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スカルラッティ:ソナタ集

カークパトリック 1954年録音



Scarlatti:ソナタ K3

Scarlatti:ソナタ K7

Scarlatti:ソナタ K16

Scarlatti:ソナタ K18

Scarlatti:ソナタ K28

Scarlatti:ソナタ K29

Scarlatti:ソナタ K46

Scarlatti:ソナタ K52

Scarlatti:ソナタ K54

Scarlatti:ソナタ K57

Scarlatti:ソナタ K84

Scarlatti:ソナタ K96

Scarlatti:ソナタ K105

Scarlatti:ソナタ K115&116

Scarlatti:ソナタ K119&120

Scarlatti:ソナタ K132&133

Scarlatti:ソナタ K140

Scarlatti:ソナタ K208&209

Scarlatti:ソナタ K215&216

Scarlatti:ソナタ K238&239

Scarlatti:ソナタ K259&260

Scarlatti:ソナタ K263&264

Scarlatti:ソナタ K308&309

Scarlatti:ソナタ K402&403

Scarlatti:ソナタ K420&421

Scarlatti:ソナタ K426&427

Scarlatti:ソナタ K460&461

Scarlatti:ソナタ K470&471

Scarlatti:ソナタ K490&491&492

Scarlatti:ソナタ K493&494

Scarlatti:ソナタ K516&517

Scarlatti:ソナタ K518&519

Scarlatti:ソナタ K544


近代的鍵盤楽器奏法の父

スカルラッティはほとんど独力で新しい鍵盤技法を作り出したと言われ、「近代的鍵盤楽器奏法の父」と呼ばれています。
彼はナポリで生まれた生粋のイタリア人であり、1715年には教皇庁のサン・ピエトロ大聖堂にあるジュリア礼拝堂の楽長と言うローマ・カトリックの音楽家としては最高の地位に上りつめています。ところが、1719年に突然その職を辞して活躍の場をイベリア半島に移します。

辞任の理由は今日に至るも謎に包まれていますが、1719年の終わり頃にはポルトガルのジョアン5世に仕えるためにリスボンに赴いて、ポルトガル王家の宮廷楽長として活躍しています。そして、彼がチェンバロを教えていた王女マリア・バルバラが1729年にスペイン王子フェルナンド(後のフェルナンド6世)のもとに嫁ぐと、スカルラッティもそれに随伴してマドリードに赴き、1757年に彼自身が亡くなるまで王家のチェンバロ教師としてスペインで生涯を終えています。

つまり、スカルラッティという人はイタリアで活躍した前半生と、ポルトガルやスペインというイベリア半島で活躍した後半生とに二分割されるのです。作品的に見ると、イタリアとポルトガル時代は宮廷楽長として教会音楽やオペラ、室内カンタータが創作の中心でしたが、後半生のマドリッド時代はチェンバロ音楽が中心となっています。そして、スカルラッティにとって真に素晴らしい業績がこの後半生のチェンバロによるソナタ作品にあったことは今さら言うまでもないことです。

ラルフ・カークパトリックによって555曲に整理された彼のソナタ作品は、今日的感覚のソナタ作品とは全く異なります。一部の例外はありますが、そのほとんどが単一楽章の二部構成という極めてシンプルな形式です。しかし、楽想は驚くほどの多様さを持っていて、イベリア半島ならではのアラブの音楽やスペイン・ポルトガル特有の民族色の濃いリズムや旋律があちこちにこだましています。
また、演奏技法の点でも、両手の交差やアルペッジョ、さらにはチェンバロを打楽器的に扱ってみたり、今までにないような大きな音程の跳躍を用いるなど様々なテクニックを駆使してます。 スカルラッティ自身が「これらの作品のうちに深刻な動機でなく、技術的な工夫をこそ見て欲しい」と記しているように、その事は結果として鍵盤楽器の演奏に必要な近代的な技法が全て網羅されていると言っても過言ではありません。

