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クナッパーツブッシュ(Hans Knappertsbusch)|国民劇場再建に向けての支援コンサート(1)ウェーバー:舞踏への勧誘, Op.65(Weber:Invitation to the dance, Op.65)
国民劇場再建に向けての支援コンサート(1)ウェーバー:舞踏への勧誘, Op.65(Weber:Invitation to the dance, Op.65)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮:バイエルン国立歌劇場管弦楽団 1955年3月20日録音(Hans Knappertsbusch:Bavarian State Orchestra Recorded on March 20, 1955)
Weber:Invitation to the dance, Op.65
国民劇場再建に向けての支援コンサート
ドイツ国内の歌劇場の多くは第2次大戦中の連合国軍の空爆によって多くが瓦礫の山になってしまいました。バイエルン国立歌劇場も、ドイツ降伏の1週間前にオデオンザールが爆撃されて瓦礫の山と化してしまいます。しかし、戦後すぐに仮復旧をして活動を再開するのですが、本格的な再建には多くの資金が必要でした。
そして、戦争の疵痕が少しずつ癒えてくる50年代にはいると、次第に本格的な再建が計画されるようになっていきます。
そして、その再建を支援するためのコンサートも行われるようになります。
ここで紹介しているのは、当時のミュンヘン最大のコンサートホールでもあったドイツ博物館の大ホール「コングレスハレ」で行われた支援コンサートの一つです。
プログラムは以下の通りで、出来るだけ多くの人に参加してもらえるようにと考えたのか、よく知られた作品のメドレー集のようなものです
- ウェーバー:舞踏への勧誘, Op.65
- ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「ウィーンの森の物語」,Op.325
- ヨハン・シュトラウス2世:千夜一夜物語~間奏曲
- ヨーゼフ・ランナー:ワルツ「シェーンブルンの人々」
- ヨハン・シュトラウス2世:エジプト行進曲, Op.335
- シューベルト:軍隊行進曲, Op.51 No.1
- ヨハン・シュトラウス2世:アンネン・ポルカ, Op.117
- ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「南国のバラ」, Op.388
- ヨーゼフ&ヨハン・シュトラウス2世:ピチカート・ポルカ
- カレル・コムツァール2世:ワルツ「バーデン娘」, Op.257
注目すべきは、このコンサートの全曲がしっかりとした体制で録音されたようで、当時のライブ録音とすれば非常に優れた音質で録音されていることです。
また、さらなる資金稼ぎのためか、この録音はレコードとなって、仮復旧中のバイエルン州立歌劇(摂政劇場)でお土産品として発売されたそうです。
プログラムが進むにつれて次第にエンジンがかかってくる
この劇場再建のための支援コンサートは、クナッパーツブッシュにとっては、戦後初めてバイエルン国立歌劇場管弦楽団をコンサートで指揮した演奏会でした。もちろん、オペラでは何回も顔をあわせていたのですが、ミュンヘンでのコンサート活動はミュンヘンフィルがメインになっていたこともあって、これが戦後初めてのコンサートになってしまったようなのです。
バイエルン国立歌劇場は若き時代に地方の歌劇場のシェフを渡り歩いていたクナッパーツブッシュが初めてつかんだ大きなポジションでした。
切っ掛けは、ブルーノ・ワルターの後任として客演の依頼が来たことでした。その客演は実質的にはワルターの後任を決めるオーディション的な意味合いを持ち、その最初のオーディションはオペラではなくて、ベートーベンの2番とブラームスの3番という、どちらかと言えば地味なプログラムによるコンサートでした。そして、そこで成功をおさめた後に、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、「魔笛」、「ワルキューレ」等の演奏でその実力を示し、ワルターの後任として音楽総監に就任します。
そして、ナチスとの確執でミュンヘンから追放される1935年までその地位にとどまって活躍していました。
ですから、彼にとってはこの支援コンサートでバイエルンの歌劇場のオケを指揮することには万感の思いがあったことでしょう。実際、当時のオケには戦前のクナッパーツブッシュ時代から在籍しているメンバーも少なくないので、クナッパーツブッシュにとっては非常に指揮しやすいオケだったようです。それに、何といってもオペラでしょっちゅう顔をあわせているのですから、オケの方もクナッパーツブッシュの癖は知り抜いていたはずです。
演奏の方は、プログラムが進むにつれて次第にエンジンがかかってくるのが手に取るように分かります。シューベルトの軍隊行進曲あたりでクナッパーツブッシュならではのやりたい放題が顔を出してきています。
あの可愛らしい音楽をどうすればこんな化け物みたいな音楽になるんだと驚かない人はいないでしょう。
シュトラウスのワルツもクナパーツブッシュならではの一癖も二癖もある演奏で、聞いていて楽しさ満載です。
そして、聞いてみた感じではコンサート自体は「南国のバラ」で終わり、最後の2曲はアンコールだったような雰囲気です。
最後に、「バーデン娘」で締めくくるのもクナッパーツブッシュらしいです。
戦後の復興に向けて力強く歩みはじめたドイツの息吹を伝える貴重な記録とも言えます。
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よせられたコメント
2023-07-10:小林正樹
- クナはいつも通りの、あのクナですが、この舞踏への勧誘のアレンジは初めて耳にしました!編曲者は誰なのでしょう?大変興味があります。
鳴り物が結構なワルツの賑やかな大胆さ、前奏での木管のカデンツァ風そして後奏の何やら怪しげな終わり方など・・。
クナのユーモアを感じさせました。ああ面白かった!
2023-07-11:tks
- この舞踏への勧誘のアレンジは初めて耳にしました!編曲者は誰なのでしょう?大変興味があります。
→Felix Weingartnerだそうです。SP時代の名指揮者ですね!編曲作も多く、ベートーヴェンの大フーガは、フルトヴェングラーを始め結構多くの指揮者が取り上げています。変わったところ(ある意味有名どころ)では、ベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタ管弦楽版やシューベルトのガスタイン交響曲(2台ピアノソナタの編曲)なんかがあり録音もされています。でも、舞踏への勧誘ワインガルトナー版はクナ以外で聴いたことがありません。(因みにDeccaスタジオ録音では一般的なベルリオーズ版で録音しています。プロデューサーの意向かな。)
2023-07-13:tks
- すみません。訂正です。
「シューベルトのガスタイン交響曲(2台ピアノソナタの編曲)なんかがあり…」
間違いです。これはヨアヒムの編曲でした。
ワインガルトナーが編曲したシューベルトは、スケッチをもとに完成させた「交響曲"第7番"ホ長調D.729」です。レーグナーなどの録音で聴くことができます。曖昧な記憶でコメントすべきではなかったと反省しております。
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