは間の関係もない話です。
この作品の第1楽章には「ジュピター」のモチーフ「ドレファミ」が出てきます。モーツァルトはこのモチーフがよほど気に入っていたようで、彼の作品には何回も顔を出します。

そして、最後のK526は、おそらく「ドン・ジョヴァンニ」の作曲中に書かれたものと思われます。クロイツェル・ソナタの先駆けとも呼ばれるこの作品については、アインシュタインによる次の賛辞ほど相応しいものはありません。
「この曲においてモーツァルトはヴァイオリンソナタの分野でも完璧な《諸様式の調和》に到達し得ている。」「緩徐楽章では、あたかもすべての善人に生存の苦い甘みを味わわせようと、父なる神が世界の一瞬だけいっさいの運動を停止させたかのような、魂と芸術との均衡が達成されている。」

<その他:K359、K360、K547>
これらの作品は、おそらくは彼のピアノの弟子のために書かれたものだと思われます。K547はソナチネと題されているように初心者用の練習ソナタであり、アインシュタインも「まるで、パリかロンドンの時代の、彼の最初のヴァイオリンソナタに帰っているように見える」と述べています。


多くを語らずして・・・

バリリという人は生粋のウィーン子であり、10代の頃からその才能が評価されて演奏活動を展開しました。やがて、1938年、17才でウィーンフィルに入団するとその翌年にはコンサートマスターに就任しています。そして、1945年からはウィーンフィルのコンサートマスターの通例としてバリリ四重奏団を結成して活躍の場を広げます。
ちなみに、どうでもいい蘊蓄ですが、同時代にウィーンフィルのメンバーで結成された四重奏団としてウィーン・コンツェルトハウス四重奏団があるのですが、バリリの方が各パートのトップ奏者を集めたエリート集団であるのに対して、コンツェルトハウスの方は全員がトゥッティだったそうです。恐るべし、50年代のウィーンフィル!!

バリリの全盛期はおそらくこの二つのカルテットが競い合っていた50年代でしょう。オケのコンマスとしてはフルトヴェングラーの演奏を支え、カルテットのトップとしてもソリストとしても第1線で活躍した時代でした。
しかし、59年には右肘故障のためにカルテットは解散され、バリリ自身も引退を余儀なくされます。

さて、演奏の方ですが、これは文句なしに素晴らしいです。
こういう演奏を聴くと、古楽器による演奏がいかにつまらないものかを痛感させられます。あの古楽器演奏なるものを特徴づけるのは、「ノンヴィブラート奏法とかいう単調な音色」「セカセカしたテンポ」、そして何よりも許せないのが「過度に強弱をつけることからくる刺々しいまでの騒々しさ」です。
それらと比べると、バリリの演奏は何と自然で伸びやかなことでしょう。そして、これが不思議なことなのですが、そういうスタイルでありながら演奏に少しも「古さ」を感じさせないことです。それどころか、昨今のハイテク演奏ばかりきかされた耳にはかえって新鮮ですらあります。

また、50年代初頭のものとしては極上の部類にはいると思われる音質の良さは実に魅力的です。チェックしなければいけない人がまたまた増えてしまいました。♪〜θ(^0^ )( ^0^)θ~♪

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



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