クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|レジナルド・ケル(Reginald Kell)|モーツァルト:クラリネット協奏曲

モーツァルト:クラリネット協奏曲

Cl.レジナルド・ケル Zimbler Sinfonietta  1950年5月録音



Mozart:クラリネット協奏曲 「第1楽章」

Mozart:クラリネット協奏曲 「第2楽章」

Mozart:クラリネット協奏曲 「第3楽章」


モーツァルト、最後のコンチェルト

ケッヘル番号は622です。この後には、未完で終わった「レクイエム」(K625)をのぞけば、いくつかの小品が残されているだけですから、言ってみれば、モーツァルトが残した最後の完成作品と言っていいかもしれません。

 この作品は、元は1789年に、バセットホルンのためのコンチェルトとしてスケッチしたものです。そして、友人であったクラリネット奏者、シュタットラーのために、91年10月の末に再び手がけたものだと言われています。
 ここでもまた、シュタットラーの存在がなければ、コンチェルトの最高傑作と言って過言でないこの作品を失うところでした。

 ここで紹介している第2楽章は、クラリネット五重奏曲のラルゲット楽章の姉妹曲とも言える雰囲気が漂っています。しかし、ここで聞ける音楽はそれ以上にシンプルです。どこを探しても名人芸が求められる部分はありません。それでいて、クラリネットが表現できる音域のほぼすべてを使い切っています。
 どうして、これほど単純な音階の並びだけで、これほどの深い感動を呼び覚ますことができるのか、これもまた音楽史上の奇跡の一つと言うしかありません。

 しかし、ここでのモーツァルトは疲れています。
 この深い疲れは、クラリネット・クインテットからは感じ取れないものです。

 彼は、貴族階級の召使いの身分に甘んじていた「音楽家」から、自立した芸術家としての「音楽家」への飛躍を試みた最初の人でした。
 しかし、かれは早く生まれすぎました。
 貴族階級は召使いのそのようなわがままは許さず、彼は地面に打ち付けられて「のたれ死に」同然でその生涯を終えました。
 そのわずか後に生まれたベートーベンが、勃興しつつある市民階級に支えられて自立した「芸術家」として生涯を終えたことを思えば、モーツァルトの生涯はあまりにも悲劇的だといえます。
 それは、疑いもなく「早く生まれすぎた者」の悲劇でした。

 しかし、その悲劇がなければ、果たして彼はこのような優れた作品を生みだし続けたでしょうか?
 これは恐ろしい疑問ですが、もし悲劇なくして芸術的昇華がないのなら、創造という営みはなんと過酷なものでしょうか。


イギリスを代表するクラリネット奏者

Reginald Kell(レジナルド ケル)はイギリスのヨークに生まれ、当初はヴァイオリンを学ぶものの、15歳の時にクラリネットに転向し、その後イギリスを代表する多くのオケで首席奏者をつとめたというのが経歴です。その後、1939年にトスカニーニにその才能を認められてルツェルンの音楽祭に招かれます。戦後は活動の本拠をアメリカに移し、ソリストとして活躍しながらも室内楽団対も主催するという売れっ子となります。また、教育者としても大変に有能な人だったようで、当時すでに名声を獲得していたベニー・グッドマンがレッスンを受けに来たというのは有名な話です。また、いくつかの教則本も残していて、クラリネットをやっている人にきくとそれは「拷問」に近い代物だそうです。

さて、演奏の方ですが、残念ながら同時代に活躍したウラッハと比べると少しガッカリするかもしれません。しかし、それはあまりにもウラッハが偉大にすぎるからであって、聞いていると心がふんわりと癒されて仕事に行くのがいやになるような素敵な音色は、それはそれとして魅力があります。
特に印象的なのは、アレグロのようなテンポの速い楽章では割合にすっきりと音楽を仕上げるのに対して、アダージョになるとテンポを落として実に丹念に歌い上げるのが心に残ります。また、その歌い方たるや、テンポ・音色・音量ともてる要素をフルに動員して実にねっちりと表情をつけていきます。特に、一つの楽章の中でアレグロとアダージョが頻繁に交代するモーツァルトのクインテットの第4楽章などはなかなかの聞きものです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



535 Rating: 4.4/10 (152 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)

[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-03-21]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125(Schubert:Symphony No.2 in B-flat major, D.125)
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1949年12月20日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 20, 1949)

[2025-03-17]

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)

[2025-03-15]

リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 ,Op.18(Richard Strauss:Violin Sonata in E flat major, Op.18)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)グスタフ・ベッカー 1939年録音(Ginette Neveu:(P)Gustav Becker Recorded on 1939)

[2025-03-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589(プロシャ王第2番)(Mozart:String Quartet No.22 in B-flat major, K.589 "Prussian No.2")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2025-03-09]

ショパン:ノクターン Op.27&Op.37(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-03-07]

モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調「リンツ」 K.425(Mozart:Symphony No.36 in C major, K.425)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)

[2025-03-03]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月8日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 8, 1945)

[2025-02-27]

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調(Debussy:Sonata for Violin and Piano in G minor)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ジャン・ヌヴー 1948年録音(Ginette Neveu:(P)Jean Neveu Recorded on 1948)