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Home|エーリッヒ・クライバー(Erich Kleiber)|ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」 op.314(Johann Strauss:The Blue Danube, Op.314)

ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」 op.314(Johann Strauss:The Blue Danube, Op.314)

エーリヒ・クライバー指揮 シュターツカペレ・ベルリン 1923年録音(Erich Kleiber:Berlin Staatskapelle Orchestra Recorded on 1923)

J.Strauss:An der schonen, blauen Donau, Op.314


社交の音楽から芸術作品へ

父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。

美しき青きドナウ 作品314


よく知られているように、この作品はプロイセンとの戦争に敗れて国民全体ががっくりと落ち込んでいるときに作られました。最初は合唱曲として発表されたのですが、それにつけられていた歌詞がとんでもなく酷いもので、それが足を引っ張ってそれほど評判とはならなかったと伝えられています。
ところが、そう言う「愛国的(?)」な歌詞などは放り出して、純粋に管弦楽曲として編曲して演奏すると、これが爆発的なヒットとなったのです。

この編曲の背景には、シュトラウスの妻がこの作品のメロディの素晴らしさに気づいて、演奏旅行に出かける夫の鞄にそっとしまい込んだという「美談」が残されています。何とも「クサイ」話ですが、今も昔もこの手の話が好きな人が多いという証拠にはなるでしょう。
しかし、結果は何であれ、今やこの音楽はオーストリアの第2国歌といわれるほどになっています。それ故に、ニューイヤーコンサートで、この作品だけはアンコール曲として必ず演奏されます。冒頭の音型をヴァイオリンが刻みはじめると一斉に拍手が巻き起こって演奏が中断され、指揮者とウィーン・フィルが新年の挨拶をするというのが「お約束」になっています。


聞けば誰もがひっくり返りそうになる

とんでもなく古い録音なのですが、実に興味深い録音であることは間違いありません。
殆ど雑音の中からかすかに音楽が聞き取れるレベルではあるのですが、それでもエーリヒ・クライバーという稀代の大指揮者の姿を知る上では本当に貴重な録音です。

エーリヒと言えば一頃はクライバーのパパと言うことで、パパ・クライバーなどと呼ばれたこともありました。
しかし、その息子のクライバーは父親の偉大さを知り抜いていましたので、エーリヒがコンサートを行った場所で指揮をすることを基本的に拒否していたと伝えられます。そして、そんなクライバーの言動に接するたびに父親のエーリヒってそんなにも凄かったのかと、エーリヒのことを詳しく知らない若い世代の人々は訝しく思ったりしたものでした。

しかしながら、カルロス・クライバーが恐れた指揮者はただ一人エーリヒだけでした。
ですから、戦前の録音を中心として、しばし、そのエーリヒの姿を追いかけてみたいと思います。

地方の歌劇場から叩き上げの指揮者としてキャリアを積み上げてきたエーリヒが、はじめてつかんだ大きなポストが「シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場)」でした。
彼は1923年にヨーロッパの最高峰の一つであるこの歌劇場の音楽監督に就任し、ナチスの文化政策に抗議して1934年にそのポスト退くまでの10年あまりにわたってその地位にありました。
このナチスとの関係については後で詳しく見ていきたいと思うのですが、それよりも今回はこの「美しく青きドナウ」です。

これは1923年の録音ですから、まさにエーリヒがこの歌劇場の音楽監督に就任したときの演奏だと言うことになります。
エーリヒはマーラーの指揮姿に大きな影響を受けて指揮者を目指したと伝えられています。
そしてプラハ音楽院で指揮を学び、1911年、21才の時にに指揮者デビューを果たします。そして、そこからわずか10年あまりで伝統ある歌劇場のシェフに上りつめたというのは、その才能が並々ならぬものだったことを示しています。

しかし、この「美しく青きドナウ」を聞けば誰もがひっくり返りそうになるはずです。
演奏時間12分というのは最初は何かの間違いではないかと思うのですが、まさにそれだけの時間をかけ、さらにはポルタメントもかけまくってこれ以上はないと言うほどにネッチリと濃厚に歌い上げているのです。
それは、エーリヒの指揮者としての原点が奈辺にあったのかを如実に示している録音なのです。
言葉をかえれば、彼が指揮者を目指した原点がマーラーにあったことがはっきりと刻み込まれているのです。

エーリヒと言えば虚飾を排した強い緊張感に満ちた音楽作りというのが通り相場なのですが、そんな通り一遍のフレーズで全てが分かるような存在ではないのです。

でも、誰か、ニュー・イヤーコンサートでこんな「美しく青きドナウ」を演奏してくれないかな、と妄想はしてしまいますね。
それこそ、蒸留水のようなウィンナー・ワルツを聴かされ続けてきた耳には最初はギョッとするでしょうが、最後はきっと涙を流してブラボーを叫び続けることでしょう。

きっと、私も泣くと思いますね。

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