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モニク・ドゥ・ラ・ブリュショルリ(Monique de la Bruchollerie) |フランク:交響的変奏曲 嬰ヘ短調(Franck:Sinfonische Variationen)
フランク:交響的変奏曲 嬰ヘ短調(Franck:Sinfonische Variationen)
(P)モニク・ドゥ・ラ・ブリュショルリ:イオネル・ペルレア指揮 コロンヌ管弦楽団 1956年日録音(Monique de la Bruchollerie:(Con)Jonel Perlea Orchester Der Concerts Colonne, Paris Recorded on 1956)
Franck:Variations symphoniques, FWV 46
職人作曲家の腕の冴え
フランクという人は若い頃は熱心にピアノ曲を作曲していたのですが、その後、この分野への興味を失ったのか、ぱったりと創作の筆が止まります。そんなフランクが再びピアノの世界に戻ってくるのは最晩年に達してからです。
フランクという人は、その晩年において、まさにねらいすましたように各ジャンルにおいて1曲ずつ「これぞ!」というような作品を生み出します。
この「交響的変奏曲」も、ピアノ協奏曲とは銘打っていませんが、まさに協奏曲のジャンルに送り込んだ「ねらいすました作品」の一つだと言えます。
まずは威圧的なオケの響きで音楽が開始されますが、それに続いてピアノが優しく主題を奏します。これが第1の主題であり、やがてそれに続いて別の主題がピアノで奏されます。そして最後に、弦楽器群が三番目の主題を提示します。
こうして、3つの主題を提示しておいて、あとの部分でこれら3つの主題が様々に変奏されていきます。
ですから、単一の主題が最初に提示されて、それが様々に変奏されていくというオーソドックスな形ではなくて、最初に提示された3つの主題が様々に絡み合いながら変奏されていくという、かなり高度で複雑な形態を取っています。
第1変奏:主題Aの前半が低音弦に現れ、ピアノは主題Bで応答する。主題A前半が管弦楽に広がると、ピアノは主題A後半、主題Cの順で展開を続ける。
第2変奏:主題Cがピアノと弦楽器、木管楽器により展開される。続いてヴィオラ、チェロが主題Cを奏で、これにピアノが装飾的に絡む。次第に盛り上がり、管弦楽が主題A、続いて主題Cを奏し、ピアノは三連音符で応答、クライマックスを築く。
第3変奏:ピアノが分散和音を奏でる中、チェロにより主題C、続いて主題Aがゆっくりと歌われる。最後はピアノのトリルに導かれて、ホルンと木管楽器が次の変奏のリズムを準備する。
第4変奏:主題Aを元にした軽妙な変奏。
第5変奏:ピアノに陽気な新しい主題Dが現れる。主題Cが示された後、ピアノが伴奏を伴わず独奏を繰り広げる。管弦楽が主題A、Cの順に奏し、ピアノと掛け合いを演じた後、力強く終了する。
彼女はワルキューレとなり
「モニク・ドゥ・ラ・ブリュショルリ」という何とも長い名前のピアニストですが、40年以上もクラシック音楽を聞いてきながら、全く耳にしたことのないピアニストでした。出会ったのは、中古レコードを整理しているとひょっこりと出てきたのです。
伴奏をつとめるのもイオネル・ペルレアという、これまた全く知らない指揮者であり、オケもコロンヌ管弦楽団なのですから、いったい何故にこのレコードを中古レコード店でかったのか自分でも理由が分かりませんでした。そして、おそらく買ったものの一度も針を通さずに仕舞い込まれていたことは間違いないようです。
何故ならば、もしも一度でも聞いていればそんな扱いは受けなかったであろう事が、今回初めて聞いてみて明らかになったからです。
それにしてもウィキペディアはえらいもので、「モニク・ドゥ・ラ・ブリュショルリ」で検索すればそれなりの紹介が出てきます。と言うことは、知る人は知る存在のピアニストだったと言うことで、こんな事を書き記しているのは己の至らなさを宣伝しているようなものです。
そこで、もう少し彼女のことを詳しく調べてみました。
まずは、彼女がどの様なピアニストであったかをもっとも分かりやすく言い当てているのがドイツの音楽評論家であるヨアヒム・カイザーの次のような一文です。
彼女は細かく計算をしたり、力を小出しにしたりはしない。
彼女はワルキューレとなり、グランド・ピアノは軍馬となって今オクターブ征伐の戦い意出発する。
いやはや、凄いものです。その存在をワルキューレに例えられるのですから。
しかし、あのギーゼキングも彼女のことを「今世紀の若き神」とまで讃えているのですから、それほどの過剰評価と言うことはないのでしょう。
確かに、彼女のピアノは時には強引ささえ感じられるほどの力強さに溢れていますが、そこには決してあざとい作為などは存在せずに、彼女ならではの音楽、言い換えれば彼女の魂の飛翔があります。
そう言えば、彼女の師匠であったイシドール・フィリップは「音楽のない技巧は無意味であり、技巧のない音楽は無意味である」と言っていました。
ここには音楽と技巧のもっとも素晴らしい結びつきが存在するのです。
しかし、それほどまでに有名だったピアニストが、いかに私が至らない存在だからと言って、何故にここまで忘却の彼方に沈んでしまったのでしょうか。それも少し調べてみて分かりました。
何と彼女は1966年に来日して東京文化会館でN響と公演を行っているのです。そして、その後ヨーロッパ各地をめぐる長いツアーの最中にルーマニアで交通事故に遭ってしまうのです。幸い、その時は一命は取り留めたのですが左手の機能は失われ、ピアニストとしてのキャリアには終止符が打たれることになりました。
それは50代に入ったばかりの頃であり、まさにこれからと言うときでした。さらに、おそらくはその事故の後遺症もあったのでしょうか、1972年に57歳でこの世を去っています。
まさに去る者は日々に疎しであり、半世紀以上もの時が流れれば多くの人々の記憶から失われていくのは仕方がありません。
それにしても、このラフマニノフとフランクの2曲を聴くだけで彼女がいかに刮目すべき存在であったかは分かります。
そこにあるのは強靭無比なテクニックで描き出された、彼女の中に息づいている溢れんばかりの音楽です。それは、楽譜に忠実という護符にしがみつく小心翼々たるピアニストの演奏を聞いているだけでは見ることの出来ない世界が広がっているのです。
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