同時代を生きたJ.S.バッハの平均律などとは全く性格を異にした作品群ではありますが、これはこれで、バッハと比肩できるほどのバロック鍵盤音楽の傑作だといえます。

<収録されている作品と演奏時間>
01:Scarlatti:ソナタ K3・・・2:55
02:Scarlatti:ソナタ K7・・・2:54
03:Scarlatti:ソナタ K16・・・2:47
04:Scarlatti:ソナタ K18・・・3:18
05:Scarlatti:ソナタ K28・・・2:04
06:Scarlatti:ソナタ K29・・・3:16
07:Scarlatti:ソナタ K46・・・2:49
08:Scarlatti:ソナタ K52・・・3:56
09:Scarlatti:ソナタ K54・・・3:60
10:Scarlatti:ソナタ K57・・・3:14
11:Scarlatti:ソナタ K84・・・3:01
12:Scarlatti:ソナタ K96・・・2:24
13:Scarlatti:ソナタ K105・・・2:28
13:Scarlatti:ソナタ K105・・・2:28
14:Scarlatti:ソナタ K115&116・・・4:36
14:Scarlatti:ソナタ K115&116・・・4:36
15:Scarlatti:ソナタ K119&120・・・4:33
16:Scarlatti:ソナタ K132&133・・・6:22
17:Scarlatti:ソナタ K140・・・2:16
18:Scarlatti:ソナタ K208&209・・・4:02
19:Scarlatti:ソナタ K215&216・・・6:00
20:Scarlatti:ソナタ K238&239・・・4:48
21:Scarlatti:ソナタ K259&260・・・6:32
22:Scarlatti:ソナタ K263&264・・・6:10
23:Scarlatti:ソナタ K308&309・・・5:44
24:Scarlatti:ソナタ K402&403・・・7:38
25:Scarlatti:ソナタ K420&421・・・4:39
26:Scarlatti:ソナタ K426&427・・・4:42
27:Scarlatti:ソナタ K460&461・・・6:05
28:Scarlatti:ソナタ K470&471・・・5:50
29:Scarlatti:ソナタ K490&491&492・・・10:51
30:Scarlatti:ソナタ K493&494・・・6:01
31:Scarlatti:ソナタ K516&517・・・3:42
32:Scarlatti:ソナタ K518&519・・・6:49
33:Scarlatti:ソナタ K544・・・5:54


スカルラッティの大権威

スカルラッティは長く忘れられた存在でした。
そんなスカルラッティに光を当てたのがピアノの教則本で有名なツェルニーでした。彼はスカルラッティの作品をいくつか校訂し、自分の弟子のための練習曲としても使用しています。その影響もあってか、あのショパンが「聴衆の無理解さえなければ,スカルラッティの作品だけで公開演奏会を催したい。」と述べるまでになっています。

このような動きの中で19世紀の終わり頃にはかなりまとまった数の作品が出版されるようになり、ついに1906年にアレッサンドロ・ロンゴによってほぼすべての作品が出版されます。これによって、長く歴史の中に埋もれていたスカルラッティの全貌が明らかになります。しかし、ロンゴの編纂は学問的な厳密さに欠けるものであり、スカルラッティのオリジナルの姿からはかなり逸脱したものでした。スカルラッティ再評価に果たしたロンゴの業績は認めながらも、その様な不十分さを克服しようとその生涯をささげたのがこのラルフ・カークパトリックでした。
かれは、ロンゴ版に紛れ込んでいる数々の変更や改訂を10数年にわたる研究できれいに洗い流し、その成果を大著「ドメニコ・スカルラッティ」にまとめ上げます。そして、1972年には彼の念願だった全作品の出版にまでこぎつけます。

現在では、スカルラッティの作品はこのカークパトリックによってまとめられたカークパトリック番号が用いられることが一般的で、一昔前のロンゴ番号はほとんど使われなくなりました。
念のために書き添えておきますが、スカルラッティの作品に関しては、K3というのはケッヘル番号ではなくてカークパトリック番号です。

なお、カークパトリックはスカルラッティの作品が単独で演奏されるだけでなく、2曲、時には3曲がセットとして演奏されることが一般的だったことにも十分に配慮しています。ですから、カークパトリック番号ではその様にセットで演奏されるべき作品はきちんと続き番号が割り当てられています。例外はありますがK150以降の作品はほとんどがセットで演奏される作品です。
ただし、そのセットになる作品の性格というのが一様ではありません。
単調な音楽と入り組んだ複雑な音楽が組み合わされる場合もあれば、優しさと激しさ、緩やかさとスピーディーさ、悲しみと喜び、そして時にはその様な対比は一切なく同じような雰囲気の音楽が続く場合もあります。スカルラッティはペンを握って五線紙に向かったのではなく、己のわき出る感興のままに即興演奏を行い、その音楽を弟子に書き取らせたという話も納得できます。

なお、「スカルラッティの大権威」とも言うべきカークパトリックの演奏ですがなかなかのものです。
悪くはありませんし、54年の録音としては音質も優秀です。
彼は、スカルラッティのソナタ作品について次のように述べています。
「スカルラッティは、オーケストラの音色をチェンバロの中で表現することをいつも考えている。したがって一つの楽器から他の楽器へと移り変わったり、伴奏の色彩変化、いろいろの楽器のもつれ合いによる色彩までをチェンバロの中に織り込む可能性を繰り広げたのである」

まさに、この言葉通りの演奏を繰り広げていて、ピアノによるスカルラッティ演奏からは絶対に表現できない世界を構築しています。
しかし、ロスの演奏を知ってしまった贅沢な耳は不満を述べ立てます。
困ったものです。

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2010-01-31:後藤 晋





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