クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ジョゼフ・エガー(Joseph Eger)|ベートーヴェン:ホルン・ソナタ ヘ長調, Op.17(Beethoven:Horn Sonata in F major, Op.17)

ベートーヴェン:ホルン・ソナタ ヘ長調, Op.17(Beethoven:Horn Sonata in F major, Op.17)

(Hr)ジョゼフ・エガー:(P)ヴィクター・バビン 1959年3月12日~14日録音(Joseph Eger:(P)Victor Babin Recorded on March 12-14, 1959)



Beethoven:Horn Sonata in F major, Op.17 [1.Allegro moderato]

Beethoven:Horn Sonata in F major, Op.17 [2.Poco Adagio, quasi Andante]

Beethoven:Horn Sonata in F major, Op.17 [3.Rondo. Allegro moderato]


ホルン奏者にとってはかけがえのない宝物

モーツァルトがホルン奏者にとっては宝物とも言うべき4つの協奏曲を残したのは「我が友ロイドゲープ」のためでした。彼は、この協奏曲以外に「ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407」もロイドゲープのために残しています。そして、モーツァルトにとって、もう一人親交のあったホルン奏者がシュティヒ・プントでした。
モーツァルトはこのホルン奏者との関わりで、「協奏交響曲変ホ長調 H297b」を作曲しています。

ただし、この作品は何らかの陰謀によって自筆楽譜が失われてしまうのですが、その後ある人物の遺品の中から筆写譜が派遣されて「K297B」という番号が与えらます。しかし、最新の研究ではこの筆写譜には疑問が投げかけられ、新全集では「擬作または疑義ある作品」のリストに収録されています。しかし、現在残されている筆写譜の真偽にかかわらず、パリでシュティヒ・プントと関わりがあったことだけは事実です。

そして、時を隔てて、このシュティヒ・プントはウィーンにおいて今度は若きベートーベンと出会い、そこで一つのソナタが生み出されることになるのです。
初演はこの二人によって為されたのですが、伝えられるところではピアノの部分は未だ完成しておらず、空白の部分はベートーベンが即興で演奏したそうです。

結果として、ホルンはベートーベンが「管楽器のために作曲した唯一のソナタ」という栄に浴することになります。そして、それはホルン奏者にとってのかけがえのない宝物を手に入れたことも意味します。

しかし、考えてみれば、ベートーベンの交響曲の至るところにホルンのソロが登場します。
エロイカの第3楽章、8番の第3楽章、さらには運命の第1楽章や第9の第3楽章にも印象的なホルンソロを登場させています。
それを考えれば、ベートーベンはこの楽器が基本的に好きだったのでしょう。


  1. 第1楽章:Allegro moderato:いかにも狩りの楽器として使われた過去に相応しい冒頭部分です。

  2. 第2楽章:Poco Adagio, quasi Andante:わずか17小節の短い楽章です。静かさの中で二つの楽器が呼び交わします。

  3. 第3楽章:Rondo. Allegro moderato:最後の部分がテンポが上がってホルンの名人芸が要求されます。




気骨溢れる人

ジョセフ・エガーの名前はこの国ではそれほど知られていない様に思います。そう言う私もこのシェリングなどとの協演によるレコードで初めて彼の名前を知りました。
彼のソリストとしてのキャリアはほぼ50年代に集中しているのですが、それは彼のソリストとしての能力によるものではなくて、60年代に歯科医の治療ミスで唇に傷をつけられてホルン奏者としての活動が出来なくなったためでした。

彼の経歴を見てみると、最初は第二次世界大戦中にアメリカ陸空軍バンドの奏者としてキャリアをスタートさせ、戦争が終わってからはアメリカ各地のオーケストラでホルン奏者として活躍しました。その中でも注目すべきはハリウッド ボウル シンフォニーの首席ホルン奏者を務た事でしょう。今さら言うまでもないことですが、このハリウッドの映画音楽を専門とするオーケストラのプレーヤーは全米各地のどのメジャー・オーケストラよりも高額なギャラを得ていて、そのオケで首席を務めると言うことは全米一に腕前と言うことです。
ちなみに、彼の前任の首席奏者はデニス・ブレインの叔父にあたるアルフレッド・ブレインでした。
さらには1952年にはバーンスタインの要請ででイスラエル・フィルの首席奏者を務めています。金管楽器群に致命的な弱点をかかえていたイスラエル・フィルにとっては、ジョゼフ・エガーが楽団に加わってくれたことは大いなる福音だったことでしょう。

そして、50年代にはその様なオーケストラ・プレーヤーとしての活動だけでなく、ソリストとしての活動も積極的に行うようになります。
それは、時代的には伝説のホルン奏者とも言うべきデニス・ブレインが活躍した時代と重なります。
当時のアメリカでもホルン奏者と言えばデニス・ブレインの名前があげられるのが普通だったのですが、ジョゼフ・エガーもまたデニス・ブレインと肩を並べる存在として評価されていくようになります。もちろん、その背景にはアメリカ人のホルン奏者として、初めて世界的なレベルに達した演奏家だったという贔屓目があったことも事実でしょう。
しかし、それでもこの一連の録音で聞くことのできるジョゼフ・エガーの伸びやかで典雅さを感じるホルンの響きは十分に魅力的です。

そして、60年代にホルン奏者としての活躍が出来なくなった後はモントゥのもとで指揮法を学び、亡くなる直前の2010年まで指揮活動を続けました。最後の演目はベートーベンの第九だったそうです。
まさに、音楽家として不屈の精神力を持った人物だったと言えます。

そう言えば、彼のキャリアでもう一つ記しておかなければいけない事として、1951年に、赤狩りの嵐が吹き荒れる中で下院非米活動委員会での証言を拒否したことです。
まさに、人間的にも気骨溢れる人だったのです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5274 Rating: 4.6/10 (49 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)

[2025-10-04]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)

[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)

[2025-09-28]

エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